「65歳」から始める「性的同意」入門

坂爪真吾 一般社団法人ホワイトハンズ代表理事

『セックス難民 ピュアな人しかできない時代』小学館
宋美玄/著

 

 

日々の暮らしの中で、さみしさを感じている中高年の男性に、孤独を癒すパートナーとしての女性を派遣する「寄り添いサービス」が、全国各地で広まっている。

 

サービスの内容は、デートや食事、ドライブの相手、コンサートの同伴などを務めるものから、マッサージを行ったり、警察に届出を出した上でホテルにて性風俗に近いサービスを行うものまで、地域や事務所によって様々だ。

 

私の地元の新潟市でも、いくつかの事業所が存在しており、主に45歳以上の中高年の男性が利用している。利用者には、独身のまま50代を迎えた男性や、妻に先立たれた男性、車いすの男性もいる。

 

店舗の運営者によると、男性の利用者は好みのタイプの女性を指名して、一緒に日帰りで小旅行に行ったり、自然の中を散策したり、カラオケデートを楽しんだりと、様々な形での触れ合いや寄り添いを楽しんでいるそうだ。

 

90分間の短いデートを楽しむ人もいれば、特定の女性を丸一日指名して、温泉などでゆったりとした時間を過ごすことを希望する人もいる。

 

男性と接するスタッフの女性に話を聞くと、あらかじめ「やりたいこと」が決まっていて詳細なデートスケジュールを組んでくる男性もいれば、女性に合わせてプランを決める人もいる。一方で、「自分が何をしたいのかも分からない」という人もいるという。

 

なんとなく、寂しさを癒したい、女性とあんなことやこんなことをしたい、というふんわりとした願望はあるが、それを具体的な要望にまで落とし込めず、うまく女性に伝えることができない、という中高年男性も少なくないという。

 

反対に、相手の立場を考えずに「女性はこうされると喜ぶんだろう」という固定観念に囚われていたり、女性との十分なコミュニケーションがない状態で先走った行動をしてしまい、敬遠されてしまう男性もいるそうだ。

 

加齢に伴い、身体は衰え、欲求も薄まり、人間関係は狭くなっていく。

 

そうした中で、「自分が一体女性と何をしたいのか」「女性と触れ合うことで、一体何を実現したいのか」ということを明確に意識することは、どんどん難しくなっていく。

 

そうした中で、固定観念に囚われた行動をとってしまう人や、他人や世間によって作られた欲求のイメージをなぞることに終始してしまう人もいる。

 

本書『セックス難民 ピュアな人しかできない時代』では、最近若者の間で広まっている「性的同意」の重要性を、高齢者に対しても訴えている。

 

セックスしたいという相手に出会ったら、まず相手の同意を得ること。相手がどうしたいのかを考え、自分の「したい」という欲望を押し付けないようにすること。

 

そうした「相手ファースト」のセックスを心がけることが、脱セックス難民への近道である、と著者は説く。

 

若さに固執せず、今の身体でのベストを目指し、EDや性交痛といったお互いの変化を受け入れ、新たな触れ合いを一緒に模索すること。そのために、パートナーとの会話を大切にし、相手の気持ちを考え続けること。

 

「相手の気持ちを考えること」の大切さは、5歳の幼稚園児でも分かることだが、実践しることは70歳の高齢者でも難しいことだ。

 

性的同意は、加齢によっても変化しない不変かつ普遍のルールである。同意を得るためには、まず会話が成立していなければならない。会話なくしてセックスは成り立たない。

 

会話に基づく同意の重要性を自覚し、身体や気持ちの変化を言い訳にせずに、「性的同意とは何か」「自分の人生にとって、性とは何か」を考え続けることこそが、私たちが超高齢社会の中でセックス難民に陥らずに済むためのヒントになることは間違いないだろう。

 

『セックス難民 ピュアな人しかできない時代』小学館
宋美玄/著

この記事を書いた人

坂爪真吾

-sakatsume-shingo-

一般社団法人ホワイトハンズ代表理事

1981年新潟市生まれ。一般社団法人ホワイトハンズ代表理事。東京大学文学部卒。 新しい「性の公共」をつくるという理念の下、重度身体障がい者に対する射精介助サービス、風俗店で働く女性のための無料生活・法律相談事業「風テラス」など、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。2014年社会貢献者表彰。 著書に『はじめての不倫学』『誰も教えてくれない 大人の性の作法』(以上、光文社新書)、『セックスと障害者』(イースト新書)、『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)、『孤独とセックス』(扶桑社新書)など多数。

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