私の“もやもや”をスッキリさせてくれた!『グルメぎらい』

瀬尾まなほ 瀬戸内寂聴秘書

『グルメぎらい』光文社新書
柏井壽/著

 

どこに食事に行こうか。その瞬間から私の指はスマホをタッチしている。某グルメサイトで食べたいジャンルを選び、口コミの良いお店を探していく。

 

「3,6点か、まぁまぁかなぁ。」
「ここは4,3点!でも高すぎるよ」
など5点満点からのそれぞれのお店の価値をお店の雰囲気や、メニューを見る前に点数で判断していく。高得点のお店はおいしいと信じていたし、そのお店に行けることが喜びだった。客が勝手につける点数と口コミでお店の価値は決まる。それに疑問をもつこともなく、その口コミで行きたくなったり、行く気が失せたり、自分で確かめる気もなく、他人の評価に頼りきっていた。

 

友人に連れて行ってもらったイタリアン。30代の若いシェフが一年前に開いたという地下にあるカジュアルなお店だった。一人で料理を作っているため、客とは手が空いた時しか話は出来ない。ただその距離感も良かったし、一生懸命料理を作る姿は、より料理をおいしく感じさせた。

 

私はそのお店を気に入り、後日そのお店の予約をしようと調べたら某グルメサイトが出てきた。口コミは少なく、5点満点中3,06点だった。これは比較的低い評価だ。私はその瞬間、萎えてしまった。あんなにおいしいと私は思ったのに世間はこんなに低い点をつけるのか。その程度のお店なのか。

 

急に気持ちが冷めてしまった、そのもやもやを「グルメぎらい」柏井壽著の本で私はすべて腑に落ちた。

 

食べることが大好きな著者は純粋においしいものをおいしく食べるということからかけ離れているいびつな「グルメブーム」に疑問を持っている。著者はSNSの普及によりインスタグラム、フェイスブックなどでできるだけ人がうらやむ店に行って、その写真を投稿し、自慢するという、SNSを通じてよりグルメブームが過剰になっている。人気店だと料理人の態度も変わってきているということも指摘している。それを「モンスターシェフ」と呼ぶ。予約がなかなかとれないお店で取材も殺到していくと、何か勘違いして横柄な態度で客に「食わしてやる」という空気が出ている人も少なくない。また反対にお店の評判を下げないように、有名人やグルメライターやグルメブロガーに媚を売るシェフ。その人たちがメディアで褒めれば褒めるほどそのお店の価値は上がる。そのために過剰なサービスで機嫌を取る。そんなことは知らず私たちは彼らの評価を鵜呑みにし、そのお店への期待が高まる。

 

著者はそもそも「食」を知らない人が多いと言う。基本的なことを知らず恰好だけだと。季節に相応しくない器で料理を提供し、「左上右下」の礼儀も知らず、ご飯を右に配置し提供する京料理のお店もあり、食の伝統や文化をおろそかにし、形だけで見せるお店が増えている。ブームに乗っかって「食」の本質を知らず、世間の評判に振り回され、SNSでは写真を撮り終えると半分以上料理を残し店を後にするひと。食の本質から外れてしまっていて、本当においしいものを食べることより「ひけらかし」の為に食が使われている気がすると。

 

食べることが何よりも好きな著者が「グルメぎらい」と言い放つその理由が大いに納得できる。おいしいものを食べることだけがグルメではない、おいしく食べることこそがグルメだと言う。それは決して予約のとりにくいお店にいくことだけではない、高級食材をふんだんに使った料理だけでもない。

 

私があのとき感じた矛盾はまさにそのいびつな「グルメブーム」に踊らされていただけなのだと感じた。もう一度あのお店に行こう。そして私がどう感じたか、もう一度確かめたい。点数なんて気にせず、私がおいしいと思えばそれが「おいしい」ということなのだ。

 

『グルメぎらい』光文社新書
柏井壽/著

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毎日、先生と朝から大笑いしてます♡

 

この記事を書いた人

瀬尾まなほ

-seo-manaho-

瀬戸内寂聴秘書

京都外国語大学卒業と同時に寂庵に就職。瀬戸内宛に送った 手紙を褒めてもらったことがきっかけで執筆した初エッセイ『おちゃめに100歳!寂聴さん』は18万部のベストセラーに。連載『まなほの寂庵日記』(共同通信社)は15社以上の地方紙に掲載されている。困難を抱えた若い女性や少女 たちを支援する「若草プロジェクト」理事。大好物は「何よりも胸をときめかせる存在」というスイーツ。座右の銘は「ひとつでも多くの場所へ行き、多くのものを見、たくさんの人に出会うこと」。1988年、兵庫県生まれ


・瀬戸内寂聴公式インスタグラム:@jakucho_setouchi

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