『ネオ』歴史小説(後編)
市川淳一『ぼんくら書店員のぼんくRADIO』

◆信長の野望とウイイレに共通する「使いたくなる」パラメータ

 

―あと気になったのは、パラメータって全部100が一番良いわけじゃないですか。

 

市川:いやいやいや。

 

―勝つにはそうじゃないですか。でも、それじゃ満足いかないんですか?

 

市川:いかないですね。「100の武将を使うってどうなの?」というところがあるじゃないですか。やっぱり90ちょっととか80後半くらいの、ある程度伸びしろをのこしている方が。(「信長の野望」は)ある意味Ifの世界に関わっていくんで、元々強い徳川家康で天下を統一したところで「なんでなぞってるんだよ!」ってなるじゃないですか。

 

園原:史実通りで何も面白みがないと。

 

―ストーリーが生まれない。

 

市川:そう考えると龍造寺家とか。

 

―じゃあネオ歴史小説の作家さんも、そこまで考えているかはわからないですけど、主人公は他の人が描いていない、尖ったパラメータの人を使っていると。

 

園原:その方がキャラ立ちをさせやすいっていうのはありますよね。人物造形として。

 

市川:津軽為信とか、主人公にしたらいいなと思いますよ。良いパラメータ。

 

園原:どんなパラメータなんですか?

 

市川:津軽為信にすると(青森の)南部側の人が「なんで津軽の小説なんだよ!」みたいな感じになるのかね。

 

―そういうご当地ローカル争いがあるんですかね。

 

市川:統率88武勇77知略92。高い。

 

―強いですね。

 

市川:関羽に憧れていて。すごい髭もじゃ。

 

―キャラ立ちしそうじゃないですか。

 

市川:めっちゃ髭が長い。なんで笑うんですか(笑)

 

園原:いやいや、いいなと思ってそのキャラ。

 

津軽為信(wikipediaより)

 

―じゃあ園原さん次は(津軽為信を)……。

 

園原:ちょっとどなたかに……。

 

市川:髭が邪魔してなかなか太刀が……。

 

園原:それは若干コント感ありますよね?(笑)

 

市川:どうですか。

 

園原:装画もバーンとこう。

 

―髭で。

 

市川:今関羽と呼ばれた津軽為信、僕はおすすめしたいです。どなたかに(話を)持って行ってください。

 

園原:ありがとうございます。メモしました。

 

―パラメータは「信長とか家康じゃだめだ」ってことは、低いところがあった方がいいんですか?

 

市川:もちろんそうですね。低いからこそ自分が補完しよう、みたいな。

 

―知力はないけど武力はあるキャラの、知力は俺の操作で(カバーする)!と。

 

園原:プレイヤーとしてね。腕前が試されるところで。逆に最弱キャラっているんですか?

 

市川:今川氏真が今まで最弱キャラとされてたと思うんですよ。もっと最弱はいたかもしれないけど、著名な武将の中で。ただ今川氏真ってKADOKAWAさんで選書が出たりして再評価されていて。彼は蹴鞠がめちゃくちゃうまいんですよ。

 

―なんか小説出ていましたよね。

 

市川:今川氏が滅亡した後も、蹴鞠外交で色んな大名に仕えて朝廷との交渉役を買って出るという。「こいつ蹴鞠すげーうまいじゃん」ということで次々と官位をもらっていく。

 

園原:すごいっすね~。

 

―飲み会要員みたいですね。

 

市川:側室をもらわないで、ずっと正妻の奥さんと生涯を終えたところも。

 

園原:ハートウォーミング。

 

市川:これも是非、どなたかに。

 

園原:ありがとうございます。今日はネタがどんどん増えていく。

 

市川:蹴鞠外交。現代にいればすごいサッカー選手になってた。

 

園原:そうですよね(笑)

 

市川:今はこうやって攻略本を見ながら武将のパラメータの話をしているけど、僕みたいな歴史ファンじゃなくても。例えば子供の頃にやっていたウイイレのマスターリーグとか。やったことありますか?

 

園原:僕、ないんですよ。

 

―マジですか。僕は徹夜するくらいやってましたね。

 

市川:僕も友達の家で朝方まで。

 

園原:マン徹ならぬマンウイイレですね。 

 

※マン徹……徹マンをマン徹と呼んでいるものと思われる。

 

市川:マスターリーグってモードがあるんですけど、自分のチームに選手を集めていくんですよ。それもトッティとかバティストゥータとかスターだらけにしたチームをメモリーカードに持って。「じゃあやろうぜ」ってカードをぶっさして、相手チームを見た時に「おいおい、お前なんだよそれ!」みたいな。

 

―ずるすんなよ!世界選抜使いやがって、みたいな。

 

※トッティ……ローマの王子様。圧倒的なパスセンスはもちろん、この時代に珍しく1つのクラブにキャリアを捧げたことから、ローマファンからは神のように支持されている。ウイイレを参考にして「クッキアイオ」(相手GKをあざ笑うかのようなチップキック)でPKを沈めたエピソードはあまりにも有名。

 

※バティストゥータ……フィオレンティーナでセリエA得点王を獲得し愛されるも、ASローマへ移籍。スクデット獲得に貢献。抜群のキック力を持ち、そのゴールは「バティ・ゴール」と呼ばれた。引退後は「足を切断してくれ」と医師に訴えるほど、足首の痛みに悩まされた。

 

市川:わかってねーな、なんだよこいつ、みたいになるんですよ。空気読んでない、と。

 

―わかります。逆に「こいつわかってるな」というのは、どの辺ですか?

 

市川:わかってるのは、オーフェルマルスとか。

 

―リアルですね。

 

市川:オーフェルマルスをウイングに置くとか、後はもうババンギダですよ。

 

―あ~ババンギダ!出ましたね。

 

市川:ナイジェリアの。

 

―まさに「信長の野望」でいう武力99知力3みたいな。

 

園原:そこだけ突出している。

 

―足だけめっちゃ速くてテクニックはあまりない。テクニックは自分のプレースキルでカバーすると。

 

市川:高橋さんもめっちゃ、もう。

 

園原:テンションの上がり具合がすごいですね(笑)

 

ババンギダ@ウイイレ

 

市川:絶対に「パラメータ好き」はいるんですよね。どの世の中にも。

 

―さっきの「作家さんが見ている」と一緒で、サッカー選手がウイイレを見てサッカーやって「俺のパラメータ低いじゃん」とか言うらしいですよ。

 

市川:メッシとかもやってる。

 

園原:へ~。それ、言ったら反映されるんですかね?

 

―メーカー側に?(笑)

 

園原:KONAMIに。クレームが本人から。

 

―パワプロとかでは本人が言ってるらしいですけどね。「俺、こんなに悪い特殊能力ついてるの?」みたいな。「三振」とか。

 

市川:僕、15歳くらいの時に花粉症になったんですよ。でも「花粉症」ってパワプロだと初期についてたら必ずリセットされるやつじゃないですか。だから「俺パワプロの選手だったらリセットされてる!」と思って。変に落ち込みました。

 

園原:切ないですね。

 

市川:「こいつ育てたくねーや」って。

 

―サクセスされないですね。

 

市川:そう。

 

―いや~。ババンギダは絶対使いますね~。そこでレアルマドリードとかフランス代表じゃなくて、ナイジェリア代表とかアメリカ代表を使うやつがわかってると。あえてね。

 

市川:スコットランドとか。

 

―リアルですね。1人だけエースがいるチームとか。

 

市川:ライアン・ギグスとか。

 

※ライアン・ギグス……切れ味鋭い左足のドリブルから「ジャックナイフ」と称されたスター選手。今でこそEUROでも躍進するなど一定の実力を持つウェールズ代表だが、ギグスの現役時代には(開催枠の関係もあるとはいえ)国際大会に縁がなかった。

 

―ウェールズ。

 

園原:ウイイレの話になっちゃってますね。ご教示いただいてありがとうございます(笑)

 

―パラメータが奥深いという話から脱線しまして(笑)

ボンクラ書店員のぼんくRADIO

ぼんくら書店員・市川

「『竜馬がゆく』と『燃えよ剣』の出版社の違いが分かる」を理由に、自信満々で某チェーンにアルバイトとして入社し10年が経過。光栄のゲームの武将パラメータを眺めながら、歴史小説を読むのが日課のボンクラ書店員。たまに本の帯やポップをデザインしたり、小説の巻末に漫画を描いたりしています。1981年神奈川生まれのAB型。
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