『ネオ』歴史小説【実践編!】(後編)
市川淳一『ぼんくら書店員のぼんくRADIO』

bw_manami

2019/07/11

「カリスマぼんくら書店員」市川淳一がお気に入りの本や最近関わった本を出発点にして、縦横無尽に(≒脱線だらけで)出版業界やコンテンツ文化を語りつくします。
「『ネオ』歴史小説」実践編の後編は、金森さんが手がけた最近話題の「螺旋プロジェクト」の作品も登場。そして話題はマガジンとサンデーの違いになり……?

 

【前編はこちら】

 

 

◆シブサワ・コウに育てられ史学科へ

 

市川:話が戻るんですけど、そんな感じで拡材も。

 

―これは(笑)

 

金森:エクセルでドット絵作りましたから(笑)

 

―これは最高です。これを言っているあたりに写真載せます。

 

 

市川:坂田公時の「武器:てつのまさかり 防具:ただのぬのきれ」と書いてあって。パラメータも。

 

金森:拡材もドラクエっぽく作りました。

 

市川:売ると3円、いや、3ゴールド。

 

金森:で、酒呑童子は最大HP9999、ちから9999、全体攻撃、2回攻撃。

 

―これ、全体攻撃と二回攻撃のチートさですよ。

 

市川:そう。これが、普段ゲームを楽しんでいる人たちに伝わったらいいかな~と。

 

金森:前に市川さんとご一緒した時に仰っていて印象的だったのが、「地続きだと思われなきゃだめだ」と。ゲームをやる人がゲームの中で完結しちゃって、歴史モノは親和性が高いはずなのに、ゲームと本は関係ないと思っちゃってる。そこを、こういうもので突破していきたい。

 

―つないでいく。

 

―それにしてもビジュアルすごいですね。ラスボス感半端ないですよ。

 

金森:めちゃくちゃガタイいいですから。

 

―すごいです、この見せ方。

 

市川:昔、僕が角川春樹事務所さんの文庫『破天の剣』に、主役の島津家久のパラメータを書いて。イラストも描いてるんですけど。戦闘98知力83政治32魅力91。編集さんとパラメータについて喧々諤々。

 

 

―これは市川さん基準のパラメータなんですか?

 

市川:そうですそうです。これを金森さんが覚えてくださっていて。なんでなのか。

 

金森:これ、文庫化っていつでしたっけ?

 

市川:2015年かな。

 

金森:(その時は)一応編集者でしたけど、一読者として「うぉぉ」ってなったんですよ。私、大学で文学部史学科中世史専攻、もろ「信長の野望」のところなんです。「信長の野望」をやって、(その影響で)大学は史学科を受けたんですよ。

 

―筋金入りですね(笑)

 

市川さん:ほら、いるでしょ~(笑)

 

金森:シブサワ・コウに育てられている。

 

市川:わからないでしょ?シブサワ・コウって言っても(笑)

 

※シブサワ・コウ……コーエーの伝説的プロデューサーでありブランド。その正体は……。

 

金森:コーエーの社長ですね。

 

市川:フクザワ・エイジもいましたね。航空会社を経営するゲームなんかはフクザワ・エイジ。

 

金森:すごくマニアック。

 

市川:「太閤立志伝VI」出てほしいなと期待しています。

 

金森:とりあえず秀吉の武力を上げて剣で勝てるようにとか……あ、すいません(笑) 誰もわからない話をw

 

◆文庫の装丁は1冊じゃなくて10冊並べて決めよ

 

市川:そんな感じでちょうど今日、収録日が5月22日なんですけど、5月23日発売。

 

―絶妙なタイミングですね。

 

市川:中公文庫から矢野隆さん『鬼神』。ぜひ店頭で、中央公論新社さんが総力を結集した拡材と私の帯と酒呑童子のラスボス感を体感していただけたら嬉しいと思っております。よろしくお願いします。

 

金森:よろしくお願いします。いいんですか、これ光文社さんの(サイトなのに)?

 

―いいんです。「こまけぇこたぁいいんだよ!」ってやつなんで

 

市川:そもそもこんな連載が続くのが器の大きさですね(笑)

 

金森:懐が深すぎますね。

 

市川:続けさせてもらっていることにびっくりだわ。

 

―『鬼神』をみなさんぜひ店頭で。文庫と単行本の違いを見るだけでも面白い。

 

市川:でもね、文庫と単行本の装丁って僕は違うべきだと思っていて。

 

―パターンがありますよね。同じものを踏襲することもあればガラッとデザインを変えることも。

 

市川:やっぱね、文庫担当としては多面で展開した時のイメージを常に考えているので、情報量はシンプルな方がいいかなと。これがズラ~っと並んでいるとインパクトがあると思うんですよね。「誰なんだこの大男は?」っていう。

 

実際の展開例。

 

―群像劇で何人か散らばっているよりは、1人の顔とかキャラクターがバーッとあったほうが強いんですか。

 

市川:それこそ最近はコメントがたくさん書いてある幅広帯とかもたくさんあったりするし、なんかこう目を引くことが、文庫は特に大事なのかなと思います。

 

金森:真っ暗でタイトルだけ(の本もある)。

 

※真っ暗でタイトルだけ……『闇に香る嘘』(下村敦史)の仕掛け販売のことと思われる。

 

―あ~。そうですよね。バーッと並べた時の印象。それこそカバーを選ぶ時も1枚で見るというよりは、極端な話10枚、20枚並べて見た時のインパクトで考えてみるやり方があってもいいということですよね。

 

金森:そうですね

 

市川:だって酒呑童子が20面とかで並んでいたら「絶対勝てないぞ」感がある。

 

―ホラー小説かな?みたいな(笑)

 

市川:絶対勝てないじゃん!っていう。

 

金森:我々がよくやるのは、その時一番部数が大きい本をいっぱい持ってきて、いっぱいカラーコピーした装幀と並べて、どっちが勝つかみたいな。

 

―戦わせるんですね。

 

金森:はい。今はこっちの方が目立つな、とか。

 

―なるほど、面白いな~。それはうちも参考にさせていただきます。

 

◆螺旋プロジェクトと天野純希

 

市川:よし!で、割とまだ尺が余っているので、金森さん何か宣伝とかあれば(笑)

 

金森:いいんですか?今までも僕ずっと宣伝してたんですけど。

 

―順調すぎて尺が余ってしまうという。

 

金森:折角なので。私、、先ほど出た『破天の剣』の天野純希さんの新刊を担当させていただきまして。元々、(このラジオに)何度も(話題が)出ている、市川さんにも似顔絵を描いて頂いた菅という先輩が移籍しまして。

 

市川:ちょうど、光文社の向いの。

 

―そうなんですか!?

 

市川:向かって右側にある、とある「K談社」。

 

―そうなんですね~。

 

金森:それで、これまで(菅さんが)やっていた天野さんを私が引き継ぎまして。その新刊があるので宣伝させていただきたいなと。

 

市川:おい、菅、聞いてるか!?(笑)

 

金森:聞いてますか?

 

―(笑)

 

金森:『もののふの国』という作品なんですけど。これ「螺旋プロジェクト」というのがありまして。

 

 

―あ~、最近話題ですよね。

 

金森:小説BOCという雑誌でやっておりまして。朝井リョウさん、伊坂幸太郎さん、乾ルカさん、澤田瞳子さん、薬丸岳さん、吉田篤弘さん、大森兄弟さんと、天野さん。8作家で「海」と「山」の対立(を書く)。海族と山族というものがこの世の中にはいて、古代からずっと対立を繰り返してきた。その古代から未来までの時代を各作家さんで割り振って、2つの一族の対立を描いていくという。

 

―お題を与えて、自由に書いてくださいと。

 

金森:それの中世パートが天野純希さんなんですけど、これがすごく良いんですよ。例えば源平合戦の源氏と平氏、織田信長と明智光秀、戊辰戦争の幕府側と新政府側。これ全員、海族と山族。

 

―っていう話にしちゃう。

 

金森:という話なんです。

 

―スケールがでかい。

 

市川:これって多分、源平交代説を題材にしているんですよね。

 

※源平交代説……日本史上の武家政権は平氏(桓武平氏)と源氏(清和源氏)が革命(易姓革命)的に交代するという俗説のこと。室町時代ごろから一部で信じられていたと言われている。(wikipediaより)

 

金森:はい。織田家が平氏で。

 

―そんな説があることすら知りませんでした。

 

市川:あるんですよ、そういう説が。

 

金森:実は天野さんはそういうのを書きたいなとずっと思っていて、今回この螺旋プロジェクトというテーマとガッチリかみ合った形になっています。

 

市川:天野さんの作品って、主人公が歴史上の英雄たちなんですけど、どっかこう諦観があって。盛者必衰と分かっていてなお戦うキャラクターが非常に多い。それがすごいマッチしている。

 

―お題とフィットしている。

 

金森:これまたパネルを作りまして、こちらに市川さんのコメントを頂いている。

 

―いたるところに出てきますね。もう中公の営業の方みたい(笑)

 

市川:いやいやいや。

 

金森:半ばそうですよ。うちから給料払った方がいいのではと思う時もありますよ(笑) え~、「たぎる生の裏にある死、勝利の先に広がる虚無。天野さんは歴史小説界のあだち充だ。」という。

 

 

―あだち充というワードが出てくるんですね。

 

市川:天野さんはマガジンじゃなくてサンデーなんです。加瀬あつしさんの『カメレオン』は、ヤザワが機転を利かせてハッタリでのしあがっていく話じゃないですか。ああいうバイタリティや、それ(ある目標)に向かっていくことの疑いがないことがマガジン漫画。

 

―ある種の王道。階段をゴリゴリ進んでいく。GTOみたいな。

 

市川:だから『カメレオン』があるのがマガジンで、(サンデーの)『今日から俺は!!』なんか不良漫画ですけど特に何をするわけでもなく。

 

―敵も一応出てくるけどギャグ要素が強い。

 

市川:『風のシルフィード』じゃなくて『じゃじゃ馬グルーミン★UP!』みたいな。

 

―それは世代的にわからない(笑) 読者の中にはわかる人もいると思います。

 

市川:さっき言ったように、どこか冷めている。

 

―淡々としているというか、日常があるというか。

 

市川:(『タッチ』も)達っちゃんが甲子園を目指して優勝するところにテーマがあるんだけど、でもそれって……みたいな。

 

―あれって、優勝旗がサラッと置いてあるじゃないですか。その描き方ってマガジンじゃやらないですよね。

 

市川:そうそう。やらない。

 

―ドン!と写さないでスルッとやるのがサンデー。

 

市川:ワイワイやりますよマガジンは。優勝パレードまでやっちゃう。

 

―そこがクライマックス。大逆転劇のサヨナラ満塁ホームランみたいな。

 

市川:勝ったには勝ったけど、「……」みたいな感じが天野さんの作品にはあって、サンデーっぽいなと。

 

―そこであだち充が出てくるのがすごい。

 

金森:私は確かに、と思いました。あだち充だわ、と。

 

―あだち充の話は前に雑談で(市川さんと)しましたからね。

 

市川:延々と二人で盛り上がっていた。

 

―本当にこいつら高校生なのか!?ってずっと言ってましたね。

 

金森:おじいちゃんじゃないかって。

 

市川:そう、全員おじいちゃんとおばあちゃん。

 

金森:今回、出演人物がオールスターで。源頼朝、足利尊氏とか。前回仰っていた加山雄三レベル

 

―超弩級(笑) 大乱闘スマッシュブラザーズ的なw

 

金森:でもしそいつらが「俺つえーぞ」じゃなくて「何で俺は戦ってるんだろう?」とずっと思っている。

 

―おしつけがましくないアベンジャーズ。

 

金森:一番この中ですごいのは源頼朝でも織田信長でもなく、一番の勝者は歴史そのものなんじゃないかと。じゃあなんで歴史というものは武士たちにこんな過酷な戦いを続けなきゃいけない運命を与えているんだ、というのが冒頭2ページに書かれています。そこだけでも読んで欲しいですね。

 

―冒頭2ページをまず立ち読みして、そのままレジへ持って行ってくれと。

 

金森:という作品でございます。

 

市川:というわけで今回は金森さんをお呼びしまして、歴史小説とゲームと漫画でやってしまいましたが(笑)

 

―今回は「実践編」ということで。

 

金森:あんまり小説の話しなかったんじゃないか(笑)

 

市川:じゃあ高橋さん(※スタッフ)、本当にぼんくRADIOTシャツをお願いします!

 

―新書は1000点だったので、このラジオは100回いったらですね。100回突破記念で作りましょう。

 

市川:それは、無理ですね!w

 

―こうやってるうちに「あの時そんなこと言ってたな、あれよあれよと100回いっちゃったな」ってなるんですよ(笑)

 

市川:じゃあまた文字起こしをお願いします!(笑) てなわけで、ぼんくRADIOをお送りしました。またお会いしましょう!

 

金森:ありがとうございました~!

 

―ありがとうございました。

ボンクラ書店員のぼんくRADIO

ぼんくら書店員・市川

「『竜馬がゆく』と『燃えよ剣』の出版社の違いが分かる」を理由に、自信満々で某チェーンにアルバイトとして入社し10年が経過。光栄のゲームの武将パラメータを眺めながら、歴史小説を読むのが日課のボンクラ書店員。たまに本の帯やポップをデザインしたり、小説の巻末に漫画を描いたりしています。1981年神奈川生まれのAB型。
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