プロレスマニア書店員が『Number』編集者と場外乱闘!(前編) プロレスとは「人生をアートすること」である
市川淳一『ぼんくら書店員のぼんくRADIO』

■プロレス、戦国、ビートたけし

 

―サラッといきなり、今回始まったんですけれども、そもそもお二人って……?なぜ今回、この回になったのかというところで。

 

寺島 忘れていましたね。

 

市川 忘れていました。

 

―本来、初めにやっておくべき話なんですけど。

 

寺島 ちょっと熱くなりましたね、いきなりね。

 

市川 そうですね。

 

寺島 一応ですね、僕、この7月になるまで4年間、営業部っていうところにおりまして、文藝春秋の。それで、市川さんのお店を4年間、担当させていただいたところ、大変うまが合うというか。

 

市川 趣味がほぼ一緒で。プロレスと、あと戦国時代と、あとビートたけし。

 

寺島 ビートね。

 

市川 ビートたけしさんが大好きとか、ものすごいですね。たぶん、この3つは、だいぶ親和性は高いと思うんですけど。

 

寺島 披露宴のエンディングムービーは、『世界の北野、足立区のたけし』のエンドムービーを模した(ものを流した)。

 

市川 『SEA SIDE WOMAN BLUES』っていう。

 

寺島 サザンの『SEA SIDE WOMAN BLUES』という曲があるんですけど、それを、たけしが後ろ向きに歌うっていうエンドだったんですけど。それを、わざわざ自分で撮って、エンドロールに流すというね。

 

市川 って聞いたときに、ええっ!?って。

 

―そこがツボにはまったわけですね。

 

寺島 わざわざたけし的な、ワンサイズ上のスーツを着て。後ろ姿だから俺じゃなくてもいいのに、1回も振り向かないですからね。これはなかなか、言葉だと伝わりづらい。

 

市川 伝わりづらいです。

 

寺島 やらなくていいことをやったっていう。

 

市川 っていうぐらい、これがハマったのが、たぶん僕だけだと思うんですけど。

 

寺島 そうですね。あまり話もしないですね、こんなことは。

 

市川 っていうぐらい、うまが合うっていうことで、今回、お招きしております。

 

寺島 はい。よろしくお願いします、改めて。

 

■プロレスとは「人生をアートすること」

市川 えっとですね、今回……。

 

―お持ちしている本の紹介を、ちょっとしてください。

 

市川 文藝春秋さんから出ております、『完本1976年のアントニオ猪木』、柳澤健さんの著作なんですけど。
これはですね、アントニオ猪木さんが行った、いびつな、いまのプロレス界のキーになる4試合が語られている作品。一番の白眉っていうのはやっぱり、世界の、当時スーパースターであったモハメド・アリと、異種格闘技戦を行ったというくだりがあるんですけど。これは、めちゃくちゃすごいですよね。

 

寺島 すごいですね。やっぱりここまで切り込んだのがすごいんですよ。

 

市川 当時、モハメド・アリは、トラッシュトークがすごい得意で、記者会見とかで、アントニオ猪木を「ペリカン野郎」とか言ったり、まくし立てたりするんですけど。元々、そのトラッシュトークの師匠が、ブラッシーだったというですね。ブラッシーって。

 

―誰ですか。

 

寺島 当然、知らないですよね。

 

市川 「噛みつき魔」って知らないですか。

 

―知らない。

 

寺島 「吸血鬼」と呼ばれた。

 

―そういうプロレスラーの方がいるんですか。

 

市川 そうです、そうです。その人の「トークはこうやってやるんだよ」みたいな話を受けて、モハメド・アリが「プロレスって、ああ、すごいじゃん」みたいな。

 

―アリはじゃあ、プロレスの影響を、そういうところで受けているっていう形なんですね。

 

市川 そう、そう。という話とかがあったりとかして。あとは、モハメド・アリを招へいする、要はジャイアント馬場に対抗するために、一流のプロレスラーよりも、さらに上の権威の選手と自分が戦うと、アントニオ猪木がそういう作戦のもと(動いていた)。

 

―猪木は自分をある種「はく付け」したかったっていうことなんですか。

 

市川 そう、そう。モハメド・アリを呼ぶんですけど。アリは元々、プロレスの試合をやるつもりで来たんですけど、猪木は真剣勝負をやるというところで、すったもんだがいろいろあって。これも非常に、すごい迫力があって面白いくだりなんですけど。
この、アントニオ猪木がプロレスの試合じゃなくって、真剣勝負をやるっていうことが、僕はプロレスだと思うんですよ。

 

 

―なんかそれ、哲学みたいになってきましたね(笑)。うん?

 

市川 そう。プロレスってよく、世に言う、たとえばツイッターとかで流れてくる「プロレス」っていう言葉って、忖度とか馴れ合いとか、そういう(意味がある)。

 

―ああ。茶番的な。

 

市川 そう、そう。ネガティブな。

 

―これ、プロレスじゃんみたいな。

 

市川 そう、そう。違うんですよ。

 

―人が炎上したりするときに、はい、はい、みたいな。

 

市川 プロレスっていうのは、「人生をアートする」って意味だと僕は思っていて。猪木の、そのプロレスっていうのは、ここでプロレスの試合を選ばずに、真剣勝負をアリとして、勝って、プロレスの株を上げると。それこそがプロレスなんだと。

 

―それこそがプロレス。はあ。

 

市川 そう。

 

寺島 そうなんですよ。

 

市川 (笑)

ボンクラ書店員のぼんくRADIO

ぼんくら書店員・市川

「『竜馬がゆく』と『燃えよ剣』の出版社の違いが分かる」を理由に、自信満々で某チェーンにアルバイトとして入社し10年が経過。光栄のゲームの武将パラメータを眺めながら、歴史小説を読むのが日課のボンクラ書店員。たまに本の帯やポップをデザインしたり、小説の巻末に漫画を描いたりしています。1981年神奈川生まれのAB型。
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