「相互関係」の障害―自閉症とは?(1)
岡嶋裕史『大学教授、発達障害の子を育てる』

 

自閉症(自閉症スペクトラム障害)とは何だろうか。

 

DSM-5では、以下の診断基準をすべて満たしたものが、自閉症と呼ばれる。

 

1.社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害
2.限定された反復する様式の行動、興味、活動
3.症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになるものもある。
4.症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている。

 

これをすべて満たすのは、なかなか容易ではない。だから、DSM-Ⅳでは本格的なものを自閉性障害、軽症例を特定不能の広汎性発達障害などと分類する実運用がなされていた。でも、各障害に本質的な違いはないということで、DSM-5では一本化したわけである。この基準は、DSM-Ⅳの特定不能の広汎性発達障害より厳しいので、DSM-Ⅳで何らかの障害と診断されていた子が、DSM-5では何の障害名もつかなくなることはあり得ると思う。

 

といっても、この説明で「ふうん、そうなのか」と理解できれば苦労はしない。実際、私はこの文書を読んでも、実態は何もわからなかった。飽きるほど病院に行き、療育を受け、色々な教育現場を見て、何となく体系化した知識である。だから、今「我が子が自閉症なのでは?」と気を揉んでいるご両親のために、もう少しかみ砕いていこう。

 

「1.社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害」は、こんな内訳にバラすことができる。

 

・社会的、情緒的な相互関係の障害
・他者との交流に用いられる言葉を介さないコミュニケーションの障害
・(年齢相応の対人)関係性の発達・維持の障害

 

最初のキーワードは「相互関係」である。自閉症全体がインタラクションの障害なのだ。自閉症の子は1人でいるとき、自閉症と判別できないことが多い。しかし、人間の集団に放り込むと、ぽろぽろと違和感が出てくる。

 

みんながあるものに注目しているとき、全然そこに注目しない。先生に声をかけられても、反応しない。多くの子が集合しているのに、平然と単独行動する。ほとんどの子が笑う状況で、何がおかしいのか理解できない。

 

ぼく自身は子ども時代、赤信号にまったく注目していなくて、本を読んだままふらっと国道を横断してしまい、まわりの人たちが悲鳴を上げているのにもまったく気付かず死にかけたことがあるし、僕の子どもも魚を追って(自閉症ではありがちだが、魚が好きだったのだ)足のつかない湖にずんずん入っていったことがある。好きなことをやっているときには、たぶん蹴飛ばしたりしても気付かない。定型発達の乳児は、親から離れると不安そうになって泣いたりするが、ぼくの子はまったく気にしなかった。確実に親より魚のほうが好きである。

 

自分の好きなものには徹底的に執着するが、それ以外のものには極めて無関心なのだ。このとき、「それ以外のもの」には当然「他の人」が含まれるし、時には自分の命も含まれる。

大学の先生、発達障害の子を育てる

岡嶋裕史(おかじまゆうし)

1972年東京都生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。博士(総合政策)。富士総合研究所勤務、関東学院大学准教授・情報科学センター所長を経て、現在、中央大学国際情報学部教授、学部長補佐。『ジオン軍の失敗』(アフタヌーン新書)、『ポスト・モバイル』(新潮新書)、『ハッカーの手口』(PHP新書)、『数式を使わないデータマイニング入門』『アップル、グーグル、マイクロソフト』『個人情報ダダ漏れです!』(以上、光文社新書)など著書多数。
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