自閉症スペクトラム障害は必ず幼児期にはその症状が現れる―自閉症とは(5)
岡嶋裕史『大学教授、発達障害の子を育てる』

 

「3.症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになるものもある。」
「4.症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている。」

 

このあたりは、ダイレクトに我が子の困り事と結びつかないこともあるので、意外に意識しないところかもしれない。だが、自閉症スペクトラム障害は必ず幼児期にはその症状が現れる。

 

なぜこれを言いたかったかというと、最近流行っている「大人の発達障害」という言葉に敏感になっている親御さんが増えたと思うからだ。大人の発達障害は確かにあるだろう。というか、発達障害は障害なので治癒することはなく、発達障害だった子は概ね発達障害の大人になる。概ねと書いたのは、特性は消えないまでも、訓練によって「落ち着かない」や「妙な儀式をこなさないとかんしゃくを起こす」などの症状が、社会と折り合いをつけられる水準に緩和されるケースがあるからだ。それで、診断名が変わったり、外れたりする子はいる。

 

でも、定型発達の子としてすくすく育っていたのに、何かのきっかけや親の育て方の悪さで大人になっていきなり発達障害になることはない。もし、そう見える状況にあったとしたら、何か別の病気や障害か、あるいはもともと発達障害で社会への適応力が乏しかったものの、子どものうちは周りの視線が優しいのでなんとか普通教育の枠内でやり過ごしてこられたかのいずれかだろう。大人になっていよいよ社会への適応の悪さが誰の目にも明らかになるのである。

 

だから、「自分たちの育て方の悪さで、もともと定型発達だった子を発達障害にしてしまった」などと悩まないほうがいい。そのパターンはない。仮に親戚や友人にそんなことを言われたら、さくっと無視して精神の安定を保とう。特に親戚は良かれと思って無責任なことをポンポン言いがちである。

 

もし良くないことがあるとしたら、親が無関心で子どもが社会への不適応に苦しんでいるのに気付かないか、不適応の事実が見えているのにもかかわらず受け入れられなくて子どもや家族が我慢の臨界点を超えるまで定型発達として振る舞ってしまうケースである。子どもはその間辛い思いをしているし、障害を受け入れつつ社会に適応する練習は早めに始めた方が効果が高いので、障害の事実に気がついたらどこかではそれを受容していく必要がある。

大学の先生、発達障害の子を育てる

岡嶋裕史(おかじまゆうし)

1972年東京都生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。博士(総合政策)。富士総合研究所勤務、関東学院大学准教授・情報科学センター所長を経て、現在、中央大学国際情報学部教授、学部長補佐。『ジオン軍の失敗』(アフタヌーン新書)、『ポスト・モバイル』(新潮新書)、『ハッカーの手口』(PHP新書)、『数式を使わないデータマイニング入門』『アップル、グーグル、マイクロソフト』『個人情報ダダ漏れです!』(以上、光文社新書)など著書多数。
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