リアル女子の発信する情報にはノイズが多い【第9回】岡嶋裕史
岡嶋裕史『インターネットの腐海は浄化できるのか?』

かつてインターネットがユートピアのように語られた時代があった。そこは誰もが公平に扱われ、対等な立場で建設的な議論ができる場のはずだった。しかし現在、そんな戯言を信じる者はいない。ネットは日々至る所で炎上し、人を騙そうという輩が跋扈し、嘘の情報であふれている。黎明期から知る人間は誰もが思うはずだ、「こんなはずではなかった……」。ネットはいつから汚染された掃き溜めのような場所になってしまったのか? それとも、そもそも人間が作り、人間が関わる以上、こうなることは約束されていたのか? 黎明期からネットの世界にどっぷりハマってきた、情報セキュリティの専門家である中央大学国際情報学部開設準備室副室長の岡嶋裕史氏が、ネットの現在と未来を多角的に分析・解説する。

 

 

なぜ、そんなに萌えキャラがいいのだろうか。

 

私は逆になぜリアル女子がよいのかがよくわからない。リアル女子は発信する情報にノイズが多いと思うのだ。

 

AIでも同じだが、人間の脳もそんなに複雑な演算をするキャパシティはないだろう。目や耳といったインタフェースから流入してくる情報を、相当程度抽象化して処理しているはずである。

 

どうせ抽象化処理が入るなら、リアルな人間などというノイズのかたまりよりも、最初からデフォルメされた絵の方が認知しやすい。そもそも人間の情報量は多すぎる。子供が実写の動画コンテンツよりも、アニメや人形劇の動画コンテンツを好むのは、情報量が小さくてわかりやすいからだ。

 

今は技術が未熟でその境地には至っていないが、庇護感情や恋愛感情を惹起させるプロセスも、本来は人間の実物より二次元キャラの方が発火させやすいと思う。

 

SNSをはじめとして、現代ではコミュニケーション自体が、検索に検索を重ね、パーソナライズにパーソナライズを重ね、極端に自分に特化した極小のトライブの中で行われるようになっている。

 

こうしたコミュニケーションに慣れた利用者が、恋愛でも、自分向けにカスタマイズされ、パーソナライズされた異性を求めるようになるのはむしろ自然なことだ。増える一方の結婚マッチングサービスは、その解を求めるためのサービスである。

 

しかし、言うまでもないことだが、リアルな異性はそんなに都合の良い存在ではない。そんなに都合の良い相手がそうそう見つけられるわけはないのだから、リアルな異性に魅力を感じない男女のうち一定割合が二次元キャラクタを嗜好する利用者になっていくのは、納得できるメカニズムである。

インターネットの腐海は浄化できるのか?

岡嶋裕史(おかじまゆうし)

1972年東京都生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。博士(総合政策)。富士総合研究所勤務、関東学院大学准教授・情報科学センター所長を経て、現在、中央大学国際情報学部教授、学部長補佐。『ジオン軍の失敗』(アフタヌーン新書)、『ポスト・モバイル』(新潮新書)、『ハッカーの手口』(PHP新書)、『数式を使わないデータマイニング入門』『アップル、グーグル、マイクロソフト』『個人情報ダダ漏れです!』(以上、光文社新書)など著書多数。
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