第9回 『幕末太陽傳』
春日太一が厳選!いま配信で見たい時代劇

ryomiyagi

2020/06/17

 

■『幕末太陽傳』(映画 1957年)
製作:日活/監督:川島雄三/脚本:田中啓一、川島雄三、今村昌平/出演:フランキー堺、左幸子、南田洋子、石原裕次郎、小林旭 ほか

 

地上波のテレビからはほぼ消えた一方で、BS、CS、レンタルショップ、ネット配信などでは膨大な数の作品が見られる時代劇。日本の時代劇を知り尽くした春日太一が、視聴する側のさまざまな趣味嗜好を考慮しながら厳選した150作品を紹介する書籍『時代劇ベスト100+50』が6月11日に発売した。
ここでは本書の中から現在配信で視聴可能な作品を厳選し、紹介をする。

 

『居残り佐平次』『品川心中』といった古典落語を原案に、幕末の品川遊郭での人間模様を描いた群像劇だ。

 

日活の「製作再開三周年記念映画」と銘打たれているだけあり、当時の日活のスターが総出演したオールスター映画となっている。

 

通常のオールスター映画の場合、スターごとの見せ場を串刺し的に構成することが多いが、本作はそうではない。一つの場所に集めて一気に動かしているのだ。

 

しかも、川島雄三監督は冒頭の十分で、あらかたの役柄とキャラクターを巧みに説明してのけている。

 

曰くありげな遊び方をする佐平次(フランキー)、外国人襲撃を企てる長州の志士(石原、小林、二谷英明)、対立する二人の遊女・おそめ(左)とこはる(南田)、健気に働く下女のおひさ(芦川いづみ)……。

 

これらの人間模様がスピーディーな場面展開の中でリズミカルに生き生きと描写されていくものだから、観ている側としてはそれぞれのキャラクターが無理なく自然と入ってくるし、また、作品世界に楽しみながら没入することのできる仕掛けになっている。

 

圧巻だったのは、フランキー堺だ。

 

佐平次は遊郭で遊び倒しながらも金の持ち合わせは全くなく、自ら進んで遊郭で働くようになる。

 

そして、機転を利かせながら、巻き起こるトラブルを次々と解決していくのだ。

 

彼の止まらない口八丁手八丁の軽妙な芝居を見ていると、落語の世界がそのまま映像化されたような楽しさを感じることができる。

 

だが、それだけではない。

 

佐平次は薄暗い物置部屋で暮らしているのだが、そこで一人になると、どこか暗い、陰のある表情になるのだ。

 

実は佐平次は肺を病んでおり、決して長い命ではなかった。そんな佐平次の陽と陰の表情を、フランキーは巧みに演じ分けている。

 

明るく振る舞っているからこそ、どこか寂しい――、フランキーの芝居が漂わせる雰囲気は、遊郭という場所の漂わす刹那的(せつなてき)な儚(はかな)さを象徴しているようでもある。

 

そのため、劇中の人々が賑やかに喧騒を演じれば演じるほど、その底流にある物悲しさが浮かび上がってきて、祭りの後のような余韻をもたらすことになった。

 

【ソフト】
ハピネット(ブルーレイディスク、DVD)

 

【配信】
アマゾンプライムビデオ、DMM.com、U-NEXT、TSUTAYA、スカパー!オンデマンド、ビデオマーケット
(2020年5月現在)

 

※アマゾンプライムビデオ は、アマゾンプライムビデオ チャンネルの登録チャンネル「時代劇専門チャンネルNET」「シネマコレクションby KADOKAWA」「+松竹」「d アニメストア for Prime Video」「JUNK FILM by TOEI」「TBS オンデマンド」を含んでいます。

 

●この記事は、6月11日に発売された『時代劇ベスト100+50』から引用・再編集したものです。

春日太一が厳選! いま配信で見たい時代劇

春日太一(かすがたいち)

1977年、東京都生まれ。時代劇・映画史研究家。日本大学大学院博士後期課程修了(芸術学博士)。撮影所や俳優などの取材をもとに、日本の映画やテレビドラマを研究。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『時代劇な死なず! 完全版 京都太秦の「職人」たち』(河出文庫)、『すべての道は役者に通ず』(小学館)、『時代劇入門』(角川新書)など多数。
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