家づくり、いよいよ佳境! 夢の間取りを実現するには
小澤典代『日用美の暮らしづくり、家づくり』

bw_manami

2019/07/24

家づくりは二度目の経験となる浅川あやさん。一度目の経験から学んだことを、今回の家に取り入れてはいますが、前回は夫婦ふたりの暮らしを基本にしていたのに対し、子どもが誕生し、あやさんの両親との同居を踏まえた現在とでは、取り巻く環境がかなり違っています。そこで、家づくりの根幹とも言える間取りを考える上で、一番大事にしたことを聞いてみました。

 

「具体的な間取りなどを考える前に、どんな生活が自分たちにとって幸せなのか、という自問自答を繰り返しました。東日本大震災など、大きな天災があったことも考えには強く影響しています。結果として、重要なのは便利さや極端なリスク回避ではなく、基本的な生活をどれだけ楽しめて、安心していられるか、ということに行き着いたんです。土地の形状そのものだけではなく、インフラや食べものなども含めて、自分にとっての安心が手に入ること。そのなかでやりたいことができるかを最後まで考えました」

 

新築部分の建築模型。

 

あやさんにとって、幸せの条件はハッキリしています。取捨選択に迷いがない人である印象は、出合ったときから変わりません。それは、揺るぎないもので、夫の真さんからは「根拠がないのに、どうして言い切れるの?」とよく言われるのだとか。

 

「楽観的な性格であるのと、育てられ方にも要因はあるかな。幼い頃から、自分のことは自分で決めるように言われてきました。そして、自分の決めたことに対する責任も自分にあることを、わりと子どもの頃から納得していたんですよね。失敗しても、違うルートを選ぶなど、その時はその時で考えればよくて。何とかなるものですし、リスクばかりを挙げていてもキリがないでしょ。長いスパンでものごとを考えるようにしています。私は、良くも悪くも皮算用してしまうので、大きく捉えることで余白を残しておくんです」

 

こうした決断力は、おそらく天性のものであるかもしれません。けれど、幼い頃から自己責任で選んできたものごとを、しっかりとやり遂げてきた意志の強さに自信があることも事実だと思います。暮らしのなかで、重要にしていることがしっかりあって、他のことは気にしない潔さもある。好きなことがわかっているから流されない強さがあるのです。

 

「20代までは、ブランドものなどキラキラした世界に憧れたりもしました。海外旅行にもいろいろ行きたいなぁ、と思うこともありました。でも、自分の好きな仕事をしていて、デザインする歓びを得て、着飾ることより空間を構成することに惹かれることがわかりました。結婚してからは、外に出かけるより家にいる時間が大切になり、自然と家づくりがしたくなったんです。今でも、 “環境が人をつくる” と考えているので、それを最優先している。夫は極普通のサラリーマンで、資産があるわけでもありません。取捨選択は必要ですが、好きなことが決まっているので、特別な我慢をしている感覚もないのです。それに、金は天下の回りものと、どこかで思っているんですね、貯め込まない性分でもあります(笑)。ざっくりとしていますが、それでも願えば家づくりは可能になります」

 

これ以外に、お金に纏わる話しも隠さずに話してくれたあやさんですが、そのあたりのことは、また別の機会に書くことにします。さて、ここからは具体的な間取りについて。

 

現場監督であり設計監理をお願いしている設計士と図面を見ての打ち合わせ。

 

「まず、家は土地ありき、です。陽の差す方向や土地の傾斜、風の通り具合を考えてプランを考えました。この作業が私にとっては一番楽しくて、妄想の図面で理想の家を描く癖が昔からありました(笑)。土地を決めてから、その条件のなかで、残されていた洋館を店舗にして住居を新築することに。両親とは二世帯住宅にすることも考えましたが、立地条件としてひとつの建物として認識できないと許可が下りず断念しました」

 

そして最終的に決まった間取りは4LDKの住居+店舗。4部屋は、両親の部屋(約12畳)、和室(6畳)、楽君の部屋(7畳)、夫婦の部屋(8畳)という割り当てで両親と同居。プライベートを保つための配慮として、居室が近すぎないような配置を考慮し、あやさんたち夫婦の部屋は2階、両親の部屋は1階の玄関近くにするなど、年配者への生活のし易さにも留意しました。

 

あやさんがいるのは、家族が集うダイニングになる予定のスペース。

 

「ハードとしての暮らし易さも大事ですが、同居には心構えというか、お互いの思いやりが大切ですよね。共有する時間と、敢えてズラした時間の使い方など、そのバランスを暮らしながら見つけていきたいと考えています。例えば、私たちが慌ただしい朝は、両親はゆっくり起きてもらうとか。夜の時間は一緒にリビングやテラスに集うとか。きっと喧嘩もするでしょうし、疲れることもあるかもしれない。でも、それもひっくるめて家族だから。息子にとっても良いことだと考えています」

 

また、日々の暮らしのなかで時間を有効活用するための工夫も間取りに生かしました。家事動線を短くするために、テラス、キッチンと洗濯機置き場、バスルームは一筆に繋がっています。この配置にすると風通しが良くなるのも利点です。そして、少し空間に余裕を持たせる配慮も。

 

「鎌倉の家は夫婦二人の単位で家づくりを行ったため、息子が生まれてから客間兼家事室を彼のスペースに。だから、お客様を泊めるにはリビングに寝てもらうことになってしまいました。この反省を踏まえ、今度は気軽に泊まってもらえるスペースを確保しました」

 

あやさんの、家づくりというものづくりは、将来に向けての夢にも繋がっています。

 

「もしも、もしも何十年か先に、部屋を増やせることができた場合は、改築して吹き抜けをスペースとして利用できるようなプランにもしているんです」

 

2階の廊下から吹き抜けを通して1階のリビングを見る。

 

そう、あやさんの好きなことは、図面を描いて未来に夢を馳せること。好きなことを好きなようにするための努力を積み重ねる毎日。そこに、とてもシンプルな幸せの追求があります。好きなことに真っ直ぐでいいことを、この家づくりから教わります。

 

楽君、自分の部屋になるスペースに寝転びあれこれ空想中。屋根がなければいいのに、と考えているそう。
日用美の家作り

文/小澤典代

手仕事まわりの取材・執筆とスタイリングを中心に仕事をする。ものと人の関係を通し、普通の当たり前の日々に喜びを見いだせるような企画を提案。著書に「韓国の美しいもの」「日本のかご」(共に新潮社)、「金継ぎのすすめ」(誠文堂新光社)「手仕事と工芸をめぐる 大人の沖縄」(技術評論社)などがある。
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