完成目前で振り返る家づくり。“3つの選択”それぞれのメリットとデメリットは?
小澤典代『日用美の暮らしづくり、家づくり』

撮影/石黒美穂子

 

試行錯誤や、予期せぬ出来事や、たくさんの思いが詰まった浅川邸とショップ「日用美」の工事も完全なる完成を目前にし、いよいよ全貌をお披露目できる日が近づいています。

 

一般的な住宅建築のシステムとは異なり、施主である浅川夫妻が積極的に参加する家づくりは、当初考えていたより時間を要することになりました。しかし、だからこそ知り得た情報や知識も多く、家づくりに関してはもちろんのこと、少し大袈裟に言えば、暮らしに起こる困難を乗り越えるための、ノウハウとしても捉えらることが出来るのです。

 

今回は、今だから振り返る事の出来る、家づくりのための情報をまとめてみます。

 

「私たち夫婦はより自分たちらしい暮らしを求めて、引っ越しと家づくりを決断しました。家をつくることそのものが、自分たちらしさに繋がっていると言っても間違いではなく、決まった条件のなかで、どれだけ自由に理想の家をつくることが出来るかを考えました」

 

撮影/石黒美穂子

家づくりを頼む際の一般的な選択肢は、ほぼ3つになります。
1. 工務店(会社組織)に設計施工を頼む。
2. 建築家に設計を依頼し施工会社に工事を頼む。
3. セルフビルド(個人ですべてを行う)

 

浅川邸は、上記の選択肢とは異なっています。基本設計は自分たちで行って、個人の設計士に実施設計と施工監理を依頼。設計士から、それぞれの業種の職人と建材を手配してもらい、スケジュール管理をしてもらう。

 

「安心や補償よりもコストをなるべく抑え、自分たちの希望を実現できる選択肢として、このスタイルを選びました」

 

撮影/石黒美穂子

 

こうしたスタイルでのメリットとデメリットをまとめてみます。

 

「メリット」
*価格を抑えられる。
*設計の自由度が高く、規格品に縛られない。
*設計士や職人と直接話し合えるため、意思の疎通が速やかにできる。
*顔を合わせての付き合いがあるから、要望や変更にも応じてもらいやすい。
*自分たちでつくった家、という愛着が強い。

 

「デメリット」
*設計士から業者、職人まで個人取引のためピンチヒッターとなる人材が確保できない。
*上記の理由で予想外のことが起きた場合、他の手立てを考え、手配しなければならず納期が遅れる。
*自由な設計であることは、そのためのマニュアルが存在せず、試行錯誤せざるを得ないため仕上がりや納期に影響が出る。

 

「こうした家づくりには経験値が重要になることを痛感しました。私たちも設計士さんも経験豊富とは言えないなかで、試行錯誤をし、予期せぬアクシデントに対処してきました。でも、このことは今後のものづくりや暮らしにも必ず役立つと考えています」

 

撮影/石黒美穂子

 

また、一般的な会社組織の工務店でつくられている、いわゆる規格製品である住宅についてのメリットとデメリットにも触れてみます。

 

「メリット」
*それぞれに得意な設計や工法があるため、それに対する安心感がある。
*納期が大きく変更されることはない。
*何かトラブルやアクシデントがあった場合の対応が早い。

 

「デメリット」
*予め決められた仕様、素材、設備から選ぶことが多く、自由度は低い。
*価格設定が決まっているため、価格調整が難しい。
*営業担当者とのやりとりになるので、現場での直接交渉はほぼ出来ない。

 

撮影/石黒美穂子

 

建築家と呼ばれる人に依頼する場合はどうなのでしょう。

 

「その建築家の作品として、自分たちの家をつくってもらいたいか? を考える必要がありますね。その方の建築が好きで、尊敬も出来るなら良いと思います。施主の要望の受け入れ方や関わり方も、それぞれだと思うので、その見極めが重要ではないでしょうか」

 

 

現在、やっと新居に移り住み暮らしを始めたばかり。外周りやショップの工事はまだ継続中ですが、のんびり、ゆっくりと自分らしい住まいづくりを楽しんでいるあやさん。

 

「やっと、自分たちで考えた大きな小屋のような家で暮らし始めました。外に居るように暮らす。そのコンセプトどおりの家ができたと思います。一日中どこからかは陽が差して、風や木々の音、鳥の囀りに囲まれています。それから夜は真っ暗なので(笑)、星がとても綺麗です」

 

次回は、新居にお邪魔します。

日用美の家作り

文/小澤典代

手仕事まわりの取材・執筆とスタイリングを中心に仕事をする。ものと人の関係を通し、普通の当たり前の日々に喜びを見いだせるような企画を提案。著書に「韓国の美しいもの」「日本のかご」(共に新潮社)、「金継ぎのすすめ」(誠文堂新光社)「手仕事と工芸をめぐる 大人の沖縄」(技術評論社)などがある。
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