ネットでの理想の死−−−−LINEグループの憂鬱【第7回】
辛酸なめ子『新・人間関係のルール』

bw_manami

2019/03/07

老後のためのLINEグループ

 

 LINEのグループは老後のために入っている、というところがありました。

 

 老後、孤独を感じることがあるかもしれない、そんな時はLINE(数十年後も存在していれば)のグループの友人たちに連絡を取って集まれたら……。時々会う友人の集まりのグループLINE、数は少ないですがいくつかあって、それを心のよりどころにしていました。

 

 でも、最近気付きました。LINEグループは生き物で(緑色なので植物のイメージ)、ケアをしないと枯れてしまう、ということに。

 

 アプリを開くと、ほとんどのグループが数ヶ月以上何の書き込みもない状態です。最後の発言が自分で、誰も書かないまま放置されていることも多いです。もはやグループの数だけ淋しさがある感じです(複数人のグループだけでなく、音信が途絶えた1対1のトークルームも合わせるとかなりの寂寥感が)。

 

 同窓生とのグループで、そのうち一人の出産祝いを書き込んだのに誰も無反応とか。新宿でよく集まっているという人たちのグループに入れてもらったのはいいけれど、私が入ってから書き込みが止まったとか、おしゃれイベントで知り合った女子二人とグループを作って一回食事に行ったけど、その後グループの書き込みが途絶えたとか。スワイプさせて枯れてしまったグループを眺めていると、切なさで胸がつまります。

 

 一年以上誰も発言してないLINEグループに書き込むのはハードルが高すぎです。何かの宣伝かマルチの勧誘だと思われるかもしれない……。そんな逡巡があって、何もできないままです。

 
とりあえずグループを作っても、生存確率は1/10

 
 グループに関して、もっと軽くとらえた方が良いのかもしれません。

 

 このところ、カフェなどで若い世代の交流を見ていると、一緒に写真を撮り、お互いほとんど会話せず、その写真をLINEやインスタにアップしまくる、という時間の過ごし方が増えているようです。

 

 笑い合ったり、「かわいいね」というくらいで会話らしい会話は聞こえてこず、もう進化した現代人は言葉を卒業し、ビジュアルイメージでやりとりしているようです。

 

 以前、私もそのような、写真のみのLINEコミュニケーションをする機会がありました。5、6人の集まりで、集合写真など何枚かシェアするため、その場でLINEの名前やQRコードを交換。

 

 そして全員1つのグループにまとまり、写真が何枚かアップされました。

 

 するとその写真をダウンロードした人から、次々とグループを退出。そういう風習なのかと思い、私も急いで退出したので、メンバーの連絡先がわからなくなってしまいました。一期一会であとくされない感じでした。

 

 先日は、女性二人とお茶や散歩をしたのですが、カフェに移動するやいなや写真アップタイムに。さっき撮った写真を無言でお互いLINEに投稿し、ほぼ会話がないまま解散しました。これが最近の若い女子の風習でしょうか……。 

 

 Wi-Fiもない場所で写真を10枚くらいアップいる女友達の経済力に敗北感が。そしてその後、予想通りグループのトークは途絶えました。

 

 グループが枯れる原因の一つに、「グループを作っただけで満足」という人がいることが考えられます。先日、初対面の人も含めて女性7人くらいでお茶をして、リーダー的な女性が「ここにいる皆でグループ作らない?」と提案。

 

「グループが増えすぎるのがイヤなので私はいい」と潔く断った人以外でLINEグループが結成。しかし「今日はありがとうございました~」的なお礼の言葉で書き込みが止まっています……。

 時々、その場でいる人でグループを作りたがる人がいますが、先日はなぜか入りそびれて私だけ誘われないという「LINEハブ状態」に。瞬時にQRコードが出せる瞬発力と積極性が必要です。

 

 心のよりどころだったLINEに、気付いたら心が振り回されていたような状態でした。

 

 そんなある時、プチトラブルが発生。2つあるIDのうち、iPadで使っていたLINEのIDが突然消えてしまったのです。そのIDは以前使っていた携帯の番号にひもづけられていました。2年程前に電話自体は解約してしまったのですが、おそらく同じ電話番号を誰かが取得し、LINEに入ったのだと予想されます。

 

 その瞬間、消滅したのでしょう。同じ電話番号の人は、世界に二人存在できないのです。SFのようですが、とにかく私のIDはこつ然と消えてしまいました。そして学生時代の友人のLINEグループからも姿を消したのです(たぶんUNKNOWNになってからひっそりと退出)。

 

 そのグループに入っている女友達と会った時、「最近、グループのトークが子育ての話ばかりで入れなくて……」と言われました。「そのやりとり知らない。多分私のIDが消えちゃったから」と言うと「うそ、全然気付かなかった!」と……。

 

 グループからいなくなって一ヶ月ほど経ったのに誰も気付かなかったらしいです。淋しいと同時に自分の存在感の薄さを痛感。

 

 でも、心のどこかで解放感を覚えていました。LINEで姿を消したように、いつの間にかいなくなるのが、ネットにおける理想の死かもしれません。「あれ、◯◯さんいなくない?」「そんな人いたっけ?」といった会話を妄想し、切なさに浸りました。

 

 今は、あの世からLINEのトークを見下ろしているような感覚です。ID消失で死の疑似体験ができました。

 

 

 

【今月の教訓】
LINEのグループは、植物のようなもの。会話という肥料を与えないと枯れてしまう

 

新・人間関係のルール

辛酸なめ子(しんさんなめこ)

1974年東京都生まれ。埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。女子学院中学校・高等学校を経て、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。恋愛からアイドル・スピリチュアルまで幅広く執筆。著書に『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)、『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)など多数。
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