DNA親戚のコネを期待【第16回】
辛酸なめ子『新・人間関係のルール』

ryomiyagi

2019/12/13

遺伝子検査――アメリカで人気のサービス

 

「遠くの親戚より近くの他人」と申しますが、親戚とは年々疎遠になってゆき、近くの他人もとより友人とも疎遠になりがちです。

 

唯一、メールをやりとりしている九州の叔父からは「皇室コメンテーターは大変な仕事ですが、がんばってください」とメールが来て、若干誤解があるようです。

 

そんな状況の中、一筋の光が……。

 

それは約6年ほど前に受けたアメリカの遺伝子検査です。

 

その検査「23andMe」はアメリカでは人気のサービスで、唾液を送るだけで、健康のリスクだったり先祖の歴史、DNAを共有している遠い親戚がわかります。

 

ちょうどテレビを観ていたら「奇跡体験!アンビリバボー」という番組で、遺伝子検査で家族の知られざるルーツがわかった、という映像が放映されていました。

 

アメリカ在住の女性が何の気なしに遺伝子検査をしたら、亡くなった両親がアイルランド系だと教えられていたのにユダヤ系の血が入っていることが発覚。さらに調べたらいとこの祖父と自分の父が病院で同じ日に生まれて取り違えられていたことがわかったそうです。

 

このように、事実がわかってすっきりするケースもあるいっぽうで、母親の浮気が判明したり、もやもやする事態も発生しているようです。

 

でも、「ニューヨークタイムズ」紙に「遺伝子検査サイトは新たなソーシャルネットワーク?」という記事が掲載されるほど、アメリカでは登録者数も増えて、交流も活発化しています。

 

サイト上で、DNAの親戚を一覧できるので、連絡を取り合ったり会って親睦を深めることもできます。

 

モンゴル人の青年からアゼルバイジャン人のセクシー美女まで
――「DNAファミリー」とは?

 

私がこの検査を受けたのは女性週刊誌の仕事がきっかけで、病気のリスクなど健康面を調べるのが目的でした。

 

さすがアメリカは遺伝子研究が進んでいて、病名もやたら細かく出てきます。リスクが高いのは心房細動(不整脈の一種)、アルツハイマーリスクのApoE-E4遺伝子を持っていて、通風のリスクも平均より高い、など書かれていて、潜在意識に刷り込まれそうです。

 

健康のページはあまり怖くてクリックできなくなりました(最近はここまでリスクが表示されないようになっているようです)。

 

そのかわりについ見てしまうのは先祖や「DNAファミリー」のページです。先祖から伝わる遺伝子(ハプロタイプM7c)や来歴(幻の大陸スンダランドから移住)について思いを馳せることで、先祖供養になればと思っています。

 

そして、年々数が増えていっているのが「DNA Relatives」、何らかのDNAを共有している遠い親戚の数です。それだけこの遺伝子検査を受ける人が増加しているということでしょう(海外に唾液を送るというハードルがあってまだ日本人は少ないですが……)。

 

サイトの「DNA Relatives」のページをクリックすると、ずらっと遠い親戚の名前リストが並びます。私の場合DNAシェア度が多くて、共有0.62%、少なくて0.01%ですが、登録者数が多いアメリカならこれで生き別れのきょうだいとかが見つかったりするのでしょう。

 

私の「DNA Relatives」は、近い親戚でひいひいひいおばあちゃんかおじいちゃんが同じ、というレベルです。不思議なことに遺伝子を共有している人は世界中に散らばっていて、モンゴル人の青年からアゼルバイジャン人のセクシー美女なんていうDNA親戚も。

 

気付いたら、DNA親戚の名前で検索することにハマっていました。顔写真を登録している人もいるので、名前で検索して職業を調べることもできます。DNA親戚ができるだけ素晴らしい人物でいてほしい……と自分のことを棚に上げて期待してしまいます。

 

例えば0.18%DNAを共有しているCさんの名前で検索したら、アリゾナの美人歯医者でテンションが上がりました。0.19%共有の女性、Hさんはメキシコのエネルギー会社に勤務。そこそこ年収高そうです。意外だったのが0.11%共有のテキサス州のいかついルックスのK氏。ナイフ職人として10年以上の経歴を持っているそうです。

 

クリエイティブ系のDNA親戚も何人か見つかりました。0.27%共有している中国人の女性CさんはNYでクリエイティブプロデューサーとてして活躍。サイトのクライアントの欄に、アディダス、ナショナルジオグラフィック、ロレアルなどと書かれていて景気良さそうです。DNAのつながりで仕事紹介してほしいです。

 

意識高い系のクリエイターは、サンフランシスコ在住の中国人女性、Tさん。0.25%DNAを共有しています。彼女はフードデザイナーとして、地球環境や食の問題に取り組んでいます。0.38%共有しているヒューストンの薬学博士(分子薬理学専門)もいました。きっと共通のご先祖様もお喜びでしょう。

 

人のDNAを見て我がDNAを直せ

 

いっぽうで、残念な親戚もいます。羽振りの良さそうな男性(0.01%シェアなのでごくわずかですが……)がいたので、ちょっと成金っぽい雰囲気を感じながら、オフィスのサイトをクリック。するとエロ写真満載で、そういう系のカメラマンさんのようでした。

 

それもDNAが元気ということなのでしょうか。

 

さらに0.2%共有のアメリカ人男性K氏のツイッターを見つけたので見てみたら、カニエ・ウェストをスラングでディスっていました。

 

DND親戚が炎上に加担していたとは軽くショックです。とか言って私も彼らに検索されてがっかりされているのかもしれません。人のDNAを見て我がDNAを直せ、いつ調べられてもいいように身辺をクリーンにしておかなければ……。

 

DNA親戚にスルーされる

 

そして、600人近いDNA親戚の中で今のところ最も共有度が高いのは0.62%のH氏です。誇らしいことにハワイの心臓専門医でした。DNA検査で心臓に不安要素があったので、わざわざハワイで診察を受けたいくらいです(そして莫大な医療費が……)。

 

「DNAのつながりの強さ」でソートするとリストの中で一番上に来るH氏は、もはや他人とは思えません。このサイトからはメッセージを送れるのでちょっと前にメールしてみました。

 

「こんにちは、私は日本に住んでいる女性です。久しぶりにこのサイトを見たら、あなたと先祖が同じかもしれないということを知りました。私は先祖について知りません。あなたは先祖についてご存知でしょうか?」と、たどたどしい英語で送信したのが約半年前。

 

それから返事は……一切来ていません。なしのつぶてです。

 

DNA親戚にスルーされてしまいました。裕福そうな親戚に、将来困ったらお金貸してほしい……という下心がバレているのでしょうか。

 

さすがDNAを共有しているだけあってお見通しです。

 

今月の教訓
遠い親戚のDNAは遠くから応援し、先祖に心の中で感謝します

 

新・人間関係のルール

辛酸なめ子(しんさんなめこ)

1974年東京都生まれ。埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。女子学院中学校・高等学校を経て、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。恋愛からアイドル・スピリチュアルまで幅広く執筆。著書に『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)、『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)など多数。
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