「リモート飲み会」入門【第21回】
辛酸なめ子『新・人間関係のルール』

この生活はいつまで続くのか

 

コロナウイルスによって、こんなに人と人との関係が変わってしまうとは……。

 

「ソーシャルディスタンス」という概念が広まり、会う人の数を8割減にすることを余儀なくされ、さらに感染拡大を防ぐために「新しい生活様式」なるものが専門家から提言されました。

 

密を避け、人との距離を保ち続けなければならない生活はいつまで続くのでしょう?

 

友人たちとカフェやレストランで集まって楽しくトークしていた日々はいつか戻ってくるのでしょうか。その節は何も気にせずお互いの飛沫を浴びまくっていましたが……。

 

初めての「ZOOM飲み会」

 

今は実際会わない「リモート飲み会」「ZOOM飲み会」といった新しい風習が生まれています。リアルの飲み会には出不精な私ですが、人とほとんど会わなくなってしまった今、たまに来るリモート会の誘いがありがたく、何度か参加させていただきました。

 

初ZOOM飲み会は、まだ平和だった頃、忘年会やホームパーティでご一緒していた同年代の友人グループ。

 

まず、家の中でWi-Fiの環境が良いところを探して、リビングの片隅の壁ぎわが電波が安定していることがわかり、床にしゃがんで参加することに。

 

本やDVDを重ねてその上に台を乗せ、iPadを設置していたのですが、低めだったのでまず画面に胸の部分が映るという見苦しい状態になってしまいました。友人に「胸をチラつかせている」と指摘され、後ろに引いたりして何とか顔部分を映しました。

 

しかし、現実の飲み会と違って常に顔を晒している、というのが緊張感あります。リアルな場は、誰かと誰かが話が盛り上がっている間、自分はふと他のことを考えたり、スマホやテレビを観たり気を抜けますが、オンラインの会の場合はテレビのワイプ内の芸能人のように常に顔の表情が映されています。

 

そんなに自分の顔を注視する人なんていないと思っても、画面の何分の一かを占めているので、常にリアクションしたり話に聴き入っている表情をキープしなければなりません。

 

「ZOOM映え」という言葉も生まれましたが、初心者なのでそこまで演出できず、蛍光灯の下、自分の疲れた表情を晒すのも気がかりです。

 

オンライン飲み会は意外と疲れる、というのを実感。

 

ただトークの内容としては、皆非常事態で大変なので、ストレスや悩みを打ち明けたり、いつもより親密になれた気がしました。ストレスがたまった時は、クッションを顔の周りに3枚当てて叫んでいる、とか良い解決法を聞けました。

 

そして最大の利点としては、お店で宴を開催すると(お酒をあまり飲まない身として)「割り勘負け」が気になってしまいますが、リモートの会はそんなセコい心配とは無縁で、自分の家で好きな飲み物を用意すれば良い、ということでしょうか。だいたい、今のところハーブティーか白湯を飲んでいます。繁華街で飲み会して混んだ電車で帰らなくて良いのも気が楽です。

 

ただ、リアル飲み会だと「電車があるのでそろそろ……」と切り出せますが、オンラインだと終わるきっかけが難しいです。この会では、参加している夫婦のお子さんが眠くなったので、という自然な流れでお開きになりました。

 

二回目のZOOM飲み会

 

二回目のZOOM飲み会は、以前仕事で一緒だった若めの方々5人ほどで開催。「お元気ですか?」という今となっては重みのある問いかけから始まりました。

 

30代くらいだとオンライン飲み会の機会も多いそうで、「幼なじみと飲んでいたら奥さんが参入してきたり、新しい知り合いが増える良さもあります」とのことでした。

 

参入といえば、あまり嬉しくないのが巷で話題の「ZOOM爆弾」です。セキュリティーをかいくぐって知らない人が乱入し、不適切な画像を送ってきたりするらしく、この時の飲み会参加の友人が経験あるとのこと。白人の少年たちが突然ひわいな画像を送ってきたそうです。それを聞いて、美少年がいたずらしてくるのならちょっといいかも、と思ってしまいましたが……。ほとんど会話がない気まずいZOOM飲み会の場合は、話のネタになりそうです。

 

二回目のZOOM飲み会では、外出自粛ライフの話題が盛り上がりました。むしろ健康的になって糠床を作りはじめたり、公園で運動しているという話や、リモートがテーマの仕事の新企画など。ただ漫然と過ごしている場合ではない、と刺激を受けました。「これを標準として生きていくしかないのかな」という誰かの言葉でしんみりした雰囲気に……。「何もしない時間が増えると自分が猫になった気分になる」という意見もあって、猫だと思えば少しポジティブにとらえられます。また、おすすめの除菌アイテムを紹介してもらったり、自宅からだからできることもありました。

 

オンラインの注意点としては、実際会っている時のように空気を読めないので、今、誰かが話したそうにしている、というのがわからず、話がかぶってしまいがちなところです。自分と相手の話が重なると声も聞こえないという……。食い気味にならず、間が空いた時にすっと話し出すようにしたいです。

 

そして皆、「ZOOM飲み会は時間が経つのが早い」と言っていました。たしかに気付いたらあっという間に3時間が経過。実はオンライン飲み会、楽しいのかもしれません。

 

現実からは逃げられない

 

三回目は、仕事でお世話になっている人との飲み会でした。ステイホームの間の食生活についてなどトーク。グラタンにレーズンを入れるとおいしいそうです。相手の方は、最近おもしろかった動画を共有画面に出したり、新居の中を回って見せてくれたりして飽きなかったですが、もしかしたら間が持たなくて気を遣わせてしまっていたのかもしれません。こちら側はバーチャル背景だしとくにおもしろい情報も提供できず……。リモート飲み会は、受け身ばかりではなくお互い楽しませようとする姿勢が大事だと学びました。

 

実生活では自分から友人を誘ったり会を企画しようとすると空回りしてしまいがちですが、オンラインでも同様の事態に見舞われました。ZOOM飲み会の楽しさが徐々にわかってきたので、無料のオンライン会議のサービスで自分の部屋を作成。友人グループにLINEでURLを送って、今度どうでしょう、と誘ったら誰ひとり反応せず一ヶ月ほど経過しています……。

 

オンライン飲み会で調子に乗りかけた心が、我に返りました。どこに行っても現実からは逃げられません。この期間は誰よりも自分と向き合った方が良さそうです。

 

今月の教訓
空気感染のリスクはない代わりに、空気が読みにくいオンライン飲み会。話し始めるのはタイミングが重要です。

 

 

新・人間関係のルール

辛酸なめ子(しんさんなめこ)

1974年東京都生まれ。埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。女子学院中学校・高等学校を経て、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。恋愛からアイドル・スピリチュアルまで幅広く執筆。著書に『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)、『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)など多数。
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