「リモートワーク」入門【第22回】
辛酸なめ子『新・人間関係のルール』

ryomiyagi

2020/06/09

リモートワークの課題とは?

 

リモートワークの普及が進んでいます。そしてリモートワークに関するアンケート調査の興味深い結果もいくつか出てきています。

 

ラーニングエージェンシー社が人事・教育担当者対象に行った「新型コロナウイルス感染症の影響調査」によると、新型コロナウイルス対策としてテレワークを導入した会社が72・1%。その影響で、良い面は「育児・介護との両立がしやすい」「残業の削減」などで、逆に課題になっているのは「コミュニケーションの不足」「テレワークに不向きな職種・業務による不平等の発生」などが挙げられています。人事・教育担当者にとってコミュニケーション力を養えないのがリモートワークの課題のようです。

 

リモートは業種によって向き不向きがあり、インターパーク社が営業職に対して行った調査では、コロナウイルス感染拡大後も47・2%が会社に出社しているという結果に。その理由は、顧客管理システムや、Wi-fi設備などの仕事に必要な環境が自宅にないことや、郵便物の受け取りや発送業務、顧客との商談で出社の必要があるからだそうです。このご時勢に実際に会う商談は、お互いの飛沫を受け入れることで特別な連帯感が得られそうです……。

 

それでも69・6%の営業職が「今後テレワークを実施したい」と回答。反対に、テレワーク否定派で出社したい人の7割は40代以上、という結果になったようです。やはり今までのルーチンは崩せないし、会社は大切な居場所なので寂しい、という心理があるのでしょうか。

 

「営業は会ってこそだから」「社内スタッフや部下とのコミュニケーションが取れない」「テレワークだとサボってしまう」といった否定派の意見が掲載されていました。たしかに会社の人に見られていないので、ついダラダラ仕事してしまう場合も。能力で査定される外資系だったら、緊張感が保てるのかもしれません。

 

一方、 Googleが、関東と関西のオフィスワーカー3000人に聞いたアンケートでは、「テレワークを継続したい」が「継続したくない」を上回る結果になりました(継続したいが49・3%。続けたくないが23・1%。どちらともいえないが27・6%)。

 

テレワーク化が進んでいるのは、部・課長クラスや、30代、一定規模の従業員数をもつ企業に勤める人、だそうで、テレワーク率が低めなのは経営層・役員クラス、公共サービス、事務職、販売・サービス職という結果に。

 

経営者や役員は車で好きな時間に出社するのでリスクは低めですが、やはり一部の業種の恵まれたオフィスワーカーがテレワークに移行できているようです。インフラや販売・サービス職は日本を支えるためにも職場に出向いているという現実が見えてきます。感謝の念にたえません。

 
マスコミは体育会系?

 
出版関係でも、リモート化が進んでいるところと出社が必要なところにわかれているようです。

 

先日仕事でご一緒した女性誌の編集者は「家で完全版下を作ってデータ入稿しています。紙で入稿している他の出版社はそれぞれの家をバイク便が飛び回ったりして大変だと聞きますが……」と余裕を漂わせていました。

 

通勤時間が節約できて、凝ったレシピを投稿したり生活に余裕が生まれたとのこと。他の編集部の人に聞いたら、「取材に行きたくても相手(芸能事務所)から飛沫が心配だと言われて、だいたいリモートでインタビューしています」とのことで、出社数も週数回になっているそうです。

 

昔からの慣習を守っている媒体では、「web取材? 実際会わないとダメ」という指令が出されがちです。お互いマスクして距離を保てば多分大丈夫だと思いますが……。

 

ただ、あるカメラマンさんは「うちの会社は、もしコロナに感染したら絶対誰にも言わず、自力で治すように言われてます。もし社内で一人でも出たらオフィスが閉鎖になってしまうので……」と恐ろしいことをおっしゃっていました。

 

マスコミには体育会系っぽい空気のところもあるようです。日本人は人に迷惑をかけることを極度に恐れる民族……それが回り回って、迷惑行為をする人への糾弾へとつながっていくのでしょう。感染者数をただ数字として恐れたり忌避するのではなく、感染した人への思いやりの心を忘れないでいたいです。

 

リモートでの第一印象が仕事につながる?

 

私自身はというと、もともと仕事的に下請けなので実際に会わずに進めるリモートワークには慣れているつもりでした。ただ、ここまで人に会わないことになるとは……。

 

例えば識者や著名人へのインタビューは、やはり飛沫を浴びせたら申し訳ないのでZOOMや電話で行うことになりました。家のWi-Fiが不安定なため、音声がうまく届かず相手方を待たせてしまう失態も……。相手のパソコンの具合で音声が聞こえなくて、いくつか動画通信サービスを変えたりしていたら20分くらいロスしてしまったこともありました。

 

そしてオンラインでの取材の難点は、話すタイミングがかぶってしまうこと。実際会っていたら日本人特有の空気を読む能力によって、発話のタイミングが調整されるのですが、オンラインだとさすがに話し出す気配まで察することができません。同じタイミングになったり、話を奪いあう形になってしまったり、識者の先生の話を遮ってしまって反省することも多々ありました。心理学的には同じタイミングで話す人とは気が合う説があるようですが、話の腰を折ってしまった上に、自分の声で相手の話が聞こえなくなるのでなんとか避けたいです。

 

また、最近は「リモート映え」「ZOOM映え」も言われていますが、画面の何分の一かに常に自分の顔が映っているのが落ち着かないです。とくに何も考えないでそのままオンラインに出ると自分の顔がくすんでいたりアラが目立って、気になって仕事に集中できなくなってしまいます。メイクや服の色、照明などに気を使った方が良いようです。

 

白い壁が背景だと自分の顔色が暗く見えるので背後に奥行きがある方が良いとか、カメラの位置は目線より高めが良いとか、テレビの特集で技が紹介されていました。メイクでは、眉とアイラインはしっかり目で、リップも濃くすると顔がくっきりして見えるそうです。リモートでの第一印象がその後の仕事の発展につながるのだとしたら気を付けたいです。

 

リモートワークでのマナーとは?

 

リモートワークでのマナー、というのも最近できつつあるようです。服装はスーツとネクタイを着用し、画面ごしであっても相手の目をしっかり見て話す。そして、会議が終わっても目上の人がログアウトするまで出ない、という風習も生まれているとか。

 

現代人は何かとすぐルールを作ってしまうのが面倒です。目上ではないにしろ、私が一番年上というパターンでも、先にログアウトされまくりでした。ただ一番先にログアウトすると、悪口を言われないかという心配が……。

 

目指すべきは「リモ充」?

 

こんな生活様式はいったいいつまで続くのでしょう。リモート化で人と会わなくなっただけでなく、出張などがなくなり仕事量自体減ってしまいましたが、周りの友人知人の話を聞くと、それをポジティブに捉えている人も多いです。

 

フリーで働いている友人は、「楽しくてしょうがない。家にひとりでいるだけなのにハッピーです。ぬか床をはじめたり公園で運動したり健康になりました」と話していました。

 

編集者の友人も、自宅の水回りを磨いたり料理をしたりして生活力を高めているようでした。

 

会社経営者の女性に「もとの働き方に戻れると思います?」と聞いたら「戻らないし、戻るべきじゃない。これを機に生き方を変えていかないと意味ないですよね」という答えに共感しました。

 

日本人は今まで働きすぎていたので、コロナでひまになったぶん、自分や地球をケアする時間を作ることで平和な世の中になっていくと良いのですが……。空いた時間に、リモートで受けられる講座に申し込みました(給付金ぶんの費用で)。

 

しばらくリモ充を目指して自分を高めていきたいです。

 

今月の教訓
慣れないリモートワークもポジティブに使えばリモ充になれます。

 

 

新・人間関係のルール

辛酸なめ子(しんさんなめこ)

1974年東京都生まれ。埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。女子学院中学校・高等学校を経て、武蔵野美術大学短期大学部デザイン科グラフィックデザイン専攻卒業。恋愛からアイドル・スピリチュアルまで幅広く執筆。著書に『女子校育ち』(ちくまプリマー新書)、『大人のコミュニケーション術』(光文社新書)、『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)など多数。
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