ヤクルトの歴史的な16連敗に原因はあるのか。 異常な連勝・連敗の増加に思うこと
お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

 

◆ヤクルトはなぜ泥沼の連敗地獄に陥ったのか?

 

ヤクルトスワローズがようやく長いトンネルを抜け出した。

 

5月14日から16連敗を記録して、1970年に自ら作ったセ・リーグワースト記録に並び、プロ野球記録の18連敗(1998年・ロッテ)の影がちらつく中、日曜日に横浜DeNAに勝利してようやく負の連鎖を断ち切った。

 

ヤクルトは昨年の後半から連勝・連敗が多いチームのようだが、ヤクルトに限らずどうも最近の野球は大型連勝・連敗が多い印象を受ける。横浜が10連敗や5連敗を記録して一時は最下位にまで転落し、逆に開幕から不調だった3連覇中の王者・広島が調子を取り戻すと一気に3年ぶりの11連勝。首位に立ち独走体制に入りつつある。5連勝も今季だけで3回目だ。

 

最近は記憶にあるだけでも2017年の巨人の13連敗、この年96敗の大敗シーズンを送ったヤクルトの14連敗、10連敗が思い起こされる。連勝でいうと、昨年の山賊西武は開幕から8連勝した。

 

メジャーでも2017年にインディアンズは22連勝したし、途中までは116勝のシーズン勝利記録(2001年・マリナーズ)更新の期待がかかるペースで勝ち続けていたドジャースは、リーグ優勝はしたものの、夏場に急激に調子を崩し11連敗をした。今季は開幕からマリナーズが好調だったものの、連敗して失速し、一気に地区最下位まで沈んでいる。

 

こうした大型連勝・連敗の続く原因は何なのだろうか。もちろん理由は1つではなく、様々な要素が絡んでいるし、めぐり合わせが悪いこともあるので何でもかんでも理由を探す必要はないかもしれない。今回に関してはいつも以上に完全に主観による、居酒屋談義として読んでもらえたらと思う。

 

ヤクルトの16連敗の原因は先発投手の不振、それに伴うリリーフ投手の登板過多、それに輪をかける守備の乱れ、そして一発でしか点が取れない打線の得点圏打率の異常な低さや下位打線の弱さ、連敗による焦燥感……、それらが複合的に悪い意味で噛み合ってしまい、泥沼にハマってしまったことにあると言える。

 

先発投手が連敗中QSを達成したのはわずかに4回。先発が全く試合を作れずに早々に降板し、リリーフの負担が増大していた。ヤクルトの投手陣は以前は軟投派や技巧派が多かったものの、今は球速もが上昇し奪三振も増加している。

 

拙著『セイバーメトリクスの落とし穴』(#お股本)には掲載できなかったが、守備の責任は大まかに言って投手7割、野手3割程であると言われ、フィールドに飛んだ打球は大半が野手によって処理されることになるため、野手の守備力は重要な要素となる。

 

野手は攻撃のほぼ全てを負担し、守備における投球以外の部分を賄うため、勝利への貢献は全体的にみると野手6割、投手4割程となる。よく「野球は投手」と言われるが、実は野手の方がより大きな影響力を持っていると言える。

 

◆ブレイク中の村上宗隆は守備が課題

 

5月のヤクルトのDER(本塁打を除いてグラウンド上に飛んできた打球のうち野手がアウトにした割合」=1-BABIP)は.601という低さで、ここまでのシーズン全体でも.670とリーグワーストである。この数値は一般的に平均.680~.700程度である。また、代表的な守備指標のUZRは両リーグダントツで最下位の-30.9を記録しておいて、ただ失策が多いだけでなく、根本的な守備力が極めてお粗末なのだ。

 

将来の球界の主砲として期待され、2年目ですでに14本塁打を記録して大器の片鱗を見せる村上だが、守備には大きな課題がある。サードだけでなく守備の終着点であるファーストでも守備難を見せており、宮本慎也コーチと早出でレベルアップに取り組んでいる。

 

ショートのレギュラー西浦や、彼が故障で離脱した後に出場する太田も守備で多くのマイナスを作り、セカンドの山田哲人も盗塁こそ14個成功させているものの守備範囲が今季は狭まっている。

 

外野に目を移すとレフトのバレンティンは相変わらずの集中力を欠いた緩慢守備を見せているし、打撃では年齢を感じさせない青木も脚力はさすがに衰えている。雄平もマイナスを記録しており、狭くて打者が打ち下ろしとなっている打者有利の神宮球場で、まともに守れない野手が投手の足を引っ張っている。

 

広島が序盤もたついたのもショート田中広輔の不調や、慣れないファースト松山などの内野の守備の乱れが大きく、ファーストがバティスタで固定されサードも小窪を起用するなどして安定したことで復調した。守備力というのはそれほど重要であり、落合博満氏も指摘した通りであろう。マリナーズも守備がお粗末であり、ホームランこそ量産しているものの雑な野球が目立っている。

 

打撃に目を移すと、2番から連なる青木、山田、バレンティン、村上は3者連続本塁打を記録するなどしているものの、打点は伸びておらず、下位打線は貧弱でほとんど得点をあげられない。村上も徐々に打率を落としてきた。連敗中のチーム全体の得点圏打率は1割台に沈み、心理的な焦りもあったのだろう。

 

ヤクルトの継投はどうも連敗前から(というか元々)、どの試合も同じ投手が出てくる傾向があり、勝ちパターンの投手の負担が大きい印象を受ける。それもあって抑えの石山が故障で離脱してしまい、力のある投球を見せていたマクガフや風張らも成績を落としてしまった。

 

ブキャナン以外の先発投手は連敗中5点台、6点台以下の防御率で、ブキャナンの登板が今季絶好調の横浜・今永と当たってしまうめぐり合わせの悪さもあった。
しまいには、小川や原らを中4日5日と間を詰めて登板させたり、ルーキーの清水に連敗ストップを託したりと、より深みにハマっていってしまった。先発がイニングを食えないからさらにリリーフの負担が増していく悪循環で、連敗中は1点差の試合を6試合、2点差を2試合も落とした。

 

連敗中はベンチからも悲壮感が漂っていた。最初は「いつか止まるだろう」と深くは考えていなかったとしても、徐々に負けがこむと焦りから余計深みにハマるのは選手個人も、ベンチの采配にも共通することだ。

 

◆基本に立ち返ることの重要性

 

とはいえ、止まない雨はない。

 

日曜日の試合では初回、満塁のチャンスで大引がタイムリーを打ち、連敗が始まった試合で先発していた原樹理が中4日での登板ながら6.2回を1失点に抑え、最後は復帰した石山が試合を締めて連敗を脱出した。これまでの悪循環の、全てが逆噴射していたと言えるだろう。

 

現代野球は「先発投手は3巡目で打たれやすい」というデータ分析から、なるべく早めに降板させ、リリーフ投手をつぎ込む傾向になりつつある。だから当然、中継ぎ投手の負担は大きい。先制点をあげて勝ちパターンの投手をつぎ込み、確実に拾っていく試合を増やすのが何より重要であるとは言え、どの試合でもワンパターンの継投をしていたらやはり投手は疲弊する。

 

守備の影響を受けにくい、奪三振が多い投手を揃えることが理想であるとは言え、現実には予算の兼ね合いなどもあって難しい。また、守備の影響もどうしても受ける。

 

打順も、打てる選手の打順を詰めてホームランを狙う一方で、やはりチャンスで打てるかどうかも重要になる。

 

何もかもが極端になりがちな現代だからこそ、守備を整備して投手をもり立てていくという基本に立ち返り、投手もあらゆる技術を駆使して長いイニングを投げられるように、マクロとミクロの目線を併せ持ち、もう1度バランスを思い出してほしい。

 

こうした考え方については次回も書いてみようと思う。

 

今週の用語
「山田哲人」→P61、P143
「ウラディミール・バレンティン」→P285
「3巡目」→P226
「中継ぎの酷使」→P229
気になる人は『セイバーメトリクスの落とし穴』で要チェック!

お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)

野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してTwitterでコメントし続けたところ、25,000人以上のスポーツ好きにフォローされる人気アカウントとなる。 プロ選手にアドバイスすることもあり、中でもTwitterで知り合ったダルビッシュ有選手に教えた魔球「お股ツーシーム」は多くのスポーツ紙やヤフーニュースなどで取り上げられ、大きな話題となった。初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴』がバカ売れ中。大のサッカー好きでもある。
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