独走巨人軍が実行する「メジャー流」7つの改革の正体とは
お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

agarieakiko

2019/07/31

 

巨人が独走している。前半戦を48勝31敗1分けの貯金17の首位で折り返し、一時はセ・リーグの貯金を独り占め。2位以下に最大10.5ゲーム差をつけた。やや層の薄い投手陣が打たれ始めゲーム差は縮まっているが、4年連続で優勝を逃し広島に3連覇を許した巨人がなぜ今季、これほどの強さを発揮しているのか?

 

そこにはGMを置かない「全権監督」原監督の、メジャー流編成と日本流采配の融合が見えてくる。

 

1)大型補強、血の入れ替え

 

オフには広島で2年連続MVPに輝いていた丸佳浩を獲得した。広島黄金期の中心を担い、巨人独走の最大の源泉力ともなっている丸の獲得は同一リーグからの引き抜き、バランスブレイカーの獲得という意味でも大きな意味があった。

 

功労者でもある長野久義や内海哲也を人的補償で流出したことは賛否両論を巻き起こしたものの、戦力的な意味では大正解であったと言える。

 

2)3人の捕手併用

 

西武から捕手の炭谷銀仁朗もFAで獲得した。これにも賛否両論あったものの、捕手の負担が増す昨今においては小林誠司や若い大城卓三にだけ頼るわけにもいかず、実力に遜色のない捕手を複数準備して、回していく起用が不可欠である。フレーミングなどには難のある炭谷だが、その豊富な経験を活かし、小林とは違った緩急を使う配球や、捕手らしい読みで決め打ちする「ここぞの場面」での打撃でチームに貢献している。強肩やフレーミング、状況に応じたリードには定評があるが打撃力の低い小林、打撃とフレーミングに優れるが、カバーリングやホームでのブロック、サインプレーなど捕手としての基本をまだ勉強中の大城との、三者三様の性格を持つ3人が特徴を出し合う併用が機能している。

 

3)プロスペクトの大量保有、トレード売却

 

「1番・セカンド 吉川尚輝」が今季の巨人の1つの目玉であった。圧倒的な身体能力で広い範囲を守り打撃でもパンチ力のある吉川がチームを牽引したが、課題である故障でチームを早々に離脱。本来は代わりを担うはずの田中俊太も低調で2軍暮らしが続き、一時はチームの勢いが落ち始めた。

 

だが、巨人はここで若い若林晃弘や山本泰寛が台頭。若林はその優れた選球眼や積極性で吉川の穴を埋めて余りある活躍を見せ、1番打者にも抜擢されている。

 

一方で、シーズンの途中には積極的なトレードによる補強も行った。トレードの第1弾として、制球難から中継ぎ投手として計算が立たない吉川光夫と、捕手3人が埋まり1軍での枠がなくなった宇佐美真吾を日本ハムに放出して、手薄なリリーフを埋めるべく鍵谷陽平と藤岡貴裕を獲得した。

 

トレード第2弾としては右の大砲候補ながら守備位置などの関係もありこれまた出番が期待できない和田恋を楽天に放出し、見返りとして先発の古川侑利を獲得した。6番手の先発を埋める役割が期待されている。

 

育成制度が開始されて以降、巨人に支配下登録された人数は実は12球団1位であり、3軍制が始まった16年以降はそのペースも加速しているのだという。そうした下からの叩き上げと戦力化、若いプロスペクトを大量保有し戦力にし、余剰戦力を放出してシーズン中にも補強に動く立ち回りのうまさは、まるでヤンキースのここ数年のトレードの動きを彷彿とさせる。補強と育成の両輪を掲げ、豊富な資金力と編成力が光る。他にも手薄な投手陣の補強としてデラロサも途中獲得した。

 

4)2番強打者論、ホームランの増加

 

今季の巨人はチーム打率、本塁打、得点でいずれもセ・リーグトップ。強力打線が復活している。丸佳浩の獲得が大きいのはもちろんで、丸は昨年の空振りを恐れず長打を狙うスタイルからやや変化させ、コンタクトに比重をおいたバランス型の打撃に戻している。

 

こうしたオールランダーの前を打つ2番坂本勇人が、今季の原巨人の目玉である。「バレル」を感じさせる長打を積極的に狙うスタイルの坂本は、後ろに丸が控えるプレッシャーから安易にボール球で臭いところを突く攻めがしにくくなった投手の甘い球を確実に捉えていき、リーグ最多の29本塁打71打点。昨年はリーグ最多だった故意四球が3つにまで減り、坂本との勝負を余儀なくされた投手から打ちまくっている。

 

坂本に限らず、今季の巨人は三振を恐れずに積極的にホームランを狙っていくスタイルが中心で、さながらメジャーのフライボール革命を実践している。昨季ブレイクし、巨人の4番として定着が見込まれた岡本和真は残念ながら「2年目のジンクス」にハマって昨年のバランスをやや崩し大振りとなり粗さが目立っているが、周りの働きがそれを上回りカバーできている。岡本が本来の当たりを取り戻した時、巨人打線は手がつけられない完成形になることだろう。

 

5)中5日、リリーフ整備

 

今季の巨人のチーム防御率はリーグ4位の3.73(28日現在)と、投手力には課題がある。エースの菅野智之が不調で、先発の6人目の穴も埋まらない。リリーフ陣も期待された新外国人のライアン・クックが期待はずれで、病気から復帰したスコット・マシソンも本調子には程遠い。覚醒した中川皓太がクローザーに定着したものの、層が薄く、日替わりで調子の良い投手を順番に使っていく綱渡りの起用法となっている。

 

投高打高、ボールが飛び投手の負担が大きくなる昨今では、先発として長いイニングを投げられる投手は一握りとなる代わりに、2~3イニングまでなら抑えられる「先発未満リリーフ以上」の投手も増えている。巨人は特にそうした投手が多く、中5日で先発を回す代わりに先発6人目を一人リリーフとして起用することで中継ぎを補っている。今村信貴や桜井俊貴はその必死かつ狡猾な投球で先発の役割を果たす一方、ローテーションからは漏れた田口麗斗を10連投で起用するなどして、接戦での勝率向上につなげている。

 

開幕から好調だった高木京介も連投に次ぐ連投やイニング跨ぎ、好調の中川もポリバレントクローザーとして起用するなどしている。先発としては厳しくなってきた大竹寛もリリーフに転向させた。高木京介が疲れてくると抹消し、田口を昇格させ連投させる。短期間で集中的に起用して疲れや陰りが見えてきたら入れ替える作戦は、果たして長期的に見て正解かは神のみぞ知るところだが、とにかく「今年勝ちに来ている」という姿勢は強く感じられる。

 

6)接戦の強さ

 

こうした投手の起用法に加えて、やはり原監督の勝負勘による積極的な采配、作戦も光る。代走の増田大輝がまるで往年の鈴木尚広のような走塁で終盤に得点をもぎ取る。坂本、丸、岡本の後ろを打つ5番に穴があるとみるや、打撃に優れた大城を一塁手兼捕手として5番に抜擢。大城は走者を返す打撃と長打を狙う打撃を使い分け、OPSなどの指標以上の貢献を見せている。
ベテランの亀井善行を1番で起用したり、陽岱鋼との併用で両者のコンディションを維持しつつ成績を最大化し、阿部を代打や大城のところにはめ込むなど、臨機応変な起用法で昨年12勝24敗と圧倒的に弱かった1点差試合での勝率を大幅に改善している。大城が疲労から打撃を崩し始めると7番に下げ亀井を5番に配置、1番には若林を抜擢するなど打順の最適なバランスの構築や、好投手を打ち崩すためのチームとしての臨機応変さもり、その「采配力」はさすがであると言わざるを得ない。

 

7)荒くれ者の更正

 

人間だから過ちを犯すことはある。過去には道を誤った荒くれ者の投手3人にも再起の機会を与え、山口俊はフォークとスライダーを巧みに操る投球でセ・リーグナンバーワンの先発となり、高木京介はNPB最長の無敗記録が途絶えて故障離脱するまでは圧倒的な投球を見せた。澤村拓一もまだ本来の力は発揮しきれてはいないが、今後の投手陣を支えるキーマンとなるはずである。

 

数々のメジャー流の改革と日本流の采配を融合させた今期の原巨人。層の薄い投手陣が徐々に崩れているが、追い上げる横浜や王者・広島の追い上げを振り切れるか。中継ぎとして圧倒的な力で抑え込む「中抑え」である高木や田口のような存在が崩れると、仮にリーグ優勝してもCSや日本シリーズでは綻びが出るだろう。今後、どのように投手陣を立て直していくかにも注目したい。

 

巨人は今週、再び9連勝と調子上げてきた広島、4.5ゲーム差で2位の横浜と相次いで対戦する。

お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)

野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してTwitterでコメントし続けたところ、25,000人以上のスポーツ好きにフォローされる人気アカウントとなる。 プロ選手にアドバイスすることもあり、中でもTwitterで知り合ったダルビッシュ有選手に教えた魔球「お股ツーシーム」は多くのスポーツ紙やヤフーニュースなどで取り上げられ、大きな話題となった。初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴』がバカ売れ中。大のサッカー好きでもある。
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