2019年セリーグMVPに輝いた坂本勇人のキャリアを振り返る(守備編)
お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

今シーズンは原監督の下でリーグ優勝を果たしたものの、日本シリーズではソフトバンクになすすべなく4連敗した巨人軍。日本一を目指す来シーズンへ向けて、課題は山積みだ。
「お股クラスタ」の1人でもある巨人ファンのゴジキ氏(@godziki_55)が主軸選手のシーズンを振り返り、さらなる躍進へのカギを探る。第4弾は今シーズンのセリーグMVPに輝いた主将・坂本勇人を2回にわたり攻守両面から分析。

 

 

■若手の頃は過小評価されていた守備

 

坂本勇人は、歴代的に見ても攻守ともにトップクラスの遊撃手と言っていい。

 

高卒2年目から巨人のレギュラーを張っていることはもちろん、2大会連続出場したWBCなどの国際大会でも、日本代表の遊撃手を長い期間担っている。

 

若手の頃から一歩目のスタートや判断はよく守備範囲は広くファインプレーをよく見せた。その反面、安定感には欠けてイージーミスが多く、捕球やスローイングの確実性が課題であった。

 

高卒3年目で規定打席&3割到達や4年目で30本塁打以上を放つという打撃成績を残すなか、失策数が2008~2011年までリーグ最多だったこともあり、多くの野球ファンに「守備があまり上手くない遊撃手」という先入観を抱かれてしまっていた。

 

■宮本と井端の熱血指導

 

2012年のシーズン前の自主トレで坂本は、当時ヤクルトに在籍していた宮本慎也の弟子入りをした。この自主トレで確実性のある送球や正しい捕球の体勢、正確なスローイングといった守備の基礎を学び、多くのアドバイスをもらい練習を重ねていった。

 

さらに、2014年にはこれまた球界屈指の名手である井端弘和が中日から巨人に移籍。守備におけるスローイングの間の作り方などを助言されただけでなく、実際にそのプレーを間近で見ることなどによっても守備力は着実に向上していった。

 

こうした名手たちの力添えもあり、入団当初から光っていた広い守備範囲に加え、2014年あたりからは堅実な捕球や正確なスローイングも自分のモノとして、守備面でも大きく飛躍。攻守ともに球界を代表する遊撃手へと成長した。

 

ここ5年の守備の指標を表すUZR(Ultimate Zone Rating)という守備指標では、以下の数値(デルタ調べ)を記録している。

 

2015年:32.3(セパ両リーグ1位)
2016年:15.1(セリーグ1位)
2017年:10.6(セリーグ1位)
2018年:10.0(セリーグ1位)
2019年:-3.0(セリーグ4位)

 

また、守備得点も通算で見ると歴代3位となる157.3点を記録している。
日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblog

 

一般的に守備の確実性において参考とされるデータである守備率も、2015年は.982でセリーグ1位。2017年は失策数がキャリア初の一桁になり.987でまたもセリーグ1位に輝いた。

 

プレーを映像で見てももちろんだが、数字面でも若手の頃に比べて捕球や送球の確実性が上がり、成熟したことがわかる。

 

2015年のプレミア12では最優秀守備選手を受賞し、2016年,2017年と今シーズンを含めて3度のゴールデングラブ賞を獲得した。

 

このようなタイトルによって一般的なファンの印象も以前とは変わり「守備も上手い遊撃手」と見られるようになっていった。

 

■池山、野村、鳥谷らと比較して考える「遊撃手のやめどき」

 

中堅と言える年齢であった2013年~2015年のパフォーマンスは素晴らしいものであったが、ベテランに差し掛かる近年は守備面でさすがに衰えてきた。

 

今シーズンはゴールデングラブ賞を獲得したものの、UZRはキャリア初のマイナスを記録した。

 

また日本代表としても、来年の東京五輪や2021年のWBCが控えるこの先、坂本のパフォーマンスがどう変わっていくか気になるところだ。

 

元々深めにポジショニングする選手なので、俊敏性の衰えによる左右の打球に対する処理は未だにカバーできている。しかし、過去にも遊撃手として活躍した選手は30歳を越えたあたりからセンターラインとしてシーズンを戦い抜く力を失っていき、三塁手など他のポジションにコンバートするパターンが珍しくはない。

 

遊撃手というポジションは野球選手の花形でありエリートのポジションだ。シーズン通して守備の負担が大きく、身体が丈夫で怪我に強く、攻守や心技体すべてにおいて優れた選手が起用される場合が多い。

 

さらには二塁手と同様にセンターラインを守るため、打球に対する広い守備範囲や、深い場所から送球するための肩力も必要だ。

 

具体的に過去の選手の例を挙げていきたい。

 

元ヤクルトの池山隆寛は27歳の時にゴールデングラブ賞を獲得するが、31歳の年にアキレス腱痛に悩まされ53試合の出場に止まり、翌年に宮本の台頭もあって三塁手にコンバート。元広島の野村謙二郎は29歳の年にトリプルスリー達成やゴールデングラブ賞を獲得したが、32歳の年に股関節の痛みに悩まされシーズン中盤から二塁手や三塁手を守る機会が増え、翌年からは江藤智の巨人への移籍もあり三塁手にコンバートした。

 

坂本に自主トレで指導した元ヤクルトの宮本慎也も、遊撃手から三塁手にコンバートしている。36歳の年に2度の故障もあり、レギュラーになってから初めて出場試合数が100試合を切り、38歳のシーズン途中から三塁手にコンバートした。

 

近年では、阪神の鳥谷敬が35歳になる年に三塁手にコンバートされ、今シーズンから巨人に在籍している中島裕之も30歳を越えたあたりで遊撃手から一塁手や三塁手にコンバートしている。

 

上記の選手を見ると、チーム状況はもちろんだが、選手個々の年齢によるパフォーマンスや足腰の負担や怪我を考慮し、30代前半に遊撃手から異なるポジションへとコンバートしている。
坂本が素晴らしい遊撃手であったことは疑いようもないが、プロのキャリアを通じてこのポジションを守り続けることはかなり厳しいだろう。早ければ来年や再来年のキャンプからコンバートする可能性もあり得るだろう。

 

■坂本の穴を埋める選手はいるのか?

 

巨人の場合、昨年から一軍でプレーをし始めた吉川尚輝が非常に素晴らしいポテンシャルを持っている。二塁手として台頭しているが、後釜の遊撃手として実践で守る機会が増えており、3月に行われた代表の強化試合では、遊撃手として出場し素晴らしいプレーを連発した。

 

しかし、シーズンを戦い抜く耐久性に難がある。長期離脱をしてしまった今シーズン終盤は、遊撃手を守ることの負担を考慮されたのか、外野手として起用される場面も見受けられた。

 

また、今シーズン代走の切り札として活躍をした増田大輝や、現在はインターリーグで活躍しているルーキーの増田陸、守備面では非常に魅力的な湯浅大と言った若手陣の奮起も必要だろう。

 

仮に吉川が再来年の2021年シーズンにある程度戦力として目処が立つならば、彼を軸に複数人で遊撃手を運用していくのも一つの手段である。

 

例えば、阿部慎之助が捕手として退いた直後に小林誠司が後釜として2015年~2018年と正捕手として君臨していたが、やはり阿部というハードルの高さによって求められるものが大きすぎたことや、シーズン通してパフォーマンスを維持できなかったことによって優勝から遠のいた部分があった。そして、今シーズンは炭谷銀仁朗を獲得し、大城卓三を起用し始めた結果「捕手3人体制」となり、リーグ優勝を果たすところまでチーム力が一気に底上げされた。このケースに学ぶことは大きいのではないだろうか。

 

歴代トップクラスの選手の後釜はハードルが高く、ファンはもちろんのこと首脳陣も求めるものが大きくなってしまう傾向がある。そのため、坂本の後釜の遊撃手は計算できる飛びぬけた選手が台頭するまでは複数人体制などで起用していくのはありだろう。流動化したことにより若手陣が奮起してコンバートも上手くいけば、巨人の世代交代はスムーズになる。坂本の選手生命も下手に遊撃手としてキャリアを引き伸ばしていくよりいい方向に向かうだろう。

お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)

野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してTwitterでコメントし続けたところ、25,000人以上のスポーツ好きにフォローされる人気アカウントとなる。 プロ選手にアドバイスすることもあり、中でもTwitterで知り合ったダルビッシュ有選手に教えた魔球「お股ツーシーム」は多くのスポーツ紙やヤフーニュースなどで取り上げられ、大きな話題となった。初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴』がバカ売れ中。大のサッカー好きでもある。
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