2019年セリーグMVPに輝いた坂本勇人のキャリアを振り返る(打撃編)
お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

今シーズンは原監督の下でリーグ優勝を果たしたものの、日本シリーズではソフトバンクになすすべなく4連敗した巨人軍。日本一を目指す来シーズンへ向けて、課題は山積みだ。
「お股クラスタ」の1人でもある巨人ファンのゴジキ氏(@godziki_55)が主軸選手のシーズンを振り返り、さらなる躍進へのカギを探る。第3弾は今シーズンのセリーグMVPに輝いた主将・坂本勇人を2回にわたり攻守両面から分析。

 

 

■「バレル」の再現性を高めて3割40本塁打の大台へ

 

キャリア13年目を終えた坂本勇人。セリーグMVPを獲得したのはもちろんのこと、2000本安打も間近の通算1884本安打に到達し、40本塁打をはじめ打点、長打率もキャリアハイを更新。2番打者ながらも「パワーフォルム型」として、歴代の遊撃手として見てもトップクラスの活躍を見せた。

 

 

その打撃を見ると、2016年~2018年はオールラウンダーやバランサーのようなタイプであった中、今シーズンは自らの引き出しを増やすかのように「バレル」の再現性を高め、開幕からシーズン終盤まで維持した。このパワーフォルム型で長打を積極的に狙っていき、DeNAのソトと本塁打王争いを繰り広げた。

 

2016年~2018年は坂本を3番に置かざるを得ないチーム状況であったが、2018年オフに移籍してきて3番打者として及第点の活躍を見せた丸佳浩の存在が大きかったのは間違いない。

 

キャリア通して初となる2年連続の3割到達はもちろんだが、セリーグ新記録となる開幕戦からの36試合連続出塁や史上初の遊撃手として3割40本塁打を達成した。2016年にセリーグで初の遊撃手として首位打者を獲得した時よりもさらに箔がつき、歴史に名を残したと言える。

 

■あえて足の上げ方を変える高等技術

 

技術面では今シーズンから足の上げ方を従来のように大きく上げたりすり足にしたり二段階にしたりと、対戦投手やタイミングによって変えている場面がしばしば見られた。

 

こういう風にタイミングの取り方を工夫しているのはソフトバンクの柳田悠岐や今シーズンパリーグ首位打者になった森友哉にも共通で、ハイレベルな打撃技術である。

 

また、打席によってグリップの持ち方を変えて指一本分開けることもしばしば見られた。このテクニックはソフトバンクの松田宣浩が実践しており、坂本に直々にアドバイスをしたのは村田修一コーチだそうだ。

 

 

打撃成績に隠れがちだが、自身としては2014年以来のシーズンフル出場も果たし、キャプテン就任後初のリーグ優勝に大きく貢献した。

 

今シーズンの素晴らしい活躍によって、坂本勇人という選手は遊撃手の括りを超えて歴代でも屈指の選手になった。

 

■隔年現象の克服

 

高卒2年目の2008年から一軍にデビューし、2009年には初の3割到達、2010年は30本塁打達成という華々しい若手時代を築いていた坂本。だが、統一球の中でリーグトップの得点圏打率を記録した2011年、最多安打を達成した2012年を最後に2013年~2015年は打撃面で燻っていた期間があった。

 

一方でこの期間は守備の上達が目覚ましく、球界でもトップクラスに君臨するほどのものだった。それに対して本来の才能を潜めるかのような打撃成績だったので、首脳陣や巨人ファンとしてはかなり悩ましかったと思われる。

 

その坂本に転機が訪れたのは、おそらく2015年に開催されたプレミア12だろう。この大会中、ヤクルトの山田哲人やDeNAの筒香嘉智にアドバイスを積極的にもらっていた。

 

これによって打撃スタイルに幅が広がり、2016年からはリーグのみならず球界でもトップクラスの打撃成績を残すようになったと推測できる。

 

(2016年~2019年打撃成績)
2016年 打率.344 23本 75打点 OPS.988
2017年 打率.291 15本 61打点 OPS.802
2018年 打率.345 18本 67打点 OPS.962
2019年 打率.312 40本 94打点 OPS.971

 

また、昨シーズンに続いて3割を達成したことによって、長年懸念材料とされていた年単位での不安定さも解消できたと思われる。

 

 

今シーズンは2番に置かれたが、この打順への適応に関しても、プレミア12で日本代表として2番打者を経験したことが大きかっただろう。

 

今シーズンのベースとなったパワーフォルム型はもちろん、2016,2018年のシーズンや2017年WBCで見せたオールラウンダーやバランサー型の打撃スタイルもある。ランナーを置いた場面や試

 

合展開によっては意図的に右打ちなどをする、臨機応変に対応できる打者になった。

 

 

■磨くべきはコンディション調整術

 

今後の課題としては、苦手の夏場を乗り越えていくことと、打撃スタイルの変化からの確立があげられる。

 

若手の頃から夏を不得意としており、毎年のように打撃の調子が下降する傾向が見られる。

 

顕著だったのが、2013年だ。規定打席到達時点で打率.303を記録していたが、最終的な打率は.265にまで下がった。2017年も7月は打率.352と調子が良かったものの、8月は打率.221と急下降し、9,10月も打率.208となり3割を切る形となった。

 

坂本自身が夏場に弱いことと、コンディションの低下によって下半身に粘りがなくなることが原因だろう。

 

国際大会などによる疲労もある中でそれを改善していくには、今シーズンのように5月6月ぐらいの段階で疲労等を含め、コンディションを考慮した上で休ませていくことが不可欠だ。

 

ただ、疲労から来る調子やコンディションの低下を持ち直すことに関しては、今シーズンやプレミア12で克服しつつある場面が随所に見られた。

 

シーズン中では疲労から交流戦では低調だったが、交流戦明けまでの移動日期間に調子を持ち直した。その後のCS~日本シリーズやプレミア12の大会序盤でも疲労から不調に陥ったが、大会中の移動日や控えに回る試合などを生かし、大会終盤のメキシコ戦や韓国戦では本来の打撃を見せることができた。

 

そういった意味で、今シーズンの坂本は一皮剥けたのではないだろうか。今後も調子やコンディションをうまく持ち直していくことで、よりよい選手であり続けることができるだろう。

 

その他の面では、脚力が衰え始めたので打撃重視のプレースタイルに変えて、それを確立していくことも重要だ。

 

年齢的な衰えもあるが近年は怪我や故障も増えてきており、一つ具体的な例を挙げるとするなら盗塁数は2017年を最後に一桁にまで落ち着き始めている。

 

このような状態から今後も遊撃手としてキャリアを積むことはなかなか難しいと思われる。仮に一塁手、三塁手、外野手などにコンバートをされるならば、チーム内で任せられる立ち位置にもよるが、今シーズンのように「バレル」の再現性を高めて長打力のある打撃スタイルを確立させていくのがベターではないだろうか。

お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)

野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してTwitterでコメントし続けたところ、25,000人以上のスポーツ好きにフォローされる人気アカウントとなる。 プロ選手にアドバイスすることもあり、中でもTwitterで知り合ったダルビッシュ有選手に教えた魔球「お股ツーシーム」は多くのスポーツ紙やヤフーニュースなどで取り上げられ、大きな話題となった。初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴』がバカ売れ中。大のサッカー好きでもある。
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