「2番打者最強説」がささやかれる今こそ考えたい「4番」のあり方
お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

ryomiyagi

2019/12/23

データ野球の浸透もあり、徐々にそのブランドや名誉が失われつつある「4番」打者。
だが、チームを勝たせるためには必要不可欠な存在であることもまた事実である。
「お股クラスタ」の1人であるいーづか。氏(@B_Methods)が4番打者の変わらない価値と、今なお求められる役割について寄稿してくれました。

 

 

■4番=最強ではなくなった現代野球

 

「4番」。かつて日本では4番打者こそチームの顔であり、最高の打者が座る場所とされてきた。

 

しかし、その考え方は徐々に覆されつつあるのではないだろうか。“2番打者最強説” なるもの(個人的に私はこの表現を好まないのだが)が出てきたりもして、4番打者というものの位置づけが微妙に変わってきている。

 

そんな今、4番に座るのはどういう選手なのか、どんな選手が相応しいのか。改めて考えてみようと思う。

 

まず、4番打者が最強というわけでもなくなってきた理由として、全体的に飛ばす選手が増えてきたことがあるだろう。フライボール革命という考え方が出てきてトレーニングの知識や器具も年々進歩し、体格の比較的大きくない選手からもホームランが出るようになった。長打力と走力などの両立が可能になってきたとも言える。走力のある選手は打順を上にあげたいので、2番や3番に置く発想にもなっていく。

 

実際、走力のないバレンティン(ヤクルト)や山川(西武)は基本的に4番である。逆に、ソフトバンクでは工藤監督が柳田を4番に置く采配をすることがあるが、これに関して選手から「柳田4番はもったいないですよ」という意見があったと著書で明かしている。

 

■理想はラミレス。4番に必要な「積極性」とは

 

本題に入ろう。まず、4番打者に求めたいのは「積極性」である。代表的な例として、落合博満(元中日監督)の話を紹介する。

 

彼曰く、真の4番打者はアレックス・ラミレスだそうである。4番は、その後の打順が下がっていくため、四球などを選ぶよりもファーストストライクから積極的に打ち、相手を仕留めるスタイルが望ましい。そうした姿勢を見せるラミレスを、相手監督の立場から相当嫌がっていたのだ。ゲームを考えた大局観、常に積極的でいられるメンタリティ。ラミレスは至高の4番打者だったと言えるだろう。

 

今年、この「積極性」の重要さを強く感じさせてくれた選手がいた。巨人軍の4番、岡本和真である。

 

7月27日の巨人対阪神。巨人が1点ビハインドで迎えた延長11回裏、二死一、二塁の場面だ。打席は、4番から7番に打順を下げられた岡本に回っていた。

 

相手は抑えの藤川、岡本に続く8番打者は、途中から出場している若手の田中俊太。

 

「お前が決めるしかない」、と誰もが思っていた。“4番打者” へ戻るには絶好の場面だった。

 

しかし、岡本の姿からそれは全く感じられなかった。1ストライク3ボール、まさに狙い所のカウントでの真っ直ぐも、岡本は際どくて見送ったという感じでもなく、しれっと見逃してしまった。結果は四球となったが、後続の田中俊太が藤川に打ち取られ、巨人は敗れた。

 

かつて巨人の絶対的4番打者として君臨した阿部慎之助はこの場面、岡本の前に打席に立っていた。早いカウントから「俺がこのランナーを還す」と言わんばかりに真っ直ぐ1本を狙い積極的に打っていき、フォークも意地でなんとかファールにしていた。もう全盛期の長打力はないが、その姿勢は心を打つものがあった。その後だけに、岡本の打席は寂しいものだった。

 

4番打者としての大局観、メンタリティから生まれる積極性。2番や3番に能力の高い打者が座るからこそ、今まで以上に求められていくところではないだろうか。

 

ちなみに岡本はその後、首位攻防カード初戦となった9月10日のDeNA戦、6回表二死一塁の場面でDeNAのエース・今永の初球チェンジアップを思い切り振り抜き逆転ツーランホームランを放った。逆転優勝を狙い今永をあえてぶつけてきた2位DeNAに痛すぎる黒星をつけたのだ。岡本が4番というポジションに戻ったのは他選手との兼ね合いであったが、このホームランを見た時、“4番に戻った“と感じたものだ。

 

■4番が持つべき「バランス感覚」

 

打線には長距離ヒッターと、それに偏りすぎず多くの得点パターンを産むための“バランサー“となるコンタクトヒッターが必要だとされる。しかし、4番打者においてはこうした打線全体のバランスを1人で生み出さなければならないと私は考える。ただホームランが多いだけの4番打者では、そのチームは高いレベルの戦いに勝てない。

 

長打力がありホームランを打ちつつ、「このゲームはもう1点さえあれば…」という場面ではタイムリーが打てる。4番に座る選手がこのバランス感覚を持っているかどうかで、そのチームの得点能力が決まると言ってもいい。

 

もちろん走者が3人いる時、満塁ホームランで4点入るのがベストだ。しかし、これを安定して続けることは相当に難しい。タイムリーで1点という“ベター“な選択肢をとれる引き出しを持っていれば、相手はより恐怖を感じるだろう。

 

今シーズン世界一に輝いたワシントン・ナショナルズにはフアン・ソトという4番がいる。彼はポストシーズンに入って勝負どころになると確実にミートし、タイムリーを積み重ねた。4番として非常に洗練された選手と言える。

 

■西武がシーズン終盤で山川を4番から外した理由

 

逆の例として挙げられるのが山川穂高だろう。長打力は日本人でもトップクラス。4番らしく見える選手ではある。ホームラン王のタイトルも獲得した。しかし、辻監督は8月11日のロッテ戦から山川の打順を7番に下げた。

 

山川は本塁打を稼ぐ一方で得点圏での器用さに欠け、攻撃力に富み走者が溜まりやすい西武打線の中ではチャンスを潰す場面も増えていた。

 

代わりに4番に入ったのはベテラン・中村剛也だった。かつての長打力を取り戻していた中村だが、チャンスでは丁寧にコンタクトし打点を重ねた。今季の得点圏打率は脅威の.350を記録している。

 

山川もシーズン終盤には「ホームランを捨てる気はないが、4番中村の姿を見て打点の大事さに気づいた」と語っていた。CSでは.385の高打率。勝負どころでタイムリー、最終戦ではホームランも放った。今年のこの経験が、来季さらにレベルアップした“4番・山川“を見せてくれるのではないだろうか。

 

あえて「4番を外れた選手」として例に挙げた山川、岡本は所属チームがそれぞれリーグ優勝に輝いている。辻監督、原監督が彼らを4番から外す期間を作ったのは、チーム力を高めて優勝を目指す中で、4番打者に求める能力のレベルはもっと高いぞというメッセージでもあったのではないか、と思う。

 

好きな応援歌がある。ホームランと、勝負どころでのタイムリーでDeNAの7月勝ち越しに貢献し月間MVP獲得、この期間4番を務めたホセ・ロペスの応援歌だ。

 

『勝負がかかる 痺れる瞬間 流れを我らに アニモ(頑張れ を意味するスペイン語) ロペス』

 

4番とは、こういうものなのだろうと思う。勝負がかかる、痺れる瞬間。4番打者の席には、流れを自軍に大きく引き寄せる一打を放つ打者にこれからも座ってもらいたいと願う。

お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)

野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してTwitterでコメントし続けたところ、25,000人以上のスポーツ好きにフォローされる人気アカウントとなる。 プロ選手にアドバイスすることもあり、中でもTwitterで知り合ったダルビッシュ有選手に教えた魔球「お股ツーシーム」は多くのスポーツ紙やヤフーニュースなどで取り上げられ、大きな話題となった。初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴』がバカ売れ中。大のサッカー好きでもある。
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セイバーメトリクスの落とし穴マネー・ボールを超える野球論

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