プロ野球新シーズン、監督の采配はここに注目せよ!【継投編】
お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

ryomiyagi

2020/06/15

新型コロナウイルスの影響で、開幕の見通しが立たないプロ野球でしたが、ついに6月19日に開幕が決定!
「お股クラスタ」の1人であるいーづか。氏(@B_Methods)が、新シーズンの野球観戦で注目すべき「采配」について寄稿してくれました。

 

 

ある試合の解説で、江川卓氏がこんなことを言っていた。「投手交代は、良くも悪くも試合の流れを変えますからね」。その通りだと思う。采配論を語る上でこの投手交代というテーマは避けては通れない。

 

改めて投手交代という采配について例を挙げながら考えようと思う。

 

■流れを掴む、“攻めの投手交代”

 

まず挙げたいのは「攻めの投手交代」である。象徴的なケースが昨シーズンの9月20日、巨人対DeNA(横浜スタジアム)。3ゲーム差で迎えた首位攻防2連戦の初戦だった。

 

7-2のDeNA5点ビハインドで迎えた7回裏、2点を奪いなお2アウト満塁の場面で打席には本塁打王争いを繰り広げているソト。一発が出れば逆転の場面で巨人・宮本投手コーチは原監督に、四球が続いた中川から澤村へのスイッチを提案する。続投のつもりだった原監督が折れて澤村を投入し、ソトを空振り三振に取った。点差を考えると中川を続投させるのがセオリーかもしれないが、シーズンを占う勝負どころだと判断して澤村に代える積極先を取ったのだろう。この試合を制した巨人は勢いそのままに翌日も勝利し、優勝を決めた。

 

澤村はNPB屈指の4シームと鋭く落ちる高速スプリットで、「流れを切る」役目を果たせる強いカードだ。逆転のチャンスで本塁打王ソトに回るというDeNAにとって最高のシナリオが、この攻めの一手で打ち砕かれた。澤村が奪ったワンアウトが巨人の優勝を呼び込んだと言えるだろう。

 

■“最善策を取らない”投手交代もあり?

 

一方、昨シーズンの5月22日、DeNA対巨人(東京ドーム)にも違う意味で面白い場面があったので紹介する。

 

DeNAは3点をリードし終盤に入る。7回裏はエスコバーを投入し三者凡退に切って取った。取り上げたい場面はこの後である。8回裏の巨人は重信→山本→坂本勇人と続く打順だった。ラミレス監督は重信までエスコバーを跨がせ、山本のところからパットンを投入したのである。この采配を考えたい。

 

意図は分かる。右投げのパットンは変化球がスライダーしかなく、左打者を得意としていないので避けたのだろう。エスコバーは前の回を完璧に抑えていて状態は良いので、合理的といえば合理的である。結果はこの回も無失点、チームも勝利した。

 

しかし、少し違う見方をしてみたい。エスコバーにも回跨ぎという負担を負わせているうえに、仮にここでエスコバーが重信を塁に出してしまえば、その後パットンはクイックモーションからの投球になる。牽制もクイックも得意ではないパットンが、果たして本来のパフォーマンスを出せただろうか。

 

たしかに、「相手の打線を抑える」という観点からは最も高確率な選択だったかもしれない。しかし、それによって通常以上に負担が生まれた。この試合のこの局面は、そうした負担を背負うほどのものだったのだろうか。それを考える必要がある。

 

結論を言うと、変な言い方になるが“最善策を取らなくていい場面“もあると思う。このケースで言えば、3点差と多少の余裕もあった。この試合を見ていた時、私は「ここは持ち場通り7回にエスコバー、8回は頭からパットンで良かったのでは?」とも思った。

 

ラミレス監督の采配が愚策だった、間違いだったとまでは思わないが、そういう考え方も持っていて良いのではないか。

 

■投手交代をする勇気、しない勇気。

 

最後にもう1試合。2017年のMLBワールドシリーズ第7戦、アストロズ対ドジャース(ドジャースタジアム)を紹介したい。ダルビッシュ有が先発したので覚えている方も多いだろう。この試合のアストロズの投手起用が実に面白い。

 

先発はマカラーズJr。3回裏、アストロズは5点リードながらも1アウト1,2塁、相手に流れがいきそうと見るやすかさず2番手ピーコックにスイッチ。後続を断ってこの回を無失点に抑えた。ピーコックは中継ぎながら先発経験もあり第2先発、中抑えとしての役割を果たせる。ソフトバンクの石川柊太のようなイメージだろうか。

 

ピーコックがそのまま続投し迎えた5回裏、ピンチで迎えたドジャース中軸をアストロズは一人一殺(左のベリンジャーに左のリリアーノ、右のプイグに右のデベンスキー)で封じた。世界一のかかる「絶対に勝たなければならない」試合、5点差という大きなリードがあるからこそ、「まだ取り返せる」と相手の士気が下がっていない前半〜中盤では流れを渡さないよう全力の継投をする必要があった。

 

そして勝負も見えてきた終盤、アストロズは6回裏から本来先発のモートンがマウンドへ。立ち上がりこそふらつき1点を失ったが、回を追うごとに状態が上がって7回、8回を三者凡退で切る。そのまま9回もモートンが続投し無失点、アストロズがワールドチャンピオンに輝いた。

 

この、モートンに投げ切らせた采配も地味に凄い。抑えのジャイルズはこのシリーズでこそ不調だったがまだ残っており、エースのバーランダーもブルペンで準備をしていた。抑えで終わる、エースで終わるというストーリーを描きたくもなるところだ。

 

しかし、ヒンチ監督はモートンを最後までいかせた。アストロズ優位の展開、良くも悪くも試合の流れを変える投手交代は今必要ないという判断だったのだろう。序盤の、流れを相手に渡さないために必要なところは思い切って交代し、逆に流れが決まりつつあるところでは動かず、ゲームを刺激しない。この日のアストロズは完璧な試合運びだったと言える。「動く勇気」「動かない勇気」の双方が詰まっていた1戦だった。

 

ちなみにMLBでは今シーズンから、ワンポイント禁止のルールが正式に採用されるようだ。ここまで述べてきた采配の奥深さが損なわれるような気がしてならず、非常に残念である。MLBのルールを積極的に導入するNPBもまた、じきそうなる可能性は十分あるだろう。ならばせめて今は、こういった投手采配の妙を噛み締めて野球を観ようではないか。

お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)

野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してTwitterでコメントし続けたところ、25,000人以上のスポーツ好きにフォローされる人気アカウントとなる。 プロ選手にアドバイスすることもあり、中でもTwitterで知り合ったダルビッシュ有選手に教えた魔球「お股ツーシーム」は多くのスポーツ紙やヤフーニュースなどで取り上げられ、大きな話題となった。初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴』がバカ売れ中。大のサッカー好きでもある。
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セイバーメトリクスの落とし穴

セイバーメトリクスの落とし穴マネー・ボールを超える野球論

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