ゴジキが振り返る2010年代の高校野球(2014年夏)
お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

ryomiyagi

2020/07/31

新型コロナウイルスの影響で中止となった今年の春のセンバツ、夏の甲子園。代替案として「甲子園高校野球交流試合」が開催されることになりました。
高校野球ロスを取り戻すために、お股クラスタの1人でもあるゴジキ氏(@godziki_55)に2010年代の高校野球界を振り返ってもらうプレイバック企画。

 

 

■2014年夏の甲子園 優勝:大阪桐蔭(大阪、2年ぶり4回目)

 

コールド負けから夏制覇まで成長したこの年の主人公大阪桐蔭

 

2014年の夏、悲願の優勝を飾った大阪桐蔭だが、この世代はチーム結成当初から順風満帆だったわけではなかった。

 

秋の大阪大会では、ライバルでありセンバツ準優勝の履正社に13対1でまさかのコールド負け。藤浪晋太郎、森友哉等を擁して2012年の春夏連覇を含む4季連続で甲子園に出場していた「絶対王者」大阪桐蔭だったが、新チームで最初の大会は4回戦でコールド負け。近畿大会にすらも出られないというスタートは屈辱だったに違いない。以降、選手たちの夏に向けての練習量や全国制覇に対する想いはこれまで以上だったろう。

 

センバツ終了後の春季大会の決勝では、ライバル履正社に8対5で競り勝った上で優勝。明らかに実力がついてきた。さらに、近畿大会ではセンバツ優勝校の龍谷大平安を下して勝ち上がってきた報徳学園に8対5で競り勝ち、2年ぶりの春の近畿大会で優勝を飾った。

 

屈辱の敗退から着実に力をつけ、センバツ大会で上位を占めた近畿勢を相手にしても勝てる実力が春時点で既にあった。したがって、あとは夏に向けたコンディショニングやピーキングが鍵だった。

 

そして、集大成の夏の大会が始まった。夏のメンバーもエース福島孝輔に田中誠也と試合が作れる投手が2枚おり、過密日程への対応も盤石だった。野手陣も、2年から甲子園を経験している峯本匠や香月一也を中心に2年生の福田光輝やキャプテンの中村誠、正隨優弥と選手層の厚い状態で大会を迎えた。また、香月、福田、正隨は後にプロ入りしている。

 

府大会は準決勝まで危なげなく勝ち上がり、ライバル履正社と3度目の対戦を迎えた。履正社は、溝田悠人、永谷暢章と言ったセンバツ準優勝に導いた2枚の投手に、1年生ながらベンチ入りした寺島成輝がいた。

 

この試合では永谷が先発したが大阪桐蔭は初回から正隨のタイムリーなどで攻め立てて、5点を取り優位な展開へ持ち込む。勝負勘の良さや狙いどころを見逃さない大阪桐蔭打線の集中力が一枚上を行っていたのは間違いない。履正社からしたら、初回からこれだけ点差がついたことは誤算だっただろう。そのまま大阪桐蔭は6対2で山場の履正社戦に勝利。決勝のPL学園戦も難なく制して甲子園出場を決めた。

 

甲子園初戦の相手は開星だったが、先発の田中が初回から4点を失うスタートになった。しかし、開星は初戦であることに加え「大阪桐蔭」という名前に対するプレッシャーもあり、ボークや失策などで逆転。大阪桐蔭は4安打ながらも逆転勝利した。「ただのミス」で負けた開星だが、勝ち急いでいたのは明らかであり、それが悪い結果に結びついた。

 

2回戦は3年連続の対戦となる明徳義塾だった。初回から峯本の好走塁と香月のホームランで、好投手の岸潤一郎から2点を先制する。その後も着実に突き放しつつ、固い守りで7回のピンチも凌いで勝利した。

 

3回戦の八頭との試合は、10対0と大差の展開で田中が完封。

 

準々決勝の健大高崎戦では、健大高崎の「足」を大阪桐蔭のバッテリーがどう抑えるかに注目が集まった。大阪桐蔭は先制されつつ健大高崎の得意の盗塁も決められたが、全く焦りはなかった。これまでの逆境の経験も活かされたのか難なく逆転し、試合後半は完全に大阪桐蔭のペースで勝利した。これはバッテリーが、健大高崎の盗塁や走塁対策ではなく「出塁させない」ことに注力した結果である。

 

続く準決勝の敦賀気比戦は、本大会でもこの上ない乱打戦となった。
敦賀気比は初回から満塁ホームランを含む5得点するが、対する大阪桐蔭も中村の先頭打者ホームランで反撃を開始して3点を返す。

 

敦賀気比が1点追加した後の4回、大阪桐蔭はさらに相手投手の平沼翔太を攻め立てる。長短打で5点をあげて大逆転に成功した。
その後も両校得点するが、敦賀気比は打たれている以上にバッテリーミスなど守備面が崩れ始めて、徐々に点差がつく展開に。結果的に15対9で大阪桐蔭が勝利した。

 

大阪桐蔭は決勝に進むまで投手力型のチーム、機動力型のチーム、打撃力型のチームと言ったさまざまなバリエーションの相手に競り勝っていき「勝ちパターンのバリエーション」の豊富さは全国制覇に充分なレベルとなっていた。

 

そして、集大成となる決勝戦。広陵などの強豪に競り勝ってきた三重との対戦だが、準決勝の内容や疲労度合いを考慮した上で見ると、互角以上の相手だったとも言える。

 

2回に三重が2点を先制したが、エース福島の疲労は準決勝を見ても限界に近かっただろう。その状況でも大阪桐蔭は落ち着いていた。2回、3回ですぐさま追いつく。

 

試合を作っていた福島だが、5回に勝ち越しを許し、球場の雰囲気や後押し、流れは三重に傾きつつあった。

 

ここで大阪桐蔭の「勝者のメンタリティ」が発揮される。1点ビハインドで終盤に差し掛かった7回、二死ながら満塁のチャンスを作り出して、主将の中村に打席が回る。

 

大阪桐蔭からすれば、試合を決めるならこの場面とこの選手しかなかった。中村はセンター前に落ちるポテンヒットを放ち、ランナー2人が帰って逆転に成功。打球が詰まっていたことも幸いして三重のセンターのグラブには届かなかった。

 

三重はこの試合初めてリードを許す展開になったが、9回に粘りを見せる。福島も満身創痍だったに違いない。二死一、二塁のピンチを迎えたが、遊撃手の福田は難しいゴロを捌き、一塁の正随も難しい送球を上手く掴み取り悲願の夏制覇に輝いた。

 

この年の大阪桐蔭はこれまでに優勝した年とは違い「圧倒的な強さ」はなかったかもしれない。だが新チーム発足時のコールド負けの屈辱もあり、秋大会終了後の成長度合いはもの凄かった。また、勝ち方や逆転の仕方にもバリエーションがあり、「試合巧者」として勝ち進んでいった印象だ。そうした「勝ち方の再現性」を高めた結果が準々決勝、準決勝、決勝の試合運びに現れていたのではないだろうか。

 

この夏の甲子園全体の戦い方や決勝戦の展開は、この世代の選手の成長や西谷浩一氏のマネジメント力、育成力の集大成であり、間違いなくストーリー性のある「主人公」になることができた。

お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)

野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してTwitterでコメントし続けたところ、25,000人以上のスポーツ好きにフォローされる人気アカウントとなる。 プロ選手にアドバイスすることもあり、中でもTwitterで知り合ったダルビッシュ有選手に教えた魔球「お股ツーシーム」は多くのスポーツ紙やヤフーニュースなどで取り上げられ、大きな話題となった。初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴』がバカ売れ中。大のサッカー好きでもある。
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セイバーメトリクスの落とし穴

セイバーメトリクスの落とし穴マネー・ボールを超える野球論

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