2020年ポストシーズン無敗。圧倒的王者・福岡ソフトバンクホークスの「短期決戦にも強い本物の打線」
お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

ryomiyagi

2020/12/15

「お股クラスタ」でソフトバンクファンのRyu氏(@ryu_sh9)とDeNAファンのいーづか。氏(@B_Methods)による共同執筆!
圧倒的な強さで短期決戦を制した福岡ソフトバンクホークス。投手陣に注目が集まりがちですが、一発もあれば機動力もある打線のバランスも12球団随一です。ソフトバンクの打線はなぜ「本物」と呼べるのか、打順の組み方や選手の役割などをもとに分析してもらいました。

 

 

2020年“も”と言って良いだろう。ポストシーズンを福岡ソフトバンクホークスが圧倒し、4年連続の日本一に輝いた。ソフトバンクは投手力も素晴らしいものがあるが、今回は「打線」にフォーカスし、なぜこんなに強いのか、その理由を探っていこうと思う。

 

隙を見せないソフトバンク打線の連動性、バランス

 

1番周東・2番中村晃・3番柳田・4番グラシアル・5番栗原・6番デスパイネ。日本シリーズで主に使用されたオーダーだが、この6人の能力、またその並べ方は非常に洗練されていると言える。

 

1番には超人的走力を持つ周東、彼を塁に出してしまえば後ろには場面毎の対応力が非常に高い中村晃。チャンスになって左右の最上級コアヒッターである3番柳田4番グラシアルに回り、彼らが走者を還しきれなくとも5番にはクラッチヒッター栗原が控える。さらに栗原の後ろにはキューバの大砲デスパイネがいるため、迂闊に勝負を避けられない。各打者の能力が並べ方によって連動して増幅され、相手に大きな重圧をかけているのである。

 

この打線が形成されるには、2020年シーズンから新たに加わった前楽天監督の平石洋介コーチの手腕も大きかったのではないかと見る。楽天監督時代も1番に勢いのある茂木、2番に対応力の高い島内、3,4番に核となる浅村とブラッシュを並べ、5番に昨年まで3年連続得点圏打率3割超のクラッチヒッター銀次(今年は1割台まで下げてしまったが)、6番にウィーラーを置いていた。周東→中村晃→柳田→グラシアル→栗原→デスパイネという並べ方と酷似していることが分かる。

 

勢いと走力のある1番を置き、核になる3,4番を対応力のある打者が2,5番で挟む。もちろんチームにいる選手によっても形は違ってくるが、これはひとつの最適解に近い打順であり、今年のソフトバンクのみならず昨年のワールドシリーズを勝ち抜いたワシントン・ナショナルズ、横浜DeNAとの優勝争いを制した昨年の巨人なども似たような組み方になっている。

 

日本シリーズで垣間見えた“得点への意識”の高さ

 

日本シリーズでは、ソフトバンクの走塁面も非常に目立っていた。ライト前ヒットで一塁走者が三進する(グラシアル)、二塁走者がショートゴロでも三進する(牧原)など、ランナーをひとつでも前へ進める意識がかなり高かった。

 

走者が三塁にいる時の、打者のアプローチも素晴らしい。象徴的だったのが6番デスパイネの働きだった。日本シリーズ第2戦、デスパイネは走者を三塁に置いた場面を三度も迎えたが、打球が高く跳ねやすい京セラドームの特徴を生かした高いバウンドのサードゴロ、高めの球をそのままかち上げる犠牲フライ、相手が切羽詰まって制球が甘くなったのを一撃で仕留めた満塁ホームランと、全打席で打点にしてみせた。ホームランはもちろん素晴らしいが、その前にバウンドの高いゴロや高いフライで着実に走者を還した点も非常に高く評価できる。デスパイネは6番打者なので後ろは確率の下がる下位打線であり、例えアウトになろうともここで走者を還す必要があるからだ。このことは以前、「4番打者」をテーマにした本コラムでも触れている。4番経験も多いデスパイネならではの素晴らしい打撃だった。

 

具体例としてグラシアルや牧原の走塁、デスパイネの打点を取り上げたが、ソフトバンクでこういった意識を持っているのは彼らだけではない。シーズン中から多くの選手に見えていた姿勢である。走者をひとつでも前に進め、そして還す。ソフトバンクの野手は得点を生むために必要な要素を揃えていると言える。

 

打線を繋ぎ合わせる“楔”中村晃、その後継者になりうる栗原

 

この打線の連動性を高めるキーマンとして、中村晃の存在に触れないわけにはいかない。
中村晃はシーズン後半、周東に続く2番を打つことが多くなっていたが、自分の前にあまりに俊足のランナーがいる2番打者の打撃は、実は相当に難易度が高い。例えば日本ハムは走力の高い1番打者・西川遥輝の後ろに、上位打線としては打撃が物足りないながらも球を待てる中島卓也を置いたりしているほどだ。

 

しかし、中村晃はこの難しい役割を器用にこなしている。走者のいないフリーな場面では長打を打ったり、周東が塁にいれば盗塁を待ったり、またチャンスの際はヤマを張ってタイムリーを打つなど、場面毎の対応力がとにかく高い。ここぞでのミスショットも極めて少なく、数字以上の嫌らしさを感じさせる。中村晃が2番に入ることで、周東と核になる柳田、グラシアルを繋ぎ合わせることができる。まさに“楔”のような打者である。

 

そして、その後継者として期待できるのが、日本シリーズMVPの栗原である。以前にも当コラムで我々は栗原を「高い対応力と勝負強さにポテンシャルを感じる」といった内容で紹介させて頂いた。

 

栗原の真価は日本シリーズ初戦に出た。得意の内角へ球がきた最初の2打席をホームラン・二塁打と見事に仕留め、チャンスで迎えた3打席目はもう内角は来ないと読んでか左中間に返しダメ押し2点タイムリー、この日の勝負が決まった。必要な場面での集中力と読みは見事なもので、中村晃を彷彿とさせる対応力だった。

 

日本シリーズでは相手投手陣の中でエース級の位置づけとなる菅野、サンチェスをこの栗原と中村晃が攻略(どちらも先制ホームラン)。このふたりの存在もソフトバンクの大きな強みである。

 

球数稼ぎは要らない。“本物の短期決戦”を勝ち抜く力

 

優勝争いとCSでソフトバンクに敗れたロッテは、粘れる打者は多くシーズン中から四球を多くもぎ取っていた。また、日本シリーズを戦った巨人は初戦、千賀の決め球であるフォークを振らずに見逃すため、バッティングのポイントを下げる策を取ったように見えた(実際、見逃せてもいた)。

 

しかし短期決戦はそうやって球数を稼いでも、すぐ次の投手が出てきてしまう。当たり前だが、結局は相手の球を仕留めきれなければ点は入らないのである。いちばん速い真っ直ぐに対応できる形で打ちにいける、その中で粘れる、ボールを見れる、失投や変化球をここぞの場面で仕留められる。オーダーに入れる9人の中でそういったバランスを出せるかどうか。ソフトバンクや、セ・リーグでは広島の打線などもそういった良さがあり、短期決戦向きだろう。

 

速球対応・変化球対応など幅広いバリエーションで選手を揃え、楔になる選手を挟むなど連動性が出るように並べ、選手個々も得点への高い意識を持つ。それを全てできるのが短期決戦にも強い本物の打線であり、実際に全てできていたのが2020年の福岡ソフトバンクホークスだった。今年のソフトバンクのような、時には足で、時には1発で、時には繋ぎで相手を攻略できる、どんな投手が相手でも常に4~5点は取ることのできるイメージを抱かせる打線が理想だろう。

 

来季こそはこれを食い止めるようなチームが出てくるのか、はたまたソフトバンクの天下が続くのか注目したい。

お股ニキ(@omatacom)の野球批評「今週この一戦」

お股ニキ(@omatacom)(おまたにき)

野球経験は中学の部活動(しかも途中で退部)までだが、様々なデータ分析と膨大な量の試合を観る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してTwitterでコメントし続けたところ、25,000人以上のスポーツ好きにフォローされる人気アカウントとなる。 プロ選手にアドバイスすることもあり、中でもTwitterで知り合ったダルビッシュ有選手に教えた魔球「お股ツーシーム」は多くのスポーツ紙やヤフーニュースなどで取り上げられ、大きな話題となった。初の著書『セイバーメトリクスの落とし穴』がバカ売れ中。大のサッカー好きでもある。
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セイバーメトリクスの落とし穴マネー・ボールを超える野球論

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