野菜がたっぷり食べられる 意外な具のポテトサラダ【親ごはん第15回】
枝元なほみの親ごはん

ときめくか、ときめかないかで捨てるかどうかを判断する、らしい。

 

ふむふむ、なるほど。そうだよなあ。例えばどうも自分らしくない、着ているとなんだか気持ちがもぞもぞする服とか、どうにも使い勝手が悪いキッチン用品なんてのもあるしね。そういうのをさっぱり処分して、すっきり暮らす、確かにいいねえ

 

でもね。

 

小さな日々の不具合と付き合っていくしかない、っていうのもあるもんだ、と思うようになりました。例えば自分自身や身近な人の「老い」からくる諸問題は、騙し騙しなんとか付き合っていくしかない。年齢を重ねるとそうでしょ、イキイキすっきり、とはいかなくなるもんでしょ。シワだってシミだって白髪だって気になるし、目はぼやけて小さな文字なんて蟻の行列、何が書いてあるかはさっぱりわからん。親をみていた時もそう思ったのだ、あちこち痛い、物忘れは当然、めんどくさいことはもうできない、仕方ない。

 

その不具合をどう積もらせず、深刻化せずに日々笑いながら、かわしながらやっていくか。

 

そもそもの発端は歯磨きのチューブでした。歯磨きチューブのおろしたてはすごく気持ちがいい、何しろ新品だもの、ふっくら膨らんでどこを押してもらってもよござんすよ、となんだか若々しいってこういうこと?っていう感じさえするのだ。

 

それが朝晩絞り出されるうちに身も細り、痩せてやつれてシワシワのでこぼこになってくる。で、そこからが長いのだ。残り少なくなってきたなあ、もうそろそろ新しいのを買わなくちゃ、いやいや買い置きがまだあった、なんて思いながら、チューブの先端の、肩のあたりに結構溜まっているのを絞り出す。もういいや、新しいのに変えちゃおう、とはどうにも思えない性分です。もったいない、というのとはちょっと違うような、エコ的考えやらなんやら、何しろ最後まで使い切らないといけないと思ってこれまで生きてきちゃったわけなのだ。きっちり使い切ってから、天寿をまっとうさせてから、終わりとしたい。

 

でもですよ、長いのだ、不格好になってしみったれた感じになって、ああ新品に変えるのはいつ?と朝に晩に歯磨きをするときに小さな不具合とむき合う日々。ああでも、こんなものかもしれないなあ、人が老いていくっていうこと。新品に変えることができない人間の、かわいいようなみみっちいような悲しいような、日々の小さな不具合。

 

そういえば冷蔵庫の中も、日々、スッキリとはいかない小さなものが溜まっていく。人参半分、玉ねぎの切りかけ、はんぺんが1/2枚。いえ、そりゃね、えいやっとばかり全部入れちゃうときだってあるのです。でも、どうかなあ、人参ばっかりになってもね、玉ねぎが多すぎるっていうのもどうかしら、なんて思うわけです。どうでもいい小さな葛藤、とその結果の半端な残りものたち。それをやりくりしながら、面倒見ながら日々を暮らしている訳で。で、無駄にしなかった、使い切れた、と思う時の喜びっていうのも、ね、それはそれなりに、でかした自分、えらいぞ私!なんていう人にとっては全くどうでもいいような小さな自信を生んだりするわけで。

 

生きてくってまあ、ちょこまかちょこまか、めんどくさいもんですけどね、けっこう楽しい、それなりに美味しい、って思ってやっていくしかないのかもね。

 

「はんぺん入りのポテトサラダ」

■作り置きもふくめての4人分

じゃがいも    4個(約600g)
にんじん     1/2本
きゅうり     1本
玉ねぎ      1/4個
ベーコン(薄切り)2~3枚
はんぺん(大)  1/2枚

 

<A>
酢(あれば白ワインビネガー)大さじ1~2
オリーブオイル  大さじ1
塩        小さじ1/2
好みできび砂糖  小さじ1
マヨネーズ    大さじ4
好みで練りからし 小さじ1
塩、こしょう   適量

 

【1】

じゃがいもは皮をむいて3~4cm角に切ってさっと流水ですすぎ、鍋に入れ、水をひたひたに注いで強火にかける。一煮立ちしたら強めの中火し、白っぽいあくが出てきたら除いてやわらかくなるまでゆでる。湯が残っていれば強火にして水分を飛ばし、ボウルに移し、Aを加えてつぶしながら混ぜる。

 

 

【2】

にんじんは2~3mm厚さの輪切りにして鍋に入れ、ひたひたの水を注いで強火にかける。やわらかくなるまでゆでて水分を飛ばし、1に加えて混ぜる。

 

【3】

きゅうりは2~3mm厚さの小口切りにし、塩小さじ1/3(分量外)を混ぜて2~3分おいてからもんで、水けを絞る。

 

【4】

玉ねぎは半分長さの薄切りにし、水3カップ、酢大さじ1を入れたボウルに放ち、3~5分おいてから水けをきる。ベーコンは食べやすい大きさに切り、フライパンでカリッとするまで焼く。

 

【5】

2が冷めたら、3、4と、はんぺんをちぎりながら加え、マヨネーズと練りからしを加えて混ぜる。

 

 

枝元なほみの親ごはん

料理家 枝元なほみ

撮影/キッチンミノル
取材・文/高田真莉絵
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