「落語ブームはこれからだ!!」ーー「大銀座落語祭2006」【第17回】著:広瀬和生
広瀬和生『21世紀落語史』

21世紀早々、落語界を大激震が襲う。
当代随一の人気を誇る、古今亭志ん朝の早すぎる死だ(2001年10月)。
志ん朝の死は、落語界の先行きに暗い影を落としたはずだった。しかし、落語界はそこから奇跡的に巻き返す。様々な人々の尽力により「落語ブーム」という言葉がたびたびメディアに躍るようになった。本連載は、平成が終わりを告げようとする今、激動の21世紀の落語界を振り返る試みである。

 

「大銀座落語祭2006」のサブタイトルは「落語ブームはこれからだ!!」。7月15日(土)・16日(日)・17日(月・祝)の3日間の開催で、会場は中央会館、ヤマハホール、JUJIYAホール、コマツアミュゼ、時事通信ホールの5ヵ所に絞られた。
中央会館は「究極の東西寄席」。A(15昼)「正蔵の会」「仁鶴の会」「三枝の会」、B(15夜)「清水みちこ」「花緑・風間杜夫二人会」「志の輔の会」、C(16昼)「小朝の会」「春團治の会」「小三治の会」、D(16夜)「1部:映画『寝ずの番』上映/2部:笑福亭一門会(呂鶴、福笑、鶴光)」、E(17昼)「遊三・小遊三親子会」「歌丸の会」「鶴瓶の会」、F(17夜)「圓蔵・木久蔵二人会」「圓歌・ケーシー高峰の会」「文珍の会」。

 

ヤマハホールは入場無料の外国語落語会や子供寄席等の他に15日は「1部:旬のお笑い!/2部:ナンチャンの落語会」、16日は「小沢昭一の吉原へご案内(1部:小沢昭一/2部:扇遊、圓菊)」と「大御所に歴史あり!(1部:金馬インタビュー/2部:圓楽インタビュー)」、17日は「危険な香りの落語会(1部:可朝他/2部:横山ノック他)」と「1部:らくごのないらくご会/2部:上方の人気者(八方、雀々他)」。

 

JUJIYAホールは15日「いきなり爆笑落語会(桃太郎、米助他)」「上方三都物語(小染他)」「待ってました若手十八番(正朝、萬窓、扇辰他)」、16日「世の中お金の落語会(歌武蔵、ぜん馬他)」「小佐田定雄の世界1(小春團治他)」「小佐田定雄の世界2(雀三郎他)」、17日「かえってきた鶴瓶チルドレン」「女性がからむと男はこうなる落語会(扇橋、馬生、菊之丞他)」「ぼっちゃん5の落語会(王楽、八光他)」。

 

コマツアミュゼは15日「圓生トリビュート(圓窓、鳳楽他)」「松喬・権太楼二人会」、16日「珍品堂1(三喬、談四楼他)」「この人この噺(志ん五、左談次、市馬他)」「芸術祭受賞者の会(松枝、南喬他)」、17日「珍品堂2(染丸、今松他)」「大の仲良し六人会(小燕枝、一朝、小金馬、小袁治、志ん橋、小里ん)」「珍品堂3(小満ん、喜多八、梅團治他)」。

 

そして時事通信ホールでは15日「亜郎の『オペラ座の怪人』」「喬太郎vs稲川淳二の怪談噺」、16日「さん生の『笑いの大学』」「雲助・白酒の師弟の怪談」「貞水と談春の怪談噺の会」、17日「昇太の『牡丹灯籠』」「おもしろ怪談噺の会(1部:志らく、白鳥/2部:楽太郎、好楽、たい平)」などが行なわれた。

 

ちなみに僕は15日は実相寺での「たまごの会(志ん輔、朝太他)」、17日には「立川流広小路寄席」に行ったが16日は一日中編集部で仕事をしていた。

 

落語ブームが本格化した中で行なわれた「大銀座落語祭2007」は7月12日(木)〜16日(月・祝)の5日間の開催。テーマは「東西味くらべ! 落語満漢全席!!」。前年の観客動員数が何と3万5千人だったということで、遂に5日間の開催に踏み切った、ということか。

 

この年はお馴染みの銀座ブロッサム中央会館、JUJIYAホール、コマツアミュゼ、時事通信ホール、新たに加わった浜離宮朝日ホール、王子ホールなどの他、山野楽器やソニービル8F、東芝銀座ビル4F、三越屋上といったイベントスペースで入場無料の催しが「大銀座落語祭」の賑やかしに加わっているのが特徴的だ。

 

中でも目立つのは1時間単位で若手を3人登場させる山野楽器の「お楽しみ寄席」で、ラインナップは14日「時松・こみち・志ん八」「わか馬・つくし・駒次」「楽春・愛楽・好二郎」「遊馬・錦之輔・可龍」「蔵之助・圓十郎・鏡太」、15日「こしら・志らら・らく朝」「金八・金也・金兵衛」「神田茜・神田ひまわり・一龍斎貞寿」「らん丈・丈二・ぬう生」「福治・禽太夫・三之助」、16日「慎太郎・健太郎・笑海」「菊春・菊可・菊六」「種平・鉄平・錦平」「扇好・扇里・遊一」と、かなりニッチなラインナップ。あえて言うなら今の「シブラク」的な匂いもする。これは、落語のCDを売っているレコード店ゆえの「入場無料で落語ファンが来てくれれば」という戦略だろう。ちなみに山野楽器は「大銀座落語祭」が2008年に終了すると、翌2009年からは独自に「プチ銀座落語祭」を開催することになる。

 

前述のように僕はこの年「大銀座落語会」に初参加して14日に「談笑の世界/志らくの世界」(博品館劇場)に、16日に米朝・小三治の出る「究極の東西寄席」(中央会館)に行ったのだが、この5日間のそれ以外の行動はというと、12日と13日は林家彦いちがトリを取る上野鈴本演芸場夜の部(文左衛門が仲入り)、15日は春風亭一朝がトリの池袋演芸場夜の部へ行った。なお、16日には銀座から会社に戻って仕事をした後、いそいそとまた上野鈴本演芸場に行ったのだった。

21世紀落語史

広瀬和生(ひろせかずお)

1960年生まれ。東京大学工学部卒。ハードロック/ヘヴィメタル月刊音楽誌「BURRN! 」編集長。落語評論家。1970年代からの落語ファンで、年間350回以上の落語会、1500席以上の高座に生で接している。また、数々の落語会をプロデュース。著書に『この落語家を聴け! 』(集英社文庫)、『落語評論はなぜ役に立たないのか』(光文社新書)、『談志は「これ」を聴け!』(光文社知恵の森文庫)、『噺は生きている』(毎日新聞出版)などがある。
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