2006〜2008年のSWA【第23回】著:広瀬和生
広瀬和生『21世紀落語史』

21世紀早々、落語界を大激震が襲う。
当代随一の人気を誇る、古今亭志ん朝の早すぎる死だ(2001年10月)。
志ん朝の死は、落語界の先行きに暗い影を落としたはずだった。しかし、落語界はそこから奇跡的に巻き返す。様々な人々の尽力により「落語ブーム」という言葉がたびたびメディアに躍るようになった。本連載は、平成が終わりを告げようとする今、激動の21世紀の落語界を振り返る試みである。

 

2006年1月、夢枕獏が『楽語・すばる寄席』(集英社)という書籍を出した。2005年に『小説すばる』に連載した書き下ろしの新作落語脚本(各メンバーに当て書きしたもの)などを1冊にまとめたもので、同年9月24日にはその夢枕獏作品を高座に掛ける「SWA獏噺の会」が国立演芸場で開かれた。この公演で神田山陽が久々に復帰している。

 

【演目】彦いち『史上最強の落語』/白鳥『カニの恩返し』/昇太『ウルトラマンはどこですか』/喬太郎『鬼背参り』/山陽『陰陽師安倍晴明化鼠退治』

 

『鬼背参り』は悲しく切ない感動の物語。喬太郎の迫力溢れる話芸が堪能できる名作だ。後に昇太もこれを手掛けている。

 

2006年12月26日・27日の「SWAクリエイティブツアー」(明治安田生命ホール)にも山陽が参加した。

 

【演目】白鳥『恋するヘビ女』/昇太『吉田さんの携帯』/彦いち『カラダの幇間』/山陽『傘がない』/喬太郎『明日に架ける橋』

 

『明日に架ける橋』は白夜書房の『落語ファン倶楽部』(『笑芸人』の発展形と言うべき落語専門ムック)Vol.3付録CD連動企画の三題噺として創作されたもの。お題は「2007年問題」「バイオエネルギー」「吾妻橋」で、CDでは昇太が演じていた。ちなみに同ムックVol.2では「ファン倶楽部」「カテキン」「革の財布」というお題で『母さんファン倶楽部』が創作され、白鳥が演じてCD付録となっている。

 

2007年2月19日〜22日には下北沢「劇」小劇場で「SWAリニューアル」。

 

【演目】喬太郎『路地裏の伝説』/昇太『空に願いを』/山陽『しまふくろうの城』/白鳥『江戸前カーナビ』/彦いち『掛け声指南』

 

この公演は2月13日〜25日に昇太プロデュースで開催された「下北沢演芸祭2007」の一環として行なわれたもの。この演芸祭では他に昇太、喬太郎、山陽それぞれの独演会や談春の「昇太トリビュート」独演会といった催しもあり、25日にはSWAのメンバーがまったく別人になりきってショート落語を次々に披露する「別キャラ亭」も行なわれた。この「別キャラ亭」がSWAに山陽が参加した最後の公演となったが、この時点ではまだ脱退表明はない。山陽のSWA脱退が正式にアナウンスされたのは2008年1月号の『東京かわら版』誌上、SWA持ち回り連載コラム「新作日和」の昇太担当回においてであったが、この頃にはもはや「山陽がいないSWA」しか知らない観客のほうが圧倒的に多く、脱退はむしろ当然のように受け入れられ、大きく騒がれることはなかった。

 

2007年7月22日の「SWAクリエイティブツアー」(明治安田生命ホール)の総合テーマは「東京」。

 

【演目】喬太郎『華やかな憂鬱』/昇太『手紙の中の君』/白鳥『後藤を待ちながら』/彦いち『頭上からの伝言』

 

歌舞伎町のキャバクラの店長が主人公の『華やかな憂鬱』はその後も喬太郎がしばしば演るネタの1つとなった。なお、この公演に山陽が参加しなかった理由についてはSWAのブログ「SWA! すわっ!」において「スケジュール管理ミスというバカな理由で、出演出来ません」と。チケット発売直前に告知されている。

 

2007年9月23・24日の「SWAリニューアル〜第二章〜」(明治安田生命ホール)で、総合タイトルは「明日の朝焼け〜たかし11歳から退職までの物語〜」。4人別々の噺が1つの物語として繋がる、記念すべき「初のブレンドストーリー」だ。2007年2月号の『東京かわら版』の巻頭インタビューで昇太は「それぞれの噺が、全体の流れの中で、ひとつのストーリーの一部として完結する、というのを最終的に目標にしている」と語った。それが遂に実現したのである。【演目】白鳥『恋するヘビ女』/昇太『夫婦に乾杯』/彦いち『臼親父』/喬太郎『明日に架ける橋』

 

「たかし」の人生を4編の新作落語で描いたこのブレンドストーリー「明日の朝焼け」は、2008年1月14日に大阪・ワッハホールで再演された。

 

SWAは2008年、さらに2つのブレンドストーリーを生み出す。まずは2月12・13日に「下北沢演芸祭2008」の一環として本多劇場で行なわれた「SWAブレンドストーリー2」で、総合タイトルは「黄昏の母校」。母校の廃校をテーマにした連作で、喬太郎と彦いちはネタ下ろしとなった。

 

【演目】昇太『遠い記憶』/喬太郎『やとわれ幽霊』/彦いち『アイアンボーイ』/白鳥『明日に向かって開け』

 

続いては10月27・28・29日に明治安田生命ホールで行なわれた「SWAクリエイティブツアー ブレンドストーリー3」で、総合タイトルは「願い」。幕が開くと喬太郎が板付きで登場、「癌で入院中の少女サチコの手術に必要な血液が届くのを待つ医師とサチコの父との会話」で状況を説明し、「運動会を楽しみにしていた」とか「死んだ親父が世話してたムアンチャイ」といった台詞が出てきて後の落語との関わりを仄めかす。
【演目】彦いち『掛け声指南』/白鳥『奥山病院忌憚』/昇太『空に願いを』/喬太郎『カラダの幇間』

 

白鳥はネタ下ろし、その他はブレンドストーリー用にアレンジされた持ちネタ。「SWAクリエイティブツアー ブレンドストーリー3」は11月20・21日に名古屋テレピアホール、12月26日に大阪ワッハホールで再演された。

 

目標としていた「ブレンドストーリー」を3回達成したSWAは、その反動か、翌2009年には活動のペースを落とすことになる。

21世紀落語史

広瀬和生(ひろせかずお)

1960年生まれ。東京大学工学部卒。ハードロック/ヘヴィメタル月刊音楽誌「BURRN! 」編集長。落語評論家。1970年代からの落語ファンで、年間350回以上の落語会、1500席以上の高座に生で接している。また、数々の落語会をプロデュース。著書に『この落語家を聴け! 』(集英社文庫)、『落語評論はなぜ役に立たないのか』(光文社新書)、『談志は「これ」を聴け!』(光文社知恵の森文庫)、『噺は生きている』(毎日新聞出版)などがある。
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