燃えさかるロンドンの只中に、パンクの義士が蜂起した―ザ・クラッシュの1枚【第68回】著:川崎大助
究極の洋楽名盤ROCK100

bw_alison

2018/12/17

戦後文化の中心にあり、ある意味で時代の変革をも導いた米英のロックミュージック。現在我々が享受する文化のほとんどが、その影響下にあるといっても過言ではない。つまり、その代表作を知らずして、現在の文化の深層はわからないのだ。今を生きる我々にとっての基礎教養とも言えるロック名盤を、作家・川崎大助が全く新しい切り口で紹介・解説する。

34位
『ザ・クラッシュ』ザ・クラッシュ(1977年/CBS/英)

Genre: Punk Rock, Reggae
The Clash – The Clash (1977) CBS, UK
(RS 81 / NME 61) 420 + 440 = 860


Tracks:
M1: Janie Jones, M2: Remote Control, M3: I’m So Bored with the USA, M4: White Riot, M5: Hate and War, M6: What’s My Name, M7: Deny, M8: London’s Burning, M9: Career Opportunities, M10: Cheat, M11: Protex Blue, M12: Police & Thieves, M13: 48 Hours, M14: Garageland

 

ロンドンでパンク・ロックの大爆発が起きた1977年にリリースされた、ザ・クラッシュのデビュー作がこれだ。パンクの「心・技・体」の「心」の部分を、セックス・ピストルズとともに彼らは担った。

 

本作の邦題は「白い暴動」だった。M4の邦題をタイトルとした。この曲はラモーンズ(パンクの「体」を代表する)直系の2コード・ナンバーなのだが、こうした系統の曲だけではなく、早くも彼らオリジナルの豊かな音楽性も本作で見てとれる。オールドR&Rを適切に蘇生させたかのような、キャッチーなナンバーが半数ほどを占める。レゲエ歌手ジュニア・マーヴィンのヒット曲カヴァーのM11もある。レゲエ・ファンのあいだには、こんな見解がむかしから根強い。「クラッシュは最も有名な白人レゲエ・バンドだ。ラスタの予言(Two Sevens Clash)に基づいて行動している」――本作においてパンク・ロックは、支配者と対峙する「永遠の抵抗者の音楽」となった。

 

ところで本作は、イギリスでのオリジナル盤リリースと同時には、アメリカでは発売されなかった。当時の米CBSからは「売れない」と踏まれたからだ。結局、本作のUS盤はセカンド・アルバム発表後の79年にようやく発売される。しかし収録曲はかなり違っていて、UK盤から5曲を抜いて、シングル曲などを新たに6曲追加した内容だった(M4のみヴァージョン違いが収録された)。「そうせざるを得なかった」からだ。アメリカのクラッシュ・ファンに買ってもらうためには。

 

本作は「輸入盤でしか聴けない」段階で、米国内で10万枚以上が売れていた。同国の、当時の「輸入盤事情」を知る人ならば、これがいかに驚異的な数字だったか理解できるはずだ。つまり、頭の固い米CBS幹部を揺り動かすほど、クラッシュはアメリカで草の根的な支持を得た、ということだ。ゆえにここでは、UK盤とUS盤の両者を「ひとつの同じアルバム」と見なして集計した。ちなみに、上記のクレジット欄に記載されている曲目などの情報はすべて、オリジナルUK盤に準拠している。

 

クラッシュが提示したのは「ヒーローの心」だ。これがリスナーの魂を打った。社会的公正さを求める主張や問題提議、「逃げずに闘う」精神性をパンク・ロックに持ち込んだ第一人者が彼らだった。しかもそれを「燃えるしかない」ロックの歌詞として。ここから燎原の火のように「パンク革命」は広がっていく。

 

次回は33位。乞うご期待!

 

※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。

 

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究極の洋楽名盤ROCK100

川崎大助(かわさき・だいすけ)

1965年生まれ。作家。88年、音楽雑誌『ロッキング・オン』にてライター・デビュー。93年、インディー雑誌『米国音楽』を創刊。執筆のほか、編集やデザ イン、DJ、レコード・プロデュースもおこなう。2010年よりビームスが発行する文芸誌『インザシティ』に短編小説を継続して発表。著書に『東京フールズゴールド』『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』(ともに河出書房新社)、『日本のロック名盤ベスト100』(講談社現代新書)がある。

Twitterはこちら@dsk_kawasaki

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