ヒッチハイクで銀河を渡り、押し出されてトップに立つ【第53回】著:川崎大助
川崎大助『究極の洋楽名盤ROCK100』

戦後文化の中心にあり、ある意味で時代の変革をも導いた米英のロックミュージック。現在我々が享受する文化のほとんどが、その影響下にあるといっても過言ではない。つまり、その代表作を知らずして、現在の文化の深層はわからないのだ。今を生きる我々にとっての基礎教養とも言えるロック名盤を、作家・川崎大助が全く新しい切り口で紹介・解説する。

51位
『OKコンピューター』レディオヘッド(1997年/Parlophone/英)

Genre: Alternative Rock, Art Rock
OK Computer-Radiohead (1997) Parlophone, UK
(RS 162 / NME 20) 339 + 481 = 820

 

 

Tracks:
M1: Airbag, M2: Paranoid Android, M3: Subterranean Homesick Alien, M4: Exit Music (For a Film), M5: Let Down, M6: Karma Police, M7: Fitter Happier, M8: Electioneering, M9: Climbing Up the Walls, M10: No Surprises, M11: Lucky, M12: The Tourist

 

またまたレディオヘッドだ。僕に作為はない。集計したらこうなった。全100枚のこのチャートの、ちょうど真ん中の3席を彼らのアルバムが連続で占めることになった。たまたま――か、〈ローリング・ストーン〉と〈NME〉チャートの選者も含む、米英ロック・ファンの集合無意識がそうさせたのか、僕にはわからない。51位の『OKコンピューター』(97年の第3作)、50位の『キッドA』(00年の第4作)に続き、49位に入ったのは彼らの第2作、最初に成功したアルバムだ。

 

バンドを一気に成長させようとしていた中心人物のトム・ヨークいわく、本作の発想の原点は、マイルス・デイヴィスの『ビッチェズ・ブリュー』(70年)だったという。アヴァン・ジャズ・フュージョンの名作である同作を、彼は「すさまじく高密度で『怖い』音」と解釈した。それは「なにかを建設し、それが壊れていく様を観察しているような美しさ」であり、アルバムで追い求めたのはこれなのだ、と。

 

その言葉どおり、本作には、これまでにない堅牢な構造体がその基盤に置かれていた。たとえばM1、まるでサンプリングされたブレイク・ビーツのループのような、極太のドラム・サウンドに耳を奪われる。ミックスにかんする意識が、これまでの彼らとはまったく違う。当時世間を騒がせていた「トリップ・ホップ」という音楽スタイルのごときテクスチャーが全体を覆う。この「堅牢」に、たとえばM1では、横殴りの暴風雨みたいなディストーション・ギターが襲いかかる。M2、M9の不穏で神経過敏な感じは、まるでマッシヴ・アタックのアルバムでレディオヘッドが客演して――そのまま曲を乗っ取っちゃったみたいだ。まさに大波乱の1枚。だからこそ、そんななかにそっと置かれた、アルペジオが(ヴェルヴェッツの「サンデイ・モーニング」みたいな)繊細なM10や、エモーショナルなM12の美しさは格別だ。

 

本作は、全英チャートで(彼らにとって初の)初登場1位。全米では最高位が21位だったものの、これまでよりはずっとよかった。そしてなんと、グラミー賞の「アルバム・オブ・ザ・イヤー」と「ベスト・オルタナティヴ・ミュージック・アルバム」にノミネートされ、後者を受賞する(これ以降、このパターンで顕彰されることが彼らの定番となる)。まさにこの1枚にて、レディオヘッドはシーンのトップ・ランナーとなった。いまもって、彼らの代表作だとする声も多い。

 

次回は48位。乞うご期待!

 

※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。

 

この100枚がなぜ「究極」なのか? こちらをどうぞ

究極の洋楽名盤ROCK100

川崎大助(かわさき・だいすけ)

1965年生まれ。作家。88年、音楽雑誌『ロッキング・オン』にてライター・デビュー。93年、インディー雑誌『米国音楽』を創刊。執筆のほか、編集やデザ イン、DJ、レコード・プロデュースもおこなう。2010年よりビームスが発行する文芸誌『インザシティ』に短編小説を継続して発表。著書に『東京フールズゴールド』『フィッシュマンズ 彼と魚のブルーズ』(ともに河出書房新社)、『日本のロック名盤ベスト100』(講談社現代新書)がある。

Twitterはこちら@dsk_kawasaki

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