いまさらファミレス飲みにハマる
酒場ライター・パリッコのつつまし酒

 

遅れて来たファミレス飲みブーム

 

わざわざ宣言するのもお恥ずかしい話なんですが、最近、いまさら「ファミレス飲み」にハマってまして。

 

いや、もちろん何年も前から酒飲みの間で、ファミレスで飲むのが流行っていることは知ってましたよ。実際僕も、「サイゼリヤ」や「バーミヤン」なんかは、普段からカジュアルに飲み利用させてもらってます。日中に知らない街でお酒が飲みたくなった時、かなりの確率で見つかって、手頃に飲めることがわかっているし、人数多めでも対応可能。また別のパターンで、仕事で疲れ果てて新規開拓をする気力もなく、酒やつまみにはこだわらないので、一刻も早く飲みたい! なんて時にも大変ありがたい存在なんですよね。

 

何年か前に初めて入ってみた「ジョナサン」も良かった。
お酒やつまみの種類自体かなり豊富なんですが、中でも「本格焼酎『麦楽』(180ml)+ドリンクバーセット」(499円)。要するにこれ、焼酎をドリンクバーにあるさまざまな飲み物で割り、自分だけのオリジナルサワーを作れるというシステム。もちろん1種類とは限らず、ソーダ割りにほんの少しティーフレーバーを足したっていい。この無限の楽しさ、完全にファミレス側が、酒飲み方面に歩み寄ってきてくれていると言えますよね。

 

酒飲みの先輩、とみさわ昭仁さんもジョナサン飲みが好きで、この焼酎の炭酸水割りを「ジョナ酎」と呼んで愛好しているそうですが、ある日思いつき、ここにほんのワンプッシュだけジンジャーエールを足し、レモンティー用のカットレモンを浮かべてみたところ、そのほんのり黄金に色づいたグラスを見て「これ、下町ハイボールじゃん!」と感動したそう。

 

ある日、家族で「ガスト」へ

 

ところで最近、僕がどハマりしているのが「ガスト」飲み。

 

大きなきっかけは、昨年子供が生まれたことでした。
家族で出かけると、夫婦だけの時とは違い、子連れで入れる飲食店のチョイスって相当限られます。まず、できれば禁煙、もしくは分煙のお店が望ましいし、ゆっくりと食事を楽しみたいお客さんたちの雰囲気を子供のはしゃぐ声が邪魔してしまうことにも気を使う。「入りたい店」より「入れる店」が優先されるようになります。
そんな時にファミリーレストランというのは、本当にありがたい。その名の通り「どうぞご家族でお食事をお楽しみください」というスタンスで営業されているので、子供用の設備も整っているし、店員さんの対応も慣れたもの。何より「ファミリーで入っても大丈夫ですよ」という心のゆとりが大きいんですよね。
いやこれ、ごく当たり前の事なんですが、数年前の僕は、そんなこと気にもとめずに日々をすごしていたというわけで、人間、常々もっと視野を広く持っておかないといけませんね。

 

さて、とある休日の昼下がり、駅前。「食事をしたいけど家族で入れる店は……」と見回すと、ガストがあった。今までの人生でそんなに縁があったほうではないので、どんな特色のあるお店だったかはあやふやのですが、とにかく受け入れてもらえるならば御の字。
そんな流れで、僕は初めて、ガストと真剣に向き合うことになりました。

 

妻はオーソドックスに、ハンバーグセットかなんかを。娘は店員さんに断り、持参した離乳食のお弁当。
そして僕ですが、もちろんお酒が飲みたいです。「え、飲むの!?」と思われるかもしれませんが、別に泥酔するまで飲もうってんではなく、休日の午後に彩りを添えるほんの1~2杯なので、何卒多めに見てやってください。
メニューを眺める。なるほど、一番のメインはハンバーグか。それから、肉類のグリル系。とんかつやサバの味噌煮なんて和風のおかずもあれば、パスタやピザに麺類も一通り。「カフェごはん」のページには「ローストビーフの十三穀米サラダご飯」なんていうこまっしゃくれたものもありますよ。
お酒はどうだ? 生ビール、ハイボール、レモンサワー、焼酎、日本酒……。え? ワイン、梅酒、紹興酒は、それぞれグラス1杯99円!? しかも平日14時~18時までのハッピーアワーは、ビールとハイボールとレモンサワーが200円!? ドリンクバーを合わせて頼めば、例のオリジナルサワーごっこだってできます。
さらに見逃せないのが、「サイドディッシュ」の項目。199円~小皿料理が並んでいて、どれも魅力的。「コーンのオーブン焼き」なんて、まんま居酒屋のコーンバターですし、「おつまみ煮玉子&キムチ」にいたっては、もう「おつまみ」って言っちゃってる!
なぁんだ。ファミリーだけでなく、酒飲みにとっても天国じゃないですか、ガスト。むしろヘタな居酒屋では太刀打ちできないお手頃さだ。

 

こりゃあ楽しくなってきたぞ、と、俄然テンションが上がります。悩みに悩み、選んだメニューは、「若鶏のグリル ガーリックソース」(649円)単品。それから「ピリ辛キムチ冷奴」(199円)。お酒は「アサヒスーパードライ」(449円)。

 

すぐにやってきた冷奴とビール。ぷるんと丸っこい豆腐にキムチが乗っているんですが、そこにコチュジャン風味の効いた甘辛いタレもかかっていて、想像の数段上をいく美味です。そのこってりとした味わいをすかさずキンキンのジョッキビールで洗い流す! 快感としか言いようなし。

 

しばらくすると若鶏のグリルも到着。ここでもまたびっくりしてしまったんですが、大皿に乗った鶏肉がどーんと巨大で、そこにかぐわしい芳香を放つソースがたっぷりとかかり、彩りの良いサラダも添えられて、うまそうなんてもんじゃありません。これ、同じ値段でそこらの大衆酒場で出されていたら、お得すぎる看板メニューとして、一躍大人気店になること間違いなしですよ。
実際、う~んとうなってしまうほどの美味しさと食べ応え。酒飲みからしたら、肉を食べきってしまって残ったソースすらもつまみになります。

 

納得しましたね。

 

そうか、僕が普段飲んでいるような大衆酒場って、お酒の場としての居心地の良さや雰囲気、安心感、そういったものが重要な要素となるので、特別に美味しすぎなくても、ごく普通のつまみがあれば成り立ってしまうし、それでいい。
ところがファミリーレストランは、幅広い年齢層の人々が訪れ、1日の中の貴重な「一食」を楽しむ場所。歴史と研究努力の賜物でしょう。メニューに並ぶのは、どれもこれもがきちんと美味しい「料理」たちなんだ。
僕のようないやしい酒飲みは、そのハイクオリティーなサービスのうわずみを都合よく享受させてもらっている存在なわけですが、当のガストさんもまた、「いえいえ、それもいいんですよ」と歩み寄ってきてくれている。満足度が高くて当たり前ですよ、こりゃ。

 

もはや、ひとりでも「ガスト」へ

 

それからちょくちょく、ひとりでもふらりとガストに寄るようになりました。
今のところ、僕が勝手に最も幸福度が高いと思っている飲み方は、仕事が思ったより早く片付いた平日のハッピーアワーに、まずはビール、ハイボール、レモンサワーの中から、その日の気分なドリンクを1杯。

 

おつまみは、「ビーフカットステーキ」(999円)を強くおすすめしたい。
柔らかくて旨味たっぷり、驚くほど上質な牛のステーキ肉がたっぷり130グラム(ちなみに自分には多すぎてしまうんですが、肉が1.6倍の「てんこ盛り」はなんと1299円!)。カットされたレアーな状態でやってくるので、これを火にかけた鉄板でジューッっと焼きながらいただきます。つまり、常に熱々。
ソースは「生ステーキソース(さっぱり和風オニオン)」か「ガーリックソース」から選べ、肉がうまいので、僕的には和風が好み。そこにハッシュドポテトとミックスベジタブルまで添えられ、この一皿のつまみ力の高さといったら……。

 

当然1杯では足りないので、お酒を追加しましょう。「スペイン産 デカンタワイン(赤)」。500ml、なんと399円ですよ。ワインには詳しくないのですが、そんな自分からしたら文句のつけようなどない、美味しいワインです。
これらをちびちびぐいぐい。ゆっくりと時間をかけてやっていれば、浮世の悩み事などは、店内の快適な空調にすっかりと溶けていってしまいます。

 

はぁ、今日も大満足。お会計は合計で、え~と、1700円とちょっと!? とてもこんな贅沢なほろ酔い気分に見合う額ではありませんが、そうだというのだからありがたくお言葉に甘えましょう。
さて、次回は何を頼んでみようかな。実はガスト一番の名物メニューだという「チーズINハンバーグ」もまだ食べたことがないし……。ふふふ。

 

酒場ライター・パリッコのつつまし酒

パリッコ

DJ・トラックメイカー/漫画家・イラストレーター/居酒屋ライター/他
1978年東京生まれ。1990年代後半より音楽活動を開始。酒好きが高じ、現在はお酒と酒場関連の文章を多数執筆。「若手飲酒シーンの旗手」として、2018年に『酒の穴』(シカク出版)、『晩酌百景』(シンコーミュージック)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)と3冊の飲酒関連書籍をドロップ!
Twitter @paricco
最新情報 → http://urx.blue/Bk1g
 
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