おつとめ狩り
酒場ライター・パリッコのつつまし酒

 

スーパーは楽しい

 

スーパーマーケットって、つくづく最高の空間ですよね。

 

一般的に市場に出回っている、ありとあらゆる食材が所狭しと並べられ、旬のものあり、お買い得品あり。店内をうろうろとしていると、「今夜は何を作ってどんなお酒と合わせよう?」と夢が広がるいっぽうで、小一時間なんてあっという間に過ぎてしまいます。

 

仕事が終わると基本的に、スーパーに寄ってから帰ります。これはもはや、趣味のひとつ。

 

僕の住む石神井公園という街は、規模の割にかなりスーパーが充実しており、まず、地元で高品質な食材を気軽に買えるのがありがたく、お手頃な地物野菜コーナーも嬉しい「クイーンズ伊勢丹」。その先に巨大な「サミット」。肉系が安定して安い「西友」。一番日常使いしているかもしれない「ライフ」。石神井だけにあるローカルスーパーで、お惣菜や魚の品揃えが他と一線を画す「まなマート」。それぞれに特色があり、そこがスーパーのおもしろさでもありますね。

 

さらに数年前、駅周辺の再開発にともなって、改札の目の前に堂々オープンしたのが「イトーヨーカドー」。このヨーカドーがオープンする際には、「石神井のスーパーバランスが崩れてしまうのでは……?」などと余計な心配をしたものですが、そんなことはなく、今のところみんなでうまく共存しているようです。

 

おつとめ狩りはもっと楽しい

 

そんな、日常とは切っても切り離せないスーパーライフ(スーパーのライフのことではありません)の中でも、特に興奮度が高く、もはや毎日開催されている「イベント」と言ってしまってもいいのでは? と思うのが、閉店間際のおつとめ品タイム。

 

生鮮食品には賞味期限というものがありますから、なるべくその日のうちに売り切ってしまわなければいけない。スーパーにもよりますが、例えば夕飯の買い物のピークを過ぎた19時に3割引、20時に4割引、21時にはなんと半額! といった具合に、どんどん値段が下がっていきます。
そこを狙う!

 

残業で帰りが遅くなることほど気が滅入ることはないけれど、強いて救いがあるとすれば、閉店ギリギリ、おつとめ品パラダイスと化したスーパーに寄って帰れること! ハァハァと息荒く店内を徘徊し、ギョロギョロとただならぬ目つきで食材を物色し、これぞという宝を見つけたらなるべく迅速に、震える手でカゴに放り込む。

 

この一連の行為にまつわる興奮と喜び、少なくとも、「もみじ狩り」よりはよっぽど「狩り」と呼ぶのにふさわしいのでは? ということに気づき、いつからか自分の中で「おつとめ狩り」と呼んで楽しんでいます。

 

ジャンル別おつとめ狩りポイント

 

さてここからは、おつとめ狩りにおける注意点、喜びポイントを、大まかなジャンルごとに見ていきましょう。

 

・惣菜類

 

入門編はこのコーナーかもしれません。

 

唐揚げ、餃子、シュウマイ、ポテサラ、コロッケ、ジャーマンポテト、焼鳥、天ぷら、オムそば、豆腐ハンバーグ、フライドチキン。どれもこれも酒のつまみにもってこいで、レンジでチンするだけで、晩酌の始まり始まり。食べきれなかったぶんは冷蔵庫にしまっておけば、翌日くらいまでなら余裕で食べられるでしょう。

 

 

スーパーの惣菜売り場にあるやたらと巨大なチキンカツ、温め直して若干フニャリとした衣にソースをドボドボとかけ、チューハイのつまみにする喜び。あれは晩酌ならではですよねぇ。

 

 

・野菜/果物

 

ここはなかなか難しい。

 

野菜や果物類のおつとめ品は、通常の陳列棚ではなく、「おつとめワゴン」にまとめられていることが多いです。なので、見わけることはたやすい。しかしながら、特に葉物野菜などの場合、あからさまにしおれ始めているものなどもちらほらと見受けられ、安いからと何も考えずに買うと悲しい思いをします。

 

比較的酒のつまみ向きなミョウガ、谷中生姜、エシャレットなどは、その日のうちに食べきるつもりならば狙い目。

 

また、僕の中で最上級のごちそう野菜であるカリフラワーは、発見したら必ず状態を確認するようにしています。特に鮮度に問題がなさそうなら購入。たっぷりの油、ニンニク、塩で炒めるだけで極上のつまみに。

 

 

フルーツに関してはあまり語れることがないのですが、強いて言えば、僕の大好物、洋梨は、「追熟」といって、表面が柔らかくなるくらいまで室温で放置してからいただくのが美味しい食べ方。スーパーに並ぶのは基本、値引き品といえど追熟前のものなので、おつとめ狩りにおけるラッキー食材といえるかもしれません。

 

 

・肉類

 

万人におすすめでき、安定した満足度を誇るジャンルです。

 

 

半額の時間帯を狙えば、たった数百円で一通りの部位が揃った焼肉セットをゲットできることもあります。鶏の手羽系などは、ただでさえ安いのに、おつとめに当たればホクホク。100円とか200円で、その日の晩酌のつまみにはじゅうぶんなほどの量が手に入ります。

 

 

さらにすごいのが「鶏ガラ」。もともとが1羽ぶんで100円とか150円とかの投げ売り価格なので、半額ならばタダ同然。これをクズ野菜などとじっくり煮込んで鍋から取り出し、骨についた身は根気よくこそぎ落として醤油であえればおつまみに。そしてメインのスープ。これで、見よう見まねの自家製ラーメンなんか作って悦にいる時間は、この上ないものです。

 

 

おつとめ狩りでこそ最大のポテンシャルを発揮するのは、ずばり「いい肉」。普段なら絶対に手の届かない、100グラム1,000円もする高級和牛。これが半額になっていたとして、500円。それでも高いがワンコインです。思い切って買って帰り、家で焼いて食べてみると、そこにはやはり高いだけのことはある、想像を超えた世界が待っている。

 

「お店で食べたら数千円はくだらないだろうな~」なんていやしいことを考えながらすする安ワインの、これまたうまいこと! このたまの贅沢感と、よく考えるとそんなにかかっていない元手のギャップが、最高の酒のつまみというわけです。

 

 

・魚介類

 

真骨頂はやはり魚介類でしょうね。

 

 

僕は、晩酌にお刺身で飲むことがとりわけ好きなのですが、それこそ足が早いジャンルなので、閉店が近づけば近づくほど、ぐんぐん割引きされていきます。もちろん、スーパー側も売れ行き予測を立てて仕入れているので歯抜け状態ですが、だからこそ、今ちょうど自分が欲していた気分にぴったりの一品と出会った時の感動は大きい!

 

 

また、普段の感覚だと高級品の部類に入るお刺身類ですが、おつとめ品なら気持ち的に、より自由に食べられるのも嬉しいところ。

 

数種の刺し盛りを、帰宅してまずお風呂に入っている間だけめんつゆに浸しておき、「簡易漬け」にしてもいいし、同様に、塩昆布であえておいて「簡易昆布締め」にしてもいい。

 

僕が最近ハマっているのが、さらに冒涜感はなはだしいメニューで、「カツオのタバスコマヨネーズあえ」。読んで字のごとく、カツオのタタキか刺身に、タバスコとマヨネーズをたっぷりとかけ、よーく混ぜていただくんですが、まったり濃厚かつピリ辛で最高にお酒が進みます。

 

こういった工夫は、少々鮮度が落ちてしまったお刺身が再び輝きを取り戻すところも、自画自賛の喜びに拍車をかけるポイントでしょうね。

 

 

最後に僕から、忘れずにお伝えしておきたいのは、鮮魚売り場の片隅で、少々いじけたように展開される「アラ」のコーナーこそが、我々「晩酌派おつとめ狩り族」における、宝の山だということ。

 

 

鶏ガラとも共通しますが、そもそもが投げ売り価格で売られている魚のアラ。あれ、1尾の魚から、お刺身や煮魚、焼き魚用などに身を取った残りの部分というだけであって、決して「美味しくない部分の寄せ集め」ではありません。

 

驚くほど巨大なブリカマや、パックにパンパンに詰められた鮭カマは、シンプルに塩焼きで。

 

たっぷりのブリアラならブリ大根に。

 

イカゲソやエンペラは、バター炒めやホイル焼きに。

 

まーそうと限らず、好きなように調理して各自楽しめばいいと思うんですが、とにかく、お手頃さと満足度のギャップはなはだしい、酒飲みにとっては夢のコーナーです。

 

 

そんなアラコーナーの主役といえば、やはりマグロ。

 

巨大な魚なので、一言にアラといっても状態はさまざま。血合い部分の多いものなら、ステーキや唐揚げが最高ですし、スジや骨が多めなら、たっぷりの油でほぐしながら炒め、自家製ツナもいいでしょう。

 

まれに、「これ、本当にアラ!?」と疑いたくなるほど、赤身~トロにいたる、見るからに上等な身のたっぷりつまったパックを発見することがあります。
そんな時はもちろん「ねぎま鍋」!

 

ザクザクとぶつ切りにしたマグロの身を一度ゆでこぼし、ネギ、豆腐とともに鍋で煮て、酒醤油みりん、面倒ならばめんつゆで味付け。たったこれだけで、幸せで身体がとろけてしまいそうなほどの、極上の晩酌タイムを過ごすことができますよ。

酒場ライター・パリッコのつつまし酒

パリッコ

DJ・トラックメイカー/漫画家・イラストレーター/居酒屋ライター/他
1978年東京生まれ。1990年代後半より音楽活動を開始。酒好きが高じ、現在はお酒と酒場関連の文章を多数執筆。「若手飲酒シーンの旗手」として、2018年に『酒の穴』(シカク出版)、『晩酌百景』(シンコーミュージック)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)と3冊の飲酒関連書籍をドロップ!
Twitter @paricco
最新情報 → http://urx.blue/Bk1g
 
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