ピザを焼く
酒場ライター・パリッコのつつまし酒

 

ピザ焼きのハードルは高い?

 

「趣味ですか? う~ん……休みの日にピザを焼くことかな」という男性がいたら、どうです?
素直に「いいな」って思いますか? な~んかいけすかないですか? どっちにしろ、人生楽しんでそうではありますよね。

 

庭に専用の釜がないとできなそう。特別な材料がいりそう。生地を空中でくるくるっと伸ばせるようになるまで何年もかかりそう。いろいろとハードルがありそうで、ならばちょっと割高だけど、できたてを家まで届けてくれる宅配ピザでいいや~、というのが、どちらかというと多数派の意見だと思います。

 

でもね、僕、焼くんですよ……。何を? って、ピザを。

 

家で生地から手作りするピザ、実はぜんっぜん難しくないんです。さっき挙げたハードル、一個もクリアしてなくても問題なく実践できます。それでいて完成した時の満足度が高く、酒がうまい。

 

 

そもそもピザって、大変なごちそうじゃないですか。宅配ピザが世に浸透しだし、生まれて初めて食べた時の、あのとろ~り濃厚なチーズとソース、ふっかふかの生地、そのハーモニーが生みだす夢のような美味しさ。人生の中で忘れられない食体験のひとつです。
また、食材や味付けの自由度が高いのも特徴のひとつ。シンプルにオリーブオイルと塩だけでも、焼きたてならば驚くべき美味しさですし、甘党の方はフルーツや生クリームでデコレーションしたっていい。
そんなごちそうメニューであるピザが、自分の好きな食材だけを使い、好きなだけたっぷりとチーズを乗っけて作れてしまう。あまつさえ焼きたてのそれをつまみに、ビールをぐびぐびと飲めてしまう!
こんな楽しいこと、やらなきゃ損ってもんじゃないですか?

 

いざ、実践

 

以下は、僕がいろいろなレシピを眺めたりそれを省略したりしてたどりついた、完全なる「自己流ピザ」の作りかた。ピザ職人が見たら失笑してしまう可能性もなくはないんですが、あくまでも僕自身は素直に美味しいと思っているので、参考までに記しておきます。

 

タイミングとしては、やはり休日の午前中がおすすめ。というのも、ここだけが多少やきもきする工程なのですが、小麦粉をこねたあと、最低でも3時間くらいは生地を寝かせたいんですよね。ちょっと早めの夕方から飲み始めたいことを考えると、そのくらいの余裕がほしいところ。

 

 

では、土台となるピザ生地を作っていきましょう。
すべて目分量でいきますよ?

 

まずはボウルに、小麦粉(強力粉がおすすめですが、なければ薄力粉でも)をドサドサっと入れ、そこにオリーブオイル(なければ適当な油)、塩、ドライイーストを加えます。分量の目安は、小麦粉は「これくらい使えばピザ生地2~3枚分できるんじゃないかな~?」と想像するくらいの量。オリーブオイル、塩、ドライイーストは、「少々控えめ」と思える量。

 

これを菜箸などでかき混ぜながら、少しずつ水を足していきます。水が多すぎるとべちゃっとなってしまうので慎重に。が、そうなったとしてもまた粉を足せばリカバーできるので気負いすぎず。

 

そうやってしばらくかき混ぜていると、ポロポロとしていた小麦粉が次第にまとまりだします。そしたらこんどは両の手を使い、えいやっと力を込めてこねていきます。
やめ時がわからなくなりますが、そんなに熱心にやらなくても大丈夫。何度か折りたたんだり伸ばしたりを繰り返し、最終的にひとつのボール状にまとまればOKです。

 

 

このボールにラップをかけ、夏場は冷蔵庫、他の季節ならそのへんに、最低3時間以上放置しておいてください。この寝かせの工程が大切で、気を急いてすぐに焼きはじめてしまったこともあるんですが、形にならなくはないものの、きちんと時間をかけた生地のふんわりサクサク感にはとうてい及びませんでした。
寝かせ終わった生地は、数時間前の乾燥した大地のような質感から一変、ツルツルにみがきあげられた玉のような美しい輝きを放っていることでしょう。

 

 

次にこれを成形していきます。
好きな大きさにちぎった生地をまん丸のおだんご状にし、小麦粉適量を散りばめたまな板にギュッギュッと押し付けて広げていきます。ただ、このやりかたで生地を伸ばしていくのは限界があるので、ある程度のところで持ち上げ、車のハンドルのような感じで回転させながら、穴が開かないように左右に引き伸ばしていくイメージで、理想の形に近づけていきましょう。
決して、プロの真似をして空中に放り投げたりはしないでくださいね。僕もそれで、何度床に落としたことか。

 

 

さぁ、ここまできたらできたも同然! オリーブオイルを薄く伸ばしたアルミホイルに生地を置き、こだわるならばトマトなどをベースに作ったソースを、手を抜きたければお好きな市販のピザソースを塗って、野菜や肉、それにとらわれず自由な発想で具を乗せ、好きなだけピザ用チーズを乗せてオーブンで焼くだけ!

 

そりゃあ冷静に比べれば専門店のものよりは劣るのでしょうが、焼きたてのピザの美味しさは格別で、何よりも自分で作ったという最高のスパイスが加わり、普段にもましてハイペースでビールを消費してしまうことは間違いありません。

 

はい、これであなたも「趣味はピザ作り」を公言できますね! めでたしめでたし。

 

手抜きピザ晩酌

 

ここまで書いてきてなんなんですが、僕は最近、もっともっと気軽な「ピザ晩酌」を楽しむことも多いです。
「宅配ピザをとるんでしょう」って? 確かに宅配ピザは便利で美味しい。が、少なくとも僕にとって、「気軽」といえるほどリーズナブルなものではありません。

 

そこで登場するのが、スーパーなどで売っている冷凍ピザ。
1枚298円くらいとか、3枚入りで398円とか、ああいうやつです。

 

もちろん、ただオーブンでチンするだけでもちゃんとピザです。宅配ピザの10分の1くらいの値段を考えると、こんなにありがたい食品はそうない。
ただ、裏技というか発想の転換というか、単なる酒飲みのせこい知恵ともいいますが、僕はあれを1枚の「ピザ生地」と考えている節があります。つまり、冷凍ピザにさらに具材やチーズをトッピングして焼く、というわけ。

 

ピザのうまさって極論、ほおばった時にたっぷりのチーズがとろ~っととろけるうまさだと思うんですよ。そういう意味では、例え冷凍であろうと、自分のさじ加減ひとつでどこまでも魅力をブーストさせることができる。

 

この、手作りより敷居の低い「冷凍ブーストピザ」には、気軽に安ワインなんかを合わせるのが好きですね。
騙されたと思ってぜひ一度やってみてください。
「こんなに安上がりなのに、こんなに幸せでいいのだろうか……」
そんな陶酔の夜をきっと過ごせることでしょう。

酒場ライター・パリッコのつつまし酒

パリッコ

DJ・トラックメイカー/漫画家・イラストレーター/居酒屋ライター/他
1978年東京生まれ。1990年代後半より音楽活動を開始。酒好きが高じ、現在はお酒と酒場関連の文章を多数執筆。「若手飲酒シーンの旗手」として、2018年に『酒の穴』(シカク出版)、『晩酌百景』(シンコーミュージック)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)と3冊の飲酒関連書籍をドロップ!
Twitter @paricco
最新情報 → http://urx.blue/Bk1g
 
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