マックとケンタッキー
酒場ライター・パリッコのつつまし酒

agarieakiko

2019/03/01

美味しいでしょうよ

 

 

たまに、「マックって美味しくないからきら~い」なんて言ってる人と出会うと、その場で卒倒しそうになるほど驚いてしまいます。

 

 

いやいやいや、マック、美味しいでしょうよ!

 

 

たぶんそういう発言をする人は、マクドナルドを「別のどこかと比べて」美味しくないと言ってるんじゃないかと思うんです。

じゃあどこと比べてるの? まさか代官山あたりの、こだわりのブランド和牛を使った手ごねハンバーグを自家製パンで挟んだ、行列の絶えないハンバーガー屋さん? そりゃあ純粋に旨味含有量だけ比べたら、そっちのほうが美味しいに決まってる。けどさ、値段もぜんぜん違うでしょうよ!

 

 

思わず激昂してしまいすみません。ただ、もう一度よく味わってみてください。マックのハンバーガーの、ちょっぴりジャンクでしょっぱいうまさ。甘酸っぱいケチャップをまとった、若干モソッとしたビーフパティ。その存在を初めて僕に教えてくれた、ピクルスのアクセント。しゃりしゃりとした玉ねぎの歯ざわり。「マックの匂い」としか表現できないあの香りが口いっぱいに広がる多幸感!

 

誰がなんと言おうと、僕にとって大変なごちそうなんです。それがたったの100円で買えてしまうというんだから、ありがたいという他ありません。

 

 

2通りのマック晩酌

 

 

もちろん、マックのハンバーガーをつまみに飲むのも大好き。

店舗にはお酒が置いてないので必然的に持ち帰りになるわけですが、例えばお花見の時なんかにハンバーガーを10個くらい買って差し入れすると、唐揚げ、餃子、メンチカツの、3大「野外飲みで人とかぶりがちおつまみ」とは一線を画す存在感を発揮し、「ひさびさに食べたけど、うまいな~」なんつって、想像以上に好評を得られますので、ぜひお試しください。

 

僕の「マック飲み」の定番は2通りで、「チーズバーガーカスタム晩酌」と「倍ダブルチーズバーガー晩酌」。

 

まずは、最愛のメニュー、チーズバーガーをつまみにする飲みかたから説明していきますね。

 

 

この場合、一度の晩酌で、バーガー2個がベスト。

で、なくてはならないのが、オリジナルトッピング。

「今夜は家でマック晩酌だ」、そう決意した帰り道は、スーパーにも寄って、トマト、レタス、酢漬けのハラペーニョ、マヨネーズなどのうち、家の冷蔵庫で在庫切れしているものを買って帰ります。つまり、マックのハンバーガーに勝手にあれこれトッピングして、グレードアップしてしまおうというわけ。

 

 

家に着き、準備万端整ったらとりかかりましょう。

目の前の大皿に、チーズバーガーをふたつ並べます。左側のバーガーのバンズを一度はずし、スライスしたトマトとレタスを挟みます。実際に食べればわかってもらえると思いますが、この工程により、定価130円のチーズバーガーが、ちょうど3倍、390円相当の美味しさになります。
次は味変バージョン。同様にトマトとレタス、こちらにはさらに、みじん切りにしたハラペーニョをたっぷりと混ぜ込んだマヨネーズ「ハラペーニョマヨソース」も塗りたくってしまいます。実際に食べればわかってもらえると思いますが、この工程により、定価130円のチーズバーガーが、ちょうど5倍、650円相当の美味しさになります。

肝心のお酒は、やっぱりビールが合う。なるべく大きめなグラスを用意して、きめ細かい泡が生じるように丁寧に注いだら、すべての準備は完了です。

 

まずは左の「レタトマチーズバーガー」を一口。間髪入れず、ゴクゴクゴク~! っとビールを喉に流し込めば、どこかウエストコーストの風をも感じさせる幸福感が、一気に押しよせます。

そのまま2~3口食べたところで、ちょっとはしたないですが、右の「レタトマハラペーニョマヨチーズバーガー」のほうにもかぶりついてしまいましょう。みっともないので人目のあるお店ではしづらいけれど、自宅だからこそ思う存分できる、交互食べ。こちら、マヨネーズの酸味とまろやかさ、ハラペーニョの辛味が加わり、ビールを飲むペースも加速します。

「そんなに美味しいなら、どっちも5倍バーガーにして食べればいいじゃん」と思われた方います? いやいや、この多様性がいいんじゃないですか! 僕と同様、いやしんぼうな酒飲みの方ならば、この気持ち理解してくれますよね?

 

「ダブルチーズバーガーダブル晩酌」についても、工程はほぼ一緒なんですが、こちらは2個だと多いので、1個で十分。

 

……もしかして「倍ダブルチーズバーガー」をご存じない方いますか? 念のため説明しておきますと、昨年導入されたマックの新しいメニューに「夜マック」というものがあります。17時以降限定で、レギュラーメニューのバーガー類のパティを2倍にできるという、神サービス。

ハンバーガーなら200円でパティが2枚。チーズバーガーならそこにチーズも加わって、230円。他にもさまざまなバーガーに応用できるんですが、僕は一択で「ダブルチーズバーガー」。これを倍にするということはつまり、下からバンズ/パティ/パティ/チーズ/パティ/パティ/チーズ/バンズとなって、チーズが2枚にハンバーグが4枚という、モンスター級のハンバーガーが誕生してしまうということです。

こいつの満足感が果てしなく、それでいてお値段たったの420円!

 

 

倍チーズバーガーにはオリジナルトッピングはせず、肉々しさの洪水に溺れかけながら飲むのが好き。

あ~んとめいっぱい口を開け、ザクッと縦にバーガーを掘削すると、口中すなわちマック天国。モグモグモグモグと存分にこの幸福感を楽しんだら、やっぱり大きめのグラスに注いだビールをぐいぐいやる。

ザ・パーリナイ。

 

 

毎月28日は

 

 

ところで、毎月28日は何の日かご存じですか? そう鶏の「にわ」にちなんだ、ケンタッキーフライドチキンの「とりの日」ですね。月に一度だけ、オリジナルチキン4ピースにクリスピーチキンが3ピースも入った「とりの日」パックが、通常価格より400円もお得な、1000円ぽっきりで買えてしまう、スペシャルデー!

 

 

ケンタッキーのフライドチキンって、食べている間ずっと「こんなにうまいものがこの世にそ存在することはおかしい。もしかしてこれ、宇宙人が残したオーパーツなのでは……?」などと考え続けてしまうほど、ちょっと常識の範疇を超えた美味しさですよね。

ぶっちゃけ僕、「ケンタッキーが気軽に買える世の方は、ギリ平和」という持論すら持っています。逆にこの先、日本がケンタッキーを気軽に買えないような世の中になってしまったら、これはもう、いよいよ完全にアウトなんじゃないかとすら。

 

 

そんな幸せの結晶がお得に買える毎月28日は、当然「ケンタッキー晩酌」の日となるわけで、毎月この日だけは、なるべく夜に飲み会や仕事の予定を入れないようにしているほど。

帰り道、急ぎ足で駅前のケンタッキーに寄り、行列に並ぶ同志たちに心の中で「良いとりの日を!」と挨拶をしつつ持ち帰る、ほんわかと温かい宝石箱。かぐわしき芳香はその箱の中にとどまりきらず、テーブルに乗せると、もはや理性崩壊。夫婦で分けるので、オリジナルチキン2ピースとクリスピーチキン1.5ピース。これに思いっきりかぶりつきながら飲むビールのうまさといったら!

 

 

「うまみ」に続く新しい味、「マック味」と「ケンタッキー味」

 

 

それにしても、マックやケンタッキーって、本当に他に代替の利かない稀有な存在だと思います。

 

 

先日入ったとある豚肉料理専門の酒場で、オリジナルのソースがかかった「豚のフリット」を頼んでみたところ、同席者満場一致で「これ、マックの味だ!」となりました。マックじゃない場所で食べた料理にマックっぽさを感じると、なぜだか妙に嬉しい。あの感覚はなんなんですかね?

 

 

タブラ奏者のユザーンさんに、出身地である川越の街を案内してもらいながら飲み歩いたことがあります。その時「ここの肉屋のレバ唐が美味しいんだよ!」と教えてもらい、買い食いしてみたんですが、それがかなりの「ケンタッキー味」だったんですよね。「うわ、これケンタッキーだ! 絶対また買いにこよう!」なんて盛り上がったんですが、よく考えると、ケンタッキー味を求めているならばケンタッキーに行けばいいわけで、つまりは「マック味」「ケンタッキー味」というのはそれだけ強烈な独自性を持った、魅惑の美味ということでしょう。

 

 

どちらも毎日食べるには刺激が強すぎるので、月一くらいがちょうど良く、ビールに抜群に合うところも共通していますね。

酒場ライター・パリッコのつつまし酒

パリッコ

DJ・トラックメイカー/漫画家・イラストレーター/居酒屋ライター/他
1978年東京生まれ。1990年代後半より音楽活動を開始。酒好きが高じ、現在はお酒と酒場関連の文章を多数執筆。「若手飲酒シーンの旗手」として、2018年に『酒の穴』(シカク出版)、『晩酌百景』(シンコーミュージック)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)と3冊の飲酒関連書籍をドロップ!
Twitter @paricco
最新情報 → http://urx.blue/Bk1g
 
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