憧れのランチ飲み
酒場ライター・パリッコのつつまし酒

bw_manami

2019/03/15

 

ドリンクバーに白ワイン!?

 

私ごとですが、2019年2月末日をもって、15年以上勤めていた会社を退職しました。

経緯は省略しますが、これまでは副業だった、今まさに書いているようなお酒に関する文章などのお仕事が、これから本業となります。つまり自分の人生が、「酒一本で生きていく」という、とんでもない事態に突入してしまったわけでして、引き続き何卒、よろしくお願いします。

 

ところで、長く通った職場は池袋だったのですが、その近所でしばらく前に見つけ、以来ずっと気になっていた看板がありました。

それは、数年前にできた「WACCA」という商業施設の1階、「キリンシティプラス」というお店のランチの看板で、どうやら食べ放題のサラダビュッフェが売りのよう。お昼ご飯を探していて「サラダ」や「ビュッフェ」といったキーワードに惹かれて選ぶということがなく、長らく素通りしてしまっていたのですが、ある日突然、その看板の中からパッと目に飛びこんできたフレーズがありました。

 

「ドリンクバーでは白ワインも飲み放題!!」

 

五度見しましたよ。この信じがたくお得な情報が、下のほう~に、さらっと書いてある。

もし僕がこのポスターのデザインを任されたならば、白ワイン飲み放題を全面的に打ち出し、すみっこにおざなりに「サラダもあるよ」みたいになってしまいそうなもんですが、お店がら、上品な客層に合わせてのことなのでしょう。実際、お昼時に中をのぞいてみると、連日大盛況のようです。

 

しかしながら、「試しに明日行ってみるか」とはならなかった。

だって、ドリンクバーに白ワインがあるんですよ? 飲まずに済むはずがないじゃないですか。こんな僕でも会社員時代は、「仕事中に酒を飲んではいけない」という最低限の社会通念くらいは持ちあわせていました。なので、気づいてしまってからは毎日のように、お昼休みに断腸の想いでその前を素通りし、立ち食いそばかなんかをすする日々を送っていたわけです。

 

ところが先述のように状況が変わり、これからは平日の日中に何をするのも自己責任の身となった。もちろん、毎日朝から晩まで、水の代わりにガブガブと酒を飲んでやろうとは思っていません。が、長く勤めた会社を退職した記念に、一度くらいは、あの店で昼間っから白ワインで酔っ払ってもバチは当たらないのでは? そう考えるのは当然の流れでしょう。

 

ついに扉の向こう側へ……

 

2019年3月1日、金曜日。つまり会社を辞めた翌日、僕はまた、通い慣れた池袋の街にいました。無論「キリンシティプラス」でランチ飲みするために!

 

「ついにこの扉の向こう側へ歩みを進める時がやってきたか……」そんな気持ちで重厚なガラス製のドアを開け、店員さんに自分ひとりである旨を伝えます。案内の途中、横目でちらりとドリンクバーに目をやり、確かに白ワインがあることを確認。通されたテーブル席のソファ側に、サラダビュッフェの島が見渡せるように座り、一息ついたところでランチメニューを検討していきましょう。

こんなシステムになっているようです。

 

・ランチは90分間サラダ食べ放題、ドリンク飲み放題のサラダビュッフェが基本で、価格は980円
・そこにご飯ものやパスタ、肉料理などのメインを加えたメニューも豊富で、「塩だれ豚丼」の1180円から、期間限定の「鶏×菜花×マッシュルームのバターソテー」の1580円まで、全体的にリーズナブル
・ご飯ものやパスタ以外で「選べるセット」の表記があるメニューには、「ライス」「パン」「トルティヤ」「ランチビア」の中からひとつを追加できる
・帰りに、専用のフタ付き紙コップに1杯、好きなドリンクを入れて持ち帰っても良い

 

おいおいおい、これは想像以上だぞ……。

だってだって、気づきましたよね? 選べるセットの中にあるランチビアの存在! つまり、もともと飲みまくるつもりだった白ワインに加え、一杯目の生ビールまで追加料金なしで飲めてしまうということですよ!

 

熟考の末、「こがね鶏の竜田揚げ おろしポン酢」とサラダビュッフェのランチを注文。サイドはもちろんランチビア。これも数種類から選べるのですが、大好きな「キリンラガー」を選択。以上でトータル、どう考えてもお得な、¥1180。

 

サラダ&白ワイン天国

 

ビールが届くのも待ちきれず、さっそく木製のボールを手に、サラダビュッフェを偵察します。レタスや水菜、キュウリなどのグリーン系、目に鮮やかなプチトマトやラディッシュ、酒のつまみに嬉しすぎるたっぷりのコーンもあれば、ニンジンやカブなどの根菜類は、軽くボイルされている手の込みよう。さらに嬉しいのが、マカロニサラダとトマトソースペンネの存在。これ、サラダの範疇超えてない? そんなにサービスして大丈夫? ってなもんで、他にもとにかく種類豊富な野菜類を、嬉々として全種類をお皿に盛りつけます。ドレッシングも数種類用意されていますが、まずはさっぱりとしたレモンドレッシングから始めることに。

 

席に戻ると、お! こんもりと泡の盛り上がった、美しいビールがテーブル上に鎮座しています。

うやうやしく手に取り、窓の外の陽光を透かしてしばし眺めたのち、「では祝杯」とばかり、一気にごくり! さすがはキリンシティ、人生最高にうまいビール記録、更新です! まぁ僕の場合、この記録はけっこう頻繁に更新されるんですが。

 

サラダはどれも新鮮で、文句なくうまいです。生野菜を無心にバリバリとむさぼる幸せって確実にありますよね。爽やかなレモン風味に染まった多種多様な野菜を次から次へと口に運び、ビールで流し込む。あぁ、なんだか健康的な気すらする、最高のランチ飲みだ。

 

そんなこんなで1ターン目を終えたところで、竜田揚げがやってきました。鉄皿に、大ぶりの唐揚げサイズの鶏肉が4片、上にはしっとりとポン酢を吸った大根おろしと小ネギ。さらに嬉しいのが、サイドのポテトサラダの存在。ここでまた頼もしいおつまみが追加されますか。

 

いそいそとドリンクバーへ向かい、白ワインをグラスになみなみと注いで戻ると、2ターン目のスタート。竜田揚げ1片をきっちり2口ずつと決めて食べ進め、合間に白ワインをぐびり。ほんのりとした甘酸っぱさが、昼下がりの空気感に合いすぎるな……。

 

サラダのラインナップは順次入れ替わっているようで、3ターン目のピックアップに向かうと、それまでなかった野菜類がけっこう追加されています。この中から無意識に、キャベツソテー、ゆでモヤシ、コーン、フライドガーリック、それぞれたっぷりを山盛りにし、オリーブオイルと塩コショウで味付けして席に帰ったんですが、よくよく見るとこれが、まるでラーメン二郎! 上品にランチを楽しむ人々の中で、自分のテーブルだけが間違い探し状態なのがちょっと恥ずかしくも、お酒のつまみとしての実力は言わずもがなですよね。

 

さて、もうそろそろお腹いっぱい。が、食べ放題となるとついよくばってしまういやしい自分は、これを最後と決めて4ターン目に向かいます。

 

するとなんと、キノコ類がたっぷり追加されてるじゃないですか! これは嬉しい。キノコってこうやって野菜類と並ぶと、ごちそう感と高級感が一段上な気がしますね。ボイルされたエリンギとシメジをお皿にたっぷり合り盛りにし、オニオンドレッシングであえれば、また新鮮な気分で白ワインと向きあえる、小粋な一皿の完成です。

 

最終的に、計5杯のグラスワインを飲み、締めにアイスコーヒーも飲み、それから忘れちゃいけない、テイクアウト一杯分サービス。紙コップに、たぶん禁止事項ではないはずなんだけど、どこか後ろめたいことをしている気分になりつつ白ワインを注ぎ、持ち時間を半分の45分も残し、もはや何も食べられないし飲めません。

というわけで、ごちそうさまでした!

 

ほぼほぼサラダで胃がはちきれそうになるという貴重な体験と、飲み放題の白ワインによる幸せな酔い心地。手にはお土産のワインまで。あらためて、これで¥1180というのはどう考えてもお得すぎる。

世の中には、まだまだ自分の知らない夢のような酒スポットがあるもんですね。

 

これからもよりいっそう、自分なりのつつまし酒を求めていきたい。人生の節目に、今一度初心に戻してもらえたような、憧れのランチ飲みでした。

酒場ライター・パリッコのつつまし酒

パリッコ

DJ・トラックメイカー/漫画家・イラストレーター/居酒屋ライター/他
1978年東京生まれ。1990年代後半より音楽活動を開始。酒好きが高じ、現在はお酒と酒場関連の文章を多数執筆。「若手飲酒シーンの旗手」として、2018年に『酒の穴』(シカク出版)、『晩酌百景』(シンコーミュージック)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)と3冊の飲酒関連書籍をドロップ!
Twitter @paricco
最新情報 → http://urx.blue/Bk1g
 
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