醤油漬け
酒場ライター・パリッコのつつまし酒

 

青唐辛子

 

夏が旬の青唐辛子。早いものだと5月の終わりくらいからスーパーなどで見かけるようになります。これを見つけるとどうしても作りたくなってしまうのが「青唐辛子の醤油漬け」。
作りかたは読んで字のごとくで、細かく輪切りにした青唐辛子を適当な空きビンに詰めこみ、ひたひたになるくらいの醤油を注ぐだけ。冷蔵庫で長期保存ができ、徐々に味がなじんでこの上ない辛味調味料に成長していきますが、気の早い僕は、漬けた翌日にはもう食べはじめてしまいます。
おすすめの食べかたは、まずは「そのまま」ですかね。当然激辛なので小さなかけらを一粒ずつ。奥歯でゆっくりと圧力をかけてゆくと、カリッと噛み砕かれた瞬間に青々とした香りが口中に広がり、次に起爆性の高い辛みとしょっぱみ。余韻も早いので、慌ててグラスに注いだビールを喉に流し込めば、「夏が、きたんだな……」と実感せざるをえません。あ、僕は極度の辛いもの好きなので、興味を持たれた方で真似する際は、ぜひ慎重に。
もちろん調味料としても万能で、醤油の代用としてとりあえずなんに混ぜても、お好きな方にはたまらないと思います。僕が特に好きなのが焼肉との相性で、タレにたっぷりと散らしておいて、焼けた肉1枚に対し1粒ずつ乗せて食べると、ただでさえうまい焼かれた肉を、味と食感両面からサポートしてくれてもう最高。
長期保存ができるといいつつ、あまりに美味しいので2週間くらいで使い切ってしまい、青唐辛子が市場に出ているうちは何度か作ることになるのですが、夏も後半にさしかかり、ちょっと熟して黄色~オレンジ~赤いものが混ざってきた頃なんかは、見た目のカラフルさもあいまって、さらに晩酌がはかどってしまいます。

 

ニラ

 

青唐辛子の醤油漬けの季節になると、「そうだ、あれも作っとくか」と思い出すのが、ニラの醤油漬け。こちらは細かく刻んだニラに、醤油と、煮切った(チンでもOK)みりん少し、スライスしたニンニクと鷹の爪も少し、仕上げにゴマ油もちょろりと足してしまえば、もはやどこに酒が進まない要素があるんだっていう怪物の誕生です。
これまたなんにでも合うんですが、究極は冷奴かなぁ。豆腐は木綿より絹が気分。まったり食感の絹豆腐に混ざり合う、シャキシャキとしたたっぷりのニラ。誰ひとりとしてサボっている者のいない、裏方たちの良き仕事。
夕方に一雨きて少しだけ涼しくなった夏の夜、窓を開けて蚊取り線香をたき、普段は興味のない野球中継かなんかを小さめの音量で流しつつ、よ~く冷えたビールとニラ醤油奴。そんなパーフェクトなシチュエーションは滅多に訪れるもんじゃないですが、もし巡り会えた場合、日本に生まれたことを心の底から感謝したくなります。

 

ちなみに先ほど「醤油と煮切ったみりん」と書きましたが、僕の場合はこの組み合わせを、以前「我が家の5大調味料」の回で紹介した、ヒガシマルの「牡蠣だし醤油」ひとつで代用しています。
また、上記2種類の醤油漬けは、ちょっと面倒ですが、漬け込むビンを事前に煮沸消毒しておくことも忘れないようにしましょう。

 

 

キュウリ

 

もっと簡単な醤油漬けで好きなのがあって、何年か前にどこだったかのお店で出てきて、その美味しさに感動した「キュウリのニンニク醤油漬け」。これは朝作っておけばその日の夜に食べごろに浸かります。
食べやすい大きさに切ったキュウリと、ニンニクスライス&刻んだ鷹の爪少しを食品用のビニール袋に入れ、ニラ醤油同様、醤油+みりん(僕の場合は牡蠣だし醤油)を加えて口をしばっておけばOK。ポイントは、キュウリを縞目にむいておくこと。味の染み込みが促進されつつ、たまらなくそそる見た目になります。
合わせたいのはこれまたビールかなぁ。どうも、青々モノと醤油漬けの組み合わせって、夏! ビール! って方面に偏りがちになってしまいますね。

 

卵黄

 

ちょっと趣向を変えて「卵黄の醤油漬け」なんてのも、簡単な割にかなりのごちそう。
作りかたがどんどん簡単になっていきますが、おちょこほどの大きさの器に卵黄を入れ、浸るくらいの醤油を注いで半日くらい置くだけ。火を通していないのにねっとりとレアな質感に固まり、卵黄のまったり濃厚な味わいが増幅され、醤油の塩気もあいまって、日本酒あたりが止まらなくなります。
これをアボカドの種をくりぬいた穴にポトリと落としたりなんかしちゃったらもう……。

 

 

刺身

 

寿司ネタの定番に「ヅケ」ってもんがありますが、あれも醤油漬けの一種ですよね。
キハダマグロやビンチョウマグロなど、本マグロよりは旨味が劣るとされつつもリーズナブルに手に入るお刺身。器に詰め込んで、牡蠣だし醤油をこれまたひたひたになるくらいに注ぎ、10分も待てば、簡易的なヅケの完成。水気が適度に抜け、驚くほどねっとり食感になった切り身にワサビをちょんと乗せ、大葉でくるんで食べれば、もう他にはなんもいらねー! ってなもんです。これとチューハイの組み合わせこそ、僕の晩酌の黄金コンビ。

 

よし、今夜は醤油漬け晩酌に決定だな。

酒場ライター・パリッコのつつまし酒

パリッコ

DJ・トラックメイカー/漫画家・イラストレーター/居酒屋ライター/他
1978年東京生まれ。1990年代後半より音楽活動を開始。酒好きが高じ、現在はお酒と酒場関連の文章を多数執筆。「若手飲酒シーンの旗手」として、2018年に『酒の穴』(シカク出版)、『晩酌百景』(シンコーミュージック)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)と3冊の飲酒関連書籍をドロップ!
Twitter @paricco
最新情報 → http://urx.blue/Bk1g
 
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