気軽にたしなむウイスキー
酒場ライター・パリッコのつつまし酒

 

ウイスキーの美味しさはわかりやすい

 

ウイスキーと聞くと「敷居が高そう」と感じる方は多いかもしれません。が、僕は美味しさをじっくりと味わいながら飲むお酒として、ウイスキーほどわかりやすいものはないと思っています。むしろ、日本酒、焼酎、ワインなどのほうがよっぽどわからない。その場その場で美味しいとは感じても、味の特性などをはっきりと言語化することが難しいし、それゆえ次に飲むときまでに忘れてしまう。だから一向に詳しくならない。その点ウイスキーは、産地や銘柄ごとの差がすごくはっきりとしていて、さらに、きちんと作られたウイスキーって、それはそれはわかりやすく美味しいんですよね。
なので、僕の晩酌において、チューハイ、ビールに次いで登場頻度が高いのは、意外にもウイスキーだったりします。

 

とはいえ僕も、どこまでも続くウイスキーの深淵、何十年も熟成させた高級ウイスキーの世界をじっくりと覗き込んだわけではありません。そんな余裕、経済的にもないし。だけど、庶民派ウイスキーとして名の知られる「ブラックニッカ」の2、3倍の値段のウイスキーを思い切って買ってみるだけで、その味わい深さに驚くことは間違いない。
今回は、少しでも同好の士が増えてくれたら楽しいな~という思いのもと、気軽に楽しむウイスキー超入門編について書いてみようと思いますので、情報に補足がなかったり、くくりがアバウトだったりしても大目に見てくださいね!

 

 

ウイスキーの基本の基本

 

大前提として、ウイスキーがどんなお酒かをざっくりと説明すると、大麦、ライ麦、トウモロコシ、麦芽などを原料とする蒸留酒ということになります。原料ごとに大まかに分類するとこんな感じ。

 

・モルト・ウイスキー:大麦麦芽(モルト)のみを原料とするもの
・グレーン・ウイスキー:トウモロコシ、ライ麦、小麦などの穀物を主原料に、大麦麦芽を加えて糖化・発酵させたもの
・ブレンデッド・ウイスキー:モルトとグレーンをブレンドしたもの
・その他:トウモロコシを主な原料とする「コーン・ウイスキー」とかいろいろ

 

また、生産地をもとにした、世界の五大ウイスキーなんてのもあります。

 

・スコッチ:イギリスの「スコットランド」で作られたもの
・アイリッシュ:アイルランドで作られたもの
・アメリカン:アメリカで作られたもの
・カナディアン:カナダで作られたもの
・ジャパニーズ:日本で作られたもの

 

この他にも、世界中にはたくさんのウイスキーがあります。

 

 

スコッチウイスキーのおもしろさ

 

「スコッチ」ってよく聞きますよね?
スコッチとは先述の通り(詳しくはさらに厳密な基準がありますが)、イギリスはスコットランドで作られたウイスキーのこと。歴史が古く、世界でもっとも有名なウイスキーといえるかもしれません。で、このスコッチウイスキーの蒸留所ごとの味わいの違いが、わかりやすくておもしろい。

 

例えば「スペイ川」流域に密集する蒸留所で作られる「スペイサイド・モルト」なら、フルーティーで優雅、飲みやすいものが多いのが特徴。代表的な銘柄のひとつ「ザ・グレンリベット 12年」ならば、700mlのボトルが安くて3,000円台くらいから手に入ります。ストレートでじっくりと味わってみると、花の香りや蜂蜜のような甘みを感じて、大変にロマンチックです。
また、僕の大好きな「アイラ・モルト」は、スコットランドの中でも「アイラ島」で作られたものを指し、麦芽を乾燥をさせる際、島独特の「ピート(泥炭)」とよばれるものを燃やして使うことから、他にない風味のウイスキーに仕上がります。わかりやすくいえば「煙たい」「潮の香りがする」「薬くさい」という感じ。よく「正露丸の匂い」と例えられる「ラフロイグ」なんかがそれです。ゆえに、好き嫌いは超分かれるわけですが。
僕の大好きなアイラの「ボウモア 12年」も、先ほどのグレンリベットと同じくらいの価格帯。それでいて、異国の潮風を感じるスモーキーさに加え、どこかフルーティーでもある本格的な味わいが楽しめるのだから、心から安いと思います。

 

あ、僕はそもそも良いウイスキーは、ストレートでちびちびと舐めるようにじっくり味わい、チェイサーの水と交互に飲むのが一番好きです。それで度数は40度とかですからね? ほらね、1本買ってみてもいいかなって気になってきたでしょ?

 

 

シングルモルトとブレンデッド

 

ちなみにこれまでの話は、ひとつの蒸留所で蒸留されたモルトウイスキーのみをビン詰めした「シングルモルト」について。ストレートで飲んでしみじみと美味しい銘柄は、シングルモルトに圧倒的に多いです。
対してより多く世に流通しているウイスキー「ブレンデッド」は、複数を合わせたシングルモルトにグレーンウイスキーを加えて、より飲みやすく味を調整したもの。冒頭に名前を出した「ブラックニッカ」もそうですし、「バランタイン」とか「ホワイトホース」とか「ジョニーウォーカー」とか、有名な銘柄はいくらでもあります。
価格帯もリーズナブルなものが多く、1000円くらいからいろいろあるので、あれこれ試してみるのが楽しいのですが、やはりストレートで飲むよりは水割りやハイボールに向いているものが多くなりがちですね。

 

ブレンデッドの中でもストレートで飲んで美味しいお酒は、嬉しいことにジャパニーズウイスキーに多いと思います。あくまで個人的に。ニッカの「竹鶴」や「スーパーニッカ」は費用対効果を考えれば世界でもトップクラスの味だと感じますし、意外な大穴なのが、キリンの「ロバートブラウン」。安くて1000円台前半で手に入るとは思えないまろやかでフルーティーなバランス感覚は、じっくりと味わう醍醐味を最も気軽に感じられるウイスキーのひとつであること間違いないでしょう。

 

世界中に数あるウイスキーの中でも僕の最愛の1本は、ニッカのブレンデッド「フロム・ザ・バレル」。
モルトとグレーンをブレンド後、もう一度樽詰めして再貯蔵する「マリッジ」という手法をとり、加水を最小限にした「樽出し」にこだわることにより、力強い味や香りを感じさせつつも、51度という高いアルコール度数を感じさせない飲みやすさが特徴。って、これはまぁ商品説明の受け売りなのですが、「まさにその通り!」な美味しさなんです。
口に含むと、濃厚にして繊細な、「この質量の中にこんな密度で閉じ込められるもん!?」という旨味が広がります。目をつぶり、じっくりじっくり、長い余韻を含めてその世界に浸る。浸って浸って、よし、ここだ! という瞬間がやってきたら、よく冷えたチェイサーの水を飲む。甘い余韻がもう一度広がって、スーッと爽やかに消えてゆく……。ほんの一口の中で繰り広げられるストーリーが多すぎるにも関わらず、ちゃんと伏線回収までしてしまう。職人の匠の技を存分に感じ取れる、本当に素晴らしいウイスキーだと思います。

酒場ライター・パリッコのつつまし酒

パリッコ

DJ・トラックメイカー/漫画家・イラストレーター/居酒屋ライター/他
1978年東京生まれ。1990年代後半より音楽活動を開始。酒好きが高じ、現在はお酒と酒場関連の文章を多数執筆。「若手飲酒シーンの旗手」として、2018年に『酒の穴』(シカク出版)、『晩酌百景』(シンコーミュージック)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)と3冊の飲酒関連書籍をドロップ!
Twitter @paricco
最新情報 → http://urx.blue/Bk1g
 
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