街のパン屋のパンで飲む
酒場ライター・パリッコのつつまし酒

bw_manami

2019/06/14

 

いろとりどりの惣菜パン

 

パン、特に惣菜パンが嫌いではないのですが、2つも食べれば満腹になってしまうので、酒飲みとしてはあんまり食べる機会がありません。ところが最近、パン屋さんに行くことが増えました。というのも、2歳になる娘がパンが大好物なんですよね。特に食パンの白い部分。贅沢にも耳はいらないと言ってこちらへ押し付けてくるのですが。
娘の朝食作りは僕が担当することも多く、せっせと焼き魚、ご飯、味噌汁なんかを用意しても、気分によってはまったく食べてくれない日もある。そんな時に「じゃあパン食べる~?」と聞くと、気分が変わるのかパクパク食べてくれたりして、これがかなり助かるんです。なので、人生の中でパン屋へ行く頻度が急に上がったというわけ。

 

よく行くのが、地元の石神井公園にある「ピーターパン」。子供時代、いとこがこの近所に住んでいたのでよく遊びに来ていたんですが、建物は変わったものの、確かにその頃からあった、昔ながらの街のパン屋さんです。
で、頻繁に通うようになるとどうしても気になってくるのが、棚に並ぶ色とりどりの惣菜パンたちですよ。パン屋のハンバーガーの、専門店とは別物なんだけど妙に美味しそうなあの感じ。まい泉のものに肉の厚みは及ばないけれど、そのぶん破格なカツサンドの好ましい存在感。マヨネーズとコーンを乗せて焼き上げたコーンパンのしっとりとした艶めき。どれもこれも魅力的で、よし、一度じっくり腰を据えて惣菜パンと向き合ってみるか。そういう気持ちがいよいよ高まってきたので、先日、実行してみました。

 

 

パンにはワインな気がして

 

訪れたのは平日の16時くらい。時間が遅めなこともあってか、あれ? 意外と種類が残ってないなぁ。う~ん、今夜はハンバーガーとカツサンドあたりで晩酌したかったんだけど……。じゃあ諦める? いやいや、こちらの「パン晩酌」の気分は最高潮に盛り上がってしまっています。あるものの中から選んでいきましょう。
買ってみたのは「ゴボウサラダパン」(120円)、「コロッケパン」(140円)、「フロマージュ」(160円)の3つ。安い。「フロマージュって何……?」って思われた方、追って説明していきますんで落ち着いてください。

 

合わせるお酒は帰りにコンビニで買っていきましょう。なんとなくだけど、普段そんなに飲むほうじゃないワイン、それも「白」を合わせたいような気分。いつもとは趣向の違うおつまみがそうさせるのでしょう。ワインのことはよくわからないのですが、手頃なサイズとお値段のチリワイン「ANDES KEEPER SAUVIGNON BLANC」というのにしてみました。全幅の信頼を置いている「セブンプレミアム」の商品なので間違いないでしょう。それから、フロマージュの説明書きに「ビールのおつまみにも!」とあったので、500mlの発泡酒も1本。

 

 

フロマージュのポテンシャル

 

その夜、買ってきたパン3つを大皿に並べ、よ~く冷やしておいたビール(発泡酒だけど)とワインを冷蔵庫から取り出したら、いよいよパン晩酌の始まりです。

 

まずはビールをゴクゴクっとやりたい。となると、パンはフロマージュからか。
フロマージュとはフランス語でチーズのことだそうで、つまり、チーズパン。自分の手のひらより一回り大きいくらいの平べったいフォルムで、表面がカリカリに焼き上げられたチーズで覆われています。
ゆっくりとかじってみる。あ、かてー、超硬い。グッと歯に力を入れないとかじり取れない。グッ、カリッ、あ、いけた。モグモグモグ。おー、これはいいな。表面はカリっと香ばしいチーズの食感ですが、パン本体はピザの耳に近い。しっかりとした噛みごたえがあって、味の濃い、力強い旨味がジュワッと広がります。コショウの風味も良いアクセントだし、ところどころにナッツが練りこまれていて、これがコロリと口へ入ると、食感と風味にさらなる広がりが出る。絶妙。パンの凹み部分にチーズがたっぷりと流れこんで固まっている箇所があり、そこがまたごほうび感あっていいんですよ。ビールとの相性? そりゃあ最高でしょう。
フロマージュ、すごくいい発見だったなー。言ってしまえば食べにくい部類のパンですが、そこもまたポイントで、サイズも大きいから、つまみとしてものすご~く長持ちする。それでこの値段。ものすごく優秀だ。また買おう。

 

 

やっぱりいいな、街のパン屋さん

 

フロマージュを一気食いするのは無理があるのでいったんお皿に戻し、お次はゴボウサラダパンいきましょう。
こちらは対照的にふわっふわ食感。まず、パン本体が甘くてとても美味しい。そのステージの上でそれぞれの魅力を輝かせる、シャキシャキとしたゴボウの香り。ゴマの風味も強烈に効いている。追い打ちをかけるのはマヨネーズか。あぁ、完璧。
残りのビールが一瞬でなくなり、ワインに移行すると、これがまたいいんですよ。複雑濃厚なパンの味わいを洗い流すような爽やかな甘酸っぱさの中に、ほんのりとスパイシーさも感じるような、自分にとっては非の打ち所のないワイン。パンに合わせたの大正解! 500mlで298円と、ものすご~くお安い1本なのですが、うん、大満足だ。

 

最後は街のパン屋さんの王道、コロッケパン。気取らずガブッとかぶりつきましょう。
モソモソしっとり、どこか野暮ったく、絶対に嫌いになれない懐かしい味。パンとジャガイモにしっかりと甘みがあり、ソースの酸味との絶妙なバランス感覚が嬉しい。それからキャベツの千切り。細かくパセリも混ぜてありまして、どこか大人っぽい風味とシャキシャキ食感がプラスされています。これまたいいなぁ、白ワインに……。

 

 

以上、惣菜パン3つ、合計420円でこの満足感。あらためて、街のパン屋さんっていいですね。また、たまにやろうっと、パン晩酌。

酒場ライター・パリッコのつつまし酒

パリッコ

DJ・トラックメイカー/漫画家・イラストレーター/居酒屋ライター/他
1978年東京生まれ。1990年代後半より音楽活動を開始。酒好きが高じ、現在はお酒と酒場関連の文章を多数執筆。「若手飲酒シーンの旗手」として、2018年に『酒の穴』(シカク出版)、『晩酌百景』(シンコーミュージック)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)と3冊の飲酒関連書籍をドロップ!
Twitter @paricco
最新情報 → http://urx.blue/Bk1g
 
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