初めてのらっきょう漬け
酒場ライター・パリッコのつつまし酒

bw_manami

2019/06/21

 

らっきょうに関わる問題あれこれ

 

ついにあの大物をやっつけてやりました。というか、漬けてやりました。そう、らっきょうの話です。

 

僕、大好きなんですよね。らっきょうを、場末の酒場でぽりぽりとつまみながら飲むのが。ただ、らっきょう、お店の最安価格帯メニューでありつつ、ひとりで食べるには量が多い。5粒くらいでいいんですよ。12粒とかは多い。コストパフォーマンスが良すぎるんです。複数人で飲んでいるときに頼んでも、自分以外誰も手をつけず、けっきょく最後まで残っていたりする。いや、みんなから嫌われてるとかじゃなく、テーブル上にあれこれおつまみが並んでしまうと、こんどは存在感が極端に薄いんですよね。

となると、家に常備し、晩酌のときに好きな数だけ取り出してきてつまみにするのが理にかなっている。らっきょうを1日に5粒くらいずつ食べていると、血液がサラサラになるなんて話も聞きますし。

ところがです。市販のらっきょうには甘酢漬けのものが多い。これが、たまに食べるぶんにはいいんですが、毎日食べたいと思うほど好きな味でもないんですよね。たまに酒場で自家製の「醤油漬け」や「塩漬け」のらっきょうと出会うことがありますが、ああいうキリッとした方向性のものがより好ましい。つまり理想をいえば、自分で漬けるのが一番なんですよね。ずっとわかっていたんです。青唐辛子やニラの醤油漬けを作りつつ、「いずれらっきょうも漬けねば」とは思っていた。だけどさ、自分のような小童が相手にするには、ちょっと大物すぎるじゃないですか、らっきょう。

 

 

重い腰を無理やり上げる

 

毎年夏が近づくと、大袋に入った泥付きらっきょうがスーパーの店頭に並びはじめます。それを見るたび「今年こと漬けてみるか」と考える。いきなり買って帰ってもなんだから、家で漬けかたを調べてみてからにしようと、いったん帰宅する。漬けかたをネットで検索してみる。一般的な手順はこんな感じでしょうか。

 

・らっきょうの根と芽を切る

 ↓

・流水で洗い、薄皮をむく

 ↓

・1kgに対して約20gの塩をまぶす

 ↓

・水洗いして塩を流す(せっかくまぶしたのに!?)

 ↓

・しっかりと水を切る

 ↓

・鍋にたっぷりのお湯を沸騰させ、ザルに入れたらっきょうを10秒間浸す

 ↓

・水を切って冷ます

 ↓

・煮沸消毒した容器にらっきょうを入れ、浸るくらいのらっきょう酢を注ぎ、冷暗所で保存する

 

ね? 手順がややこしいんですよ。あと、らっきょうを漬ける巨大なビンを煮沸消毒するという事の重大さ! 結果おじけづいては、「来年こそは挑戦しよう」とあきらめるのを繰り返す人生を送ってきました。

ところが今年の僕、ついに「変わらなきゃ」と決意したんです。店頭に出だしたらっきょうを見つけ、えいやっと、まずは買ってしまうところから始めました。とりあえず500グラム。買ってしまえば漬けなきゃなんないですからね。あれこれ調べていたところ、尊敬する作家であり、発酵学の権威としても有名な、小泉武夫先生のこんなレシピが見つかりました。

 

「失敗なし! ビニール袋で漬ける『らっきょうの酢醤油漬け』」

 

出だしの「失敗なし!」が頼もしすぎるじゃないですか。小泉先生が言うんだから間違いない。続く「ビニール袋で漬ける」はどうです? 最大のネックだった巨大ビン煮沸問題を華麗にクリアしてくれています。そして最大のポイントが「酢醤油漬け」の部分。らっきょう漬けの基本が甘酢漬けである以上、いきなりの醤油漬けや塩漬けはハードルが高く、レシピも少ない。が、酢醤油漬けならば手を出しやすいし、そもそもすごく美味しそうです。よし、これで行ってみる。小泉先生、胸をお借りします!

 

 

「らっきょうの酢醤油漬け」の作りかた

 

材料は以下の通り。

 

・泥付きらっきょう:500グラム

・米酢:カップ3/4

・醤油:カップ1/2

・水:カップ1/4

・三温糖:85~90グラム

・ダシ昆布:5センチメートル程度

・輪切りにした鷹の爪:1/2

 

レシピに「甘味の調整はお好みで」とあったので、三温糖は85グラムにしてみたのですが、もっと少なくていいのかどうかは不明。今後の研究課題です。あと、辛いのが好きなので、鷹の爪は勝手に4倍にあたる2本使ってしまいました。

 

まずは買ってきたらっきょうをザルにあけ、ざっと水洗い。根と芽をハサミで切りとっていきます。実際やってみると、これがなかなか大変な作業。こういう作業のって、くりかえすうちに自分の中で効果的な方法を発見し、効率が上がっていったりしますよね。例えば、らっきょうをひとつ手に持ち、まずは根っこを切る。ひっくりかえして芽を切る。これを続けていると、らっきょうをくるっと回転させるときに使う左手の筋肉が疲労してきます。そこで途中から、らっきょうをひとつつかんで、根を切ったらポイ、根を切ったらポイをくりかえし、終わったらこんどは、芽を切ったらポイ、芽を切ったらポイのターン。これだけでもだいぶ楽になりました。

ぜんぶ終わったらこんどは薄皮をむいていきます。つるんときれいにむけるやつもいれば、薄皮っていうか外皮1枚がごっそりむけてしまうようなやつもいて、当初の500グラムがどんどん減っていっているような気がし、分量問題が発生していないかどうかが心配になってきます。

何はともあれ、これで下ごしらえは終了。ザルの中にこんもりと山になった、真っ白ピカピカ、ぷりぷりつるんとハリのあるらっきょうたちをあらためて眺めみたら、予想以上の充実感。

 

続いて漬け工程。鍋に醤油、水、三温糖、ダシ昆布、鷹の爪を入れて沸騰させ、米酢を加えてさらにひと煮立ちさせたら火を止めます。ここに、なるべく大慌てでらっきょうを投入。そうすることで味が染みやすくなるのと、殺菌効果が期待されるそうです。

自然に冷めたら、すべてを食品用のビニール袋に入れ、空気を抜いてしっかりと口をしばり、冷暗所で保存。僕の場合は、汁がもれるのがこわいので、さらにもう1枚のビニール袋で覆い、大きめのタッパーに入れてフタをし、冷蔵庫で保管することにしました。

あとは時々、思い出したように袋をもんでいれば、3週間~1ヶ月くらいで食べ頃に。保存は冷蔵庫で3ヶ月程度だそう。

 

下ごしらえに時間はかかりましたが、思ったよりぜんぜん大変じゃなかったなぁ。やっぱり、うだうだ考えているより行動することが大事ですね。

 

 

なんて爽やかなカップルなんだ

 

さて、かわいいかわいいらっきょうたちですが、現在2週間とちょっとが経過したところ。昨夜、さすがにがまんしきれず、ちょっと味見をしてみることにしました。

タッパーのフタを開け、タプタプと重みのあるビニール袋を慎重にほどく。するとぶわっと、滋養強壮に良さそうな、勢力のつきそうな、らっきょう特有の香りが鼻腔を直撃します。たまらん。

ひとつ取りだしてみると、ある部分はホワイトパール、またある部分は黒曜石のようで、それはまさに畑の宝石。「我が子は特別かわいい」なんていいますが、らっきょうにも当てはまるとは新発見でした。

 

いよいよひとつ、口に放りこんでみる。シャキ! っと鮮烈な歯ごたえ。あれ? 意外とちゃんと漬かってるじゃん。嫌な辛味はありません。あえて言われれば多少若いような印象があるのかもしれませんが、ぜんぜん美味しいぞ。

追加で3粒取り出し、あらためてよく味わってみましょう。パリリ、シャクシャク、皮に次ぐ皮の他層構造をはっきりと感じる食感が楽しい。そして、酢醤油味のバランスの良さ! 甘ったるくなく、酸味もほどよく、醤油の塩気と香り、唐辛子の辛味がおつまみとして最高です。

あわててロックアイスたっぷりのグラスに注いだプレーンのチューハイをグビーッ! ……おいおい、なんて爽やかなカップルなんだよ、君ら!

 

この夏は、自家製のらっきょうで晩酌がさらに充実しそう、というご報告でした。

酒場ライター・パリッコのつつまし酒

パリッコ

DJ・トラックメイカー/漫画家・イラストレーター/居酒屋ライター/他
1978年東京生まれ。1990年代後半より音楽活動を開始。酒好きが高じ、現在はお酒と酒場関連の文章を多数執筆。「若手飲酒シーンの旗手」として、2018年に『酒の穴』(シカク出版)、『晩酌百景』(シンコーミュージック)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)と3冊の飲酒関連書籍をドロップ!
Twitter @paricco
最新情報 → http://urx.blue/Bk1g
 
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