激安回転寿司飲みの極意
酒場ライター・パリッコのつつまし酒

bw_manami

2019/09/06

 

はま寿司が広げてくれた世界

 

はい。いきなりタイトルで「極意」なんて大きく出ちゃいましたけれども、そんなに大したことじゃないんです。まぁ聞いてください。
一言に回転寿司と言ってもいろいろありますよね。近年の回転寿司の世界、もはや誰もが知るところでしょうが、決して「安かろうまずかろう」ではない。例えば僕の住んでいる石神井公園という街には「回し寿司 活美登利」というお店があり、ハワイにまで支店のある人気チェーン。お手頃価格で驚くほど本格的なお寿司を堪能でき、土日の昼間にふらりと行ってみると、同じ考えの人々が大行列を作っていたりします。北海道発祥の回転寿司チェーンで、東京にも2店舗だけある「回転寿し トリトン」は、なんと平日の開店時間から行列ができるほどの大人気店。一度行ったことがあるのですが、北海道から直送される新鮮なネタの数々と、その惜しみないボリュームは感涙ものでした。
一方で、「スシロー」「くら寿司」「かっぱ寿司」なんかに代表される激安系チェーンというのもあります。回転寿司といえばこちらを思い浮かべる方のほうが多いかもしれませんね。どれでも1皿100円均一というような、庶民の味方のお寿司屋さん。

 

そんな回転寿司なんですけれども、実は僕、数年前まであまり行ったことがありませんでした。子供時代に家族で行ったという記憶もほとんどないし、大人になってからも、酒飲みって基本ご飯がいらないので、あまり外食の選択肢にあがらなかった。プラス、生活圏内にあまりお店自体がなかったというのも大きい。
変化が訪れたのは数年前です。家のまあまあ近所に、いまや回転寿司界を代表する巨大チェーンとなった「はま寿司」ができた。できたとなると気になるもんです。妻と「どんなもんだろうね?」と行ってみた。そしたらこれが、めちゃくちゃ楽しいんですよ! 以来、飲食店を選ぶ際の選択肢に回転寿司が追加されるようになった。僕の世界を広げてくれたはま寿司様には、足を向けて寝られないというわけなんです(すみません、実際にはちょうどはま寿司のほうに足を向けて寝てしまってるんですが、あくまで精神的な意味で)。

 

固定観念を捨てよう

 

で、「極意」の件です。これまでの経験から僕がたどり着いた、激安回転寿司で飲む際の極意。それはずばり、「邪道系のネタで攻める!」。
あくまで「激安系」での話ですよ。寿司には上限がない。回らない高級店の寿司は、そりゃあ腰が砕けるほどうまい。回転寿司の中にだって、先述のように、新鮮さ、質の高さを売りにしているお店もある。一方で、家族みんなで懐の心配をせずにお腹いっぱい食べられる、はま寿司のようなお店がある。なんてったって、基本1皿100円均一。平日はなんと90円均一ですよ!? 魚の鮮度や切り身の大きさで真っ向勝負をすれば、不利なのはしかたない。もはやジャンルが違うって話。だからこそ僕は思うんです。どちらにも良さがある、と。で、だ。激安系の良さを堪能するならば、邪道系のネタで攻める。魚にこだわりすぎない。ここは寿司屋だという固定観念を捨ててしまう。それが幸せへの近道なんですね。
例えばはま寿司の「チーズカリカリポテト」260円。たっぷりの揚げたてポテトの上でとろけるチーズ。これ、メニュー表から写真を切り抜いて、どっかの居酒屋の壁にでもペタッと貼ってごらんなさいよ。はっきりいってみんな、絶対頼むから! そのくらい酒のつまみとしてポテンシャルが高い。そして、他が1皿100円なので埋もれてしまいがちなんですが、その驚異的な値段。これだけで30分は飲めますよ。他にも「なんこつの唐揚げ」とか「まぐろの大葉はさみ揚げ」とか「旨だしたこ焼き」とか「あさりの酒蒸し」とか「ローストビーフ」とか、つまみになる単品メニューには事欠きません。
で、お酒がまた安い。これ、酒飲みには同意してもらえる回転寿司あるあるだと思うんですけど、回転寿司って、1皿1皿の値段が安いぶん、お酒が妙~に高く感じる。ごく一般的な値段ともいえる500円の生ビールを頼むと、大げさな金色の皿が1枚、目の前に追加されたりする。「今おれは、一番安いイカの寿司をつまみにビールを飲んでいるけど、ビールを一杯あきらめれば大トロが食えたわけか~」と、なんだかよくわからないモヤモヤに心を惑わされたりする。そこへいくと、はま寿司の「生ビール小ジョッキ」250円は素晴らしい。「ブラックニッカハイボール」や「本絞りサワー」の330円、「黒霧島」の1杯350円という価格も、惜しみない企業努力への賞賛を送りたくなるものです。

 

邪道デッキで、いざ回転寿司飲み

 

さて、長年はま寿司通いを重ねるうち、自分なりの「邪道デッキ」とでもいえるものが確立されてきました。最後に、僕のはま寿司飲み定番コースをご紹介しますね。ちなみに今日は、サイドメニュー類には頼らず、寿司オンリーで臨みたいと思います。酒2杯、寿司5皿。これが、自分の満足度をマックスまで高める数値であることもわかってきております。

 

まずは、お酒。「ブラックニッカハイボール」。はま寿司のタッチパネルは、指の腹で押すと反応しづらいこともあるので、その場合、焦らず爪の先で押すように意識してみてください。同時に「炙りとろサーモンチーズ」も頼んでおきましょう。すぐにハイボールが到着。ゴクリと一口。これが、チェーン店にしてはかなりしっかりと度数を感じる頼もしいハイボールなんですね。
しばし後、目の前のタッチパネルから「ワッショイ! ワッショイ!」という威勢のいいかけ声が流れ始め「テテテテテテテテテテテテテン♪」というおなじみのメロディーとともに、注文したお寿司がレーンを流れて到着します。先に断っておきますから、驚かないでくださいね? 今日僕が頼もうといている魚系のお寿司、これ1皿だけです。それが、マグロでもカンパチでもシメサバでもなく、炙りとろサーモンチーズ。まさに邪道。しかしながら、激安回転寿司において魚系のネタで確実に満足感を得たければ、サーモンものが間違いない。そこに、チーズを乗せて炙りを入れてある。うまいに決まってるでしょう。実際、とろりと濃厚なチーズ味にかき消されそうになりつつもなんとかふんばって風味を主張するサーモンの、他のどこにもない美味しさが、ハイボールにばっちりです。
お次は「えび天」。はま寿司の揚げ物は、注文するときちんと揚げたてを出してくれるところが最高なんです。あ、ちなみにテーブルには、「はま寿司特製だし醤油」「北海道日高昆布醤油」「九州甘口さしみ醤油」「関東風濃口醤油」と、なんと4種類の醤油が用意されている。さらに、レーンにはたまに小分けパックの「甘だれ」も流れてくる。これらを好みで使い分け、天丼風の味付けにして食べるのもまた良し。
さて、もう酒がなくなった。次は「本搾りサワー(グレープフルーツ)」だ。同時に、あの「すき家」や「ビッグボーイ」を運営するゼンショーグループ系列店の真骨頂、肉系寿司ゾーンに突入だ。「チーズハンバーグ」と「から揚げ軍艦(マヨあり)」を注文。チーズハンバーグ寿司は、完全に子供の頃のお弁当の味なのが愉快。とてつもない標高を誇るから揚げ軍艦の、海苔、酢飯、マヨネーズと揚げたてから揚げのハーモニーも楽しすぎ。これがグレープフルーツサワーに合う合う! どうです? 寿司という固定観念から脱すれば、はま寿司ではこんなにも自由に羽ばたけるのです。
ラストはこちらも激安回転寿司を代表する、邪道系軍艦で締めましょう。今日は何にしようかな? 「コーン」もいいし「ツナサラダ」もいいし……と悩んでいるあなたにうってつけの1皿がありますよ。それが「サラダ軍艦三種盛り」! なんと、コーンとツナに加え「シーフードサラダ」まで乗ってお得感マックス。150円しますがやむをえずでしょう。マヨたっぷりのコーン、強めの塩気で酒が進むツナ、何がなんだかよくわからないけど嫌いになれないシーフードサラダ。あぁ、美味しい楽しい。

 

お酒を2杯飲んでけっこうなほろ酔い加減。お腹は満腹。それでトータル1000円ちょっと。これだから激安回転寿司飲みはやめられないんだよな~。

酒場ライター・パリッコのつつまし酒

パリッコ

DJ・トラックメイカー/漫画家・イラストレーター/居酒屋ライター/他
1978年東京生まれ。1990年代後半より音楽活動を開始。酒好きが高じ、現在はお酒と酒場関連の文章を多数執筆。「若手飲酒シーンの旗手」として、2018年に『酒の穴』(シカク出版)、『晩酌百景』(シンコーミュージック)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)と3冊の飲酒関連書籍をドロップ!
Twitter @paricco
最新情報 → http://urx.blue/Bk1g
 
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