冨恵洋次郎著『カウンターの向こうの8月6日』が第8回広島本大賞受賞!
トピックス

 

広島の書店員さんたちが、地元・広島ゆかりの魅力あふれる本を選ぶ「広島本大賞」。第8回目の今年、冨恵洋次郎著『カウンターの向こうの8月6日』(光文社刊)がノンフィクション部門で大賞の栄誉に輝きました。

 

「広島本大賞」:https://ja-jp.facebook.com/hiroshimabontaisho/

 

著者の冨恵洋次郎さんは、広島市中区でバー「スワロウテイル」を営んでいました。20代のある日、被爆3世で幼稚園のころから平和教育を受けてきたにもかかわらず、お客さんから原爆のことを聞かれても、何も答えられなかった自分に愕然とします。そこで、自身が経営するバーで、「被爆証言者の会」を開催することを決意、2006年2月から毎月6日、欠かさずに続けてきました。

 

「証言者の会」を続けるうちに、冨恵さんは、被爆者が高齢化し、当時の出来事を詳細に語れる人が年々少なくなっていくことに危機感を覚えます。「今のうちに証言者のメッセージを記録して、それを次世代に伝えたい」という思いから、2016年秋、この本の執筆を決意しました。

 

しかし──。

 

それからわずか2ヵ月後の2017年1月、冨恵さんはステージ4の肺がんを患っていることを宣告されます。抗がん剤を投与し、治療に取り組みながら、本書の執筆・校正にあたり、一字一句たりともゆるがせにせず書き切りました。
そして、この本に自らの生きた証をすべて吹き込み、本の完成を10日後に控えた2017年7月、冨恵さんは旅立っていきました。

 

《「平和活動」というと、堅苦しくて近寄り難いので参加自体二の足を踏む人もいる。僕はこの本で「核兵器廃絶」「戦争反対」の声を高々にあげて、何かの活動を始めてほしいとは思わない。被爆者の方たちが創ったこの日本で、どれだけ平和に生きているか。(中略)ささいな日常を少しでも幸せと感じることができればよいと思う。》(『カウンターの向こうの8月6日』より)

 

決して声高に押し付けるようなものではない、しかし冨恵さんの平和への揺るぎない信念が詰まったこの1冊、ぜひご一読ください。

 

なお、「被爆証言者の会」は、冨恵さんの遺志を引き継いだ仲間により、現在も毎月6日にバー「スワロウテイル」(広島市中区薬研堀1-8)にて開催されています。こちらも、広島を訪れた際には、ぜひ、立ち寄ってみてください。

 

 

広島本大賞の授賞式は、以下の日程で行われます。

【日時】2018年4月28日(土)

12:00~12:15 授賞式
12:15~12:45 受賞関係者によるトークショー

【会場】広島市南区松原町9-1
広島駅前 エールエール地下広場イベント会場

トークショーには、冨恵さんの活動を受け継いだ仲間が登場し、冨恵さんの思い出、人となりとともに、現在の「被爆証言者の会」の活動状況をお話しいたします。

※入場無料、整理券不要です。なお、観覧用のイスには限りがあります。
※お問合せ ジュンク堂書店広島駅前店(Tel:082-568-3000)

 

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterで「本がすき」を