ryomiyagi
2019/12/18
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2019/12/18
19日に光文社より発売される僧侶・鈴木泰堂氏との対談本『魂問答』のなかで、清原和博氏は今年春、すでに冷たくなってしまった母と対面したときのことを、こう振り返っている。
「子供の時以来ですね、あんなふうにお母さんに抱きついたり、自分の頬をお母さんの頬にひっつけて、泣いたのは」
逮捕後、薬物への強い欲求、さらには重いうつ病と闘いながら、再起に向けた道を歩み続けてきた清原氏。その更生のさなかだった今年3月、自身のいちばんの理解者だった母が急逝してしまったのだ。母は認知症始め、さまざまな病を抱え、長期間に及ぶ闘病生活を続けていた。
「子供のころから、僕が悪さしたとき、尻拭いしてくれたのもお母さんでした」
こう話す清原氏。じつは、息子が薬物依存で苦しんでいたことを、母は知っていたという。
「僕が薬物に手を出してしまっていたのは、知っていました。お母さんも認知症を患う前でしたから」
清原氏は、母からそのことで叱責された記憶はない、と話す。
ただ、覚えているのは、母からぶつけられた「あんたをもう一回、私のおなかのなかに戻したい」という言葉だけだ。
清原氏が薬物の過剰摂取で意識不明になり病院に担ぎ込まれたときには、母は大阪から駆けつけ、隣の病室に泊まり込んで息子を見守り続けた。
「どうか和博を、息子の命を助けてください」と、医師の足にすがりつくようにして泣いていたという。
2016年2月の清原氏の逮捕当時は、すでに認知症を発症し入院中だった。だから、最後まで息子の逮捕を知らぬまま、さらには、息子の再起を見届けることなく、旅立ってしまった。
「自分としては、薬物との戦いに勝った自分を見せたかったと思いますね」
こう言って唇を噛む清原氏に、鈴木氏はこんな言葉をかけて励ますのだった。
「仏教では『追孝』といって、『親孝行は、いつでもできる』と教えています。いちばんの追孝は、清原さんが自分のその体を使って、『これは、お母さんのために』と思いながら、利他の気持ちで物事を為したり、自分を律することです」
その言葉に清原氏は強く頷いていた。
「やはり、僕を産み育ててくれたお母さんや、大切な人たちのためにも、もう二度と間違った道を選ぶことはできません。闇の世界にはもう二度と戻りたくない」
背筋を伸ばす清原氏。その目には確かな光が宿って見えた。
『魂問答』
清原和博・ 鈴木泰堂 /著
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