糖尿病の真の黒幕「インスリン」をやめられる治療法
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BW_machida

2021/07/08

 

1921年。体内の糖分をエネルギーに変換する、すい臓のベータ細胞によって生成されるインスリンが発見された。以来、糖尿病治療は飛躍的に前進し、1924年には日本国内でもその使用が始まる。しかし当時はあまりにも高価(平均月収の3倍)で、そのためインスリンは「世界一の高貴薬」と呼ばれ、糖尿病は「金持ち病」などと揶揄された。その後、インスリンの生産工程はさまざまに改良され、比較的安価に供給できるようになった。そして現在は、慢性的な糖尿病罹患者の治療手段としてインスリン注射は広く知られ、国内でもおよそ100万人がインスリン療法を行っている。

 

日本国内でも、糖尿病に苦しむ……または糖尿病の恐れがある人は1300万人に及ぶと言われている。罹ったが最後、日々の血糖値との戦いは死ぬまで続き、インスリン注射を始めたら、死ぬまで打ち続けなければならない。と、されているが、果たしてそうなのだろうか。

 

私の近くにも、食事の際に必ずインスリン注射を打つ男がいる。彼は、「これさえ打っておけば大丈夫」と、照れ笑いをしながら一本。そうして、常にインスリンと注射器を持ち歩いている。果たして、本当にその一本があれば大丈夫なのだろうか。

 

『糖尿病の真実』(光文社新書)著者で、糖尿病治療と長く戦ってきた日本糖質制限医療推進協会提携医・水野雅登医師。現在の糖尿病治療に対して、過度にインスリン療法にかたよったその姿勢と考え方に対して強く警鐘を鳴らし、「脱インスリン」を掲げている。

 

映画やドラマの脱出劇で、幾つもの難関を乗り越える際に、登場人物の一人が糖尿病でインスリンを手に入れなければ死んでしまう。なんていう筋書きをよく目にする。それほどに、糖尿病を患った者にしてみればインスリンは効果てきめんの奇跡の薬であり、その有無が生死を分ける鍵となっている。
しかし本書の著者は、そんなインスリンこそが糖尿病における「真の黒幕」なのだという。

 

なぜインスリンが黒幕なのか?
網膜症、腎症、神経障害といった、糖尿病の三大合併症については、皆さんよくご存じでしょう。しかし、「インスリンの三大慢性リスク」については、ほとんどの方は耳にしたことがないのが普通です。それは「肥満」「認知症」「がん」です。「三大」などと言うからには、とてもよくあるリスクで、糖尿病とセットで起きやすいということです。
ところが、これらの発病とインスリンとの因果関係は、ほぼ認識されていません。糖尿病で合併しやすいリスク、としか広まっていないのです。しかし、実態は「インスリンによる慢性リスク」です。

 

糖尿病がなぜ厄介かと言えば、それは「完治しない」「インスリンが手放せない」「糖尿病そのもの以上に合併症が怖い」という三つではないだろうか。
そして著者は、糖尿病治療に関する様々な薬剤のデータと功罪を紐解き、幾つもの症例に考察を交えながら、この三つの恐れを解消していく。

 

【症例1】インスリン分泌がかろうじて残っていたAさん
Data:30代後半、男性、HbA1c9.9%、血糖値101(食後390分)、1日4単位のインスリンを使用

 

【初診時の状態と検査内容】(中略)
前医からの処方は、ランタス(持効型インスリン)を朝4単位自己注射し、メトグルコ錠(500mg)を朝食後1錠、夕食後1錠飲んでいました。ランタスは24時間ほど効果が持続する「持効型」タイプのインスリンです。メトグルコは、ビグアナイド薬の一つで、インスリンの効き目を改善するタイプの薬剤です。(中略)

 

【治療内容】
まずは、初診時にタンパク脂質食を指導しました。前医からは、例の何の役にも立たないカロリー理論による食事療法を指導されていたそうです。(中略)

 

【経過】
私の初診から1カ月後には、HbA1c6.9%と、数値の低下が見られました。タンパク脂質食も順調に進み、「面倒なカロリー計算もなく、とても助かっている」とのことでした。(中略)
自己注射を1カ月以上中止したため、今度は血中インスリン濃度(IRI)を測定したところ、6.4μU/mLと、低インスリン状態を維持していました。
初診から7カ月後には、メトグルコも終了となり、インスリンも内服薬もない状態で、HbA1cは5.6%に改善していました。HbA1cは、6.0~6.4%で糖尿病予備軍、6.5%以上で糖尿病、というのが区切りなので、すでにAさんは薬なしで、予備軍から外れることができました。

 

【考察】(中略)
4単位というのは、自前のインスリンがすい臓から出ている場合には、ほぼ意味のないほど少ない単位数です。しかし、従来の標準治療では、これまでお伝えしてきたように「インスリンはやめない」のが鉄則です。「迂闊にやめると血糖値が上がって危険です」「すい臓が疲れてしまいます」と説明され、ずっとインスリン注射が続きます。その結果、すい臓のベータ細胞はどんどんインスリンを分泌する能力を失い、打ったインスリン注射の副作用でお腹が空いてドカ食いをして太っていく……というのがよくあるケースです。インスリンもやめられず、内服薬も増えていく、という負のループに陥ってしまいます。

 

やめられないはずのインスリンがやめられたという驚くべき実例が出てくる。
他にも、「1日約50単位のインスリンを卒業&13キロの減量にも成功したCさん」や「薬なし、食事だけで糖尿病を改善&27キロ減量したEさん」など、幾つかの症例を紹介しつつ、その検査内容や経過観察とともに、著者自身の考察も交えて現代日本にはびこる糖尿病治療の矛盾点や、インスリン療法に潜む危険性を訴えていく。

 

そして考察の最後は、

 

高単位のインスリンを使っていても、高齢者でも、インスリンはやめられる
これらの5例のほかにも、インスリン75単位をやめた高齢女性もいましたし、26単位をやめることができた腎不全の高齢女性もいました。中には、糖尿病性壊疽が改善した方や、眼底出血が消失した患者さんもいます。
眼底出血が消失した方は、症状が出たときは高インスリン状態でしたが、治療後は低インスリン状態を保てるようになり、改善した例です。このときの血糖値は比較的高めでした。つまり、たとえ血糖値は高くても、低インスリン状態であればやはり合併症が進まないことがわかります。

 

と、考察の章を締めくくる。

 

「治らない病」のはずの糖尿病が改善、完治したり、「一生使用し続けなければいけないはずのインスリン注射」のくびきから逃れられるとしたら、それはどれほどの喜びだろうか。幸いにして、いまだ糖尿病を宣告されずにいる私ですら、「いざとなったらこの先生」と、一筋の光明を見出したような心地だ。

 

※注意:インスリンを自己判断で中止することは非常に危険な行為です。今現在、糖尿病治療を受けている場合には、必ず主治医の指導のもとで行うようにしてください。

 

文/森健次

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