『地羊鬼の孤独』著者新刊エッセイ 大島清昭
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ryomiyagi

2022/12/07

魅惑の中国妖怪

 

妖怪が大好きです。これまで基本的に日本の妖怪を専門に研究を続けてきましたが、妖怪研究の国際化への興味から、ここ数年は中国や台湾の妖怪にも関心があります。

 

思えば、私が最初に中国妖怪と出会ったのは、水木しげる先生原作『ゲゲゲの鬼太郎』の劇場版アニメ『ゲゲゲの鬼太郎 最強妖怪軍団!日本上陸!!』でした。この作品には、天狗、妖犬、山しよう、黒怪物、くしゃみの精、角端獣、画皮など、個性豊かな中国妖怪たちが跳梁跋扈し、鬼太郎たちと激しいバトルを繰り広げます。子供ながらに日本妖怪とは異なる魅力を持つ中国妖怪に胸を躍らせたことを覚えています。

 

あまり妖怪に詳しくなくても、『西遊記』の孫悟空、猪八戒、沙悟浄、牛魔王、金角大王、銀角大王などは、ご存じの方も多いのではないでしょうか。最近では高橋留美子先生の『犬夜叉』の続編であるアニメ『半妖の夜叉姫』に、四凶—即ち、窮奇、檮こつ、渾沌、饕餮や女かといった中国妖怪をモデルにしたキャラクターが登場しました。意識して見てみると、中国妖怪は案外身近に姿を見せていたりするものです。

 

さて、『地羊鬼の孤独』の地羊鬼も、明の時代の『雲南百夷篇』や『七修類稿』に記載された中国妖怪です。地羊鬼は、人間が気付かない内に、その内臓や手足を木や土に変えてしまいます。そのため、被害者が亡くなってから、腹を開けて初めて、地羊鬼に襲われたことに気付くそうです。

 

余談ですが、本作を執筆中、あるものが突然グルグル回るという不可思議な体験をしました。折角なので、その怪異については作中に紛れ込ませてあります。

 

と、うっかり妖怪のことばかり書いてしまいましたが、『地羊鬼の孤独』は連続猟奇殺人事件や密室の謎を描いたミステリです!

 

『地羊鬼の孤独』
大島清昭/著

 

【あらすじ】
内臓を模型に変えられた遺体が次々に発見された。一連の犯行を繋ぐのは、現場に残された「地羊鬼」の文字。中国妖怪を模倣した連続殺人らしい。刑事・八木沢は、警部補・林原と捜査を進めるが、事件の全容は徐々に人間の手に収まらないものになっていき—。

 

おおしま・きよあき
1982年、栃木県生まれ。筑波大学大学院修士課程修了後、妖怪研究家として研究・執筆・講演を行う。2020年、「影踏亭の怪談」で第17回ミステリーズ!新人賞を受賞。近著に『赤虫村の怪談』がある。

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