暑さ・寒さに対するわたしたちの体の反応
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2022/12/21

温活ブームとは真逆をいく書籍、『体を冷やせば健康になる』(光文社)が好評発売中です。著者であるナグモクリニック・南雲吉則先生は、自身のオンラインセミナーで、その種明かしについて語ってくれました。第1回目は、暑さ・寒さに関するわたしたちの体の反応について教えていただきました。

 

写真/野口博

 

寒いからと言って風邪はひかない

 

子どもは風の子という言葉のとおり、昔の子どもたちは半袖短パンで外へ飛び出し、押しくらまんじゅうをして体を温めていました。ところが、最近のお母さんたちは、心配するあまり、子どもたちに厚着をさせがちです。そうすることで風邪を引かない子になるのかといえば、それは違います。

 

どうして寒いと風邪を引くという考えが生まれたのでしょうか。風邪のことを英語で『cold』といい、やはり外国においても、寒いと風邪を引いてしまうという概念があったようです。また、風邪の代表的なウイルスである『インフルエンザ』の語源は『influence:影響』です。冬になるとやってくる寒波や星座が原因で、風邪を引いてしまうと昔の人たちは思っていました。しかし、夏でも風邪を引くことはありますので、寒波が直接の原因ではありませんでした。実は渡り鳥の腸の中には、インフルエンザウイルスが常在菌として存在しており、渡り鳥が冬になるとやってくるために流行していたというわけです。

 

つまり、風邪の原因は寒さではなく、ウイルスに接触する点にありました。ですので、厚着をすれば風邪を引かなくなるのではなく、むしろ、そうすることで、抵抗力がどんどん失われ、風邪を引きやすくなってしまうのです。

 

ウイルスがいるような密の状態のときに感染してしまうため、手洗いやうがいの励行、マスクエチケットが大切になってきます。ですので、閉め切った暖かい室内に密集しているより、屋外へ出たり換気したりしている方が、風邪は引きにくくなります。実際、毎年1,000万人の人たちがインフルエンザにかかっていたのにも関わらず、コロナが流行した2020年や2021年はインフルエンザの流行は見られませんでした。

 

辛いものを食べると体温が上がるのか

 

『hot』には、暑い・辛いの2つの意味があります。唐辛子を食べれば汗が出るので、体温が上がったと考える方がとても多いです。逆に、ミントを食べると喉がスースーして、冷えたような感覚になります。ですので、温湿布には唐辛子のカプサイシンという成分が入っていたり、冷シップにはミントの成分が入っていたりします。しかし、唐辛子を摂っても体温は上がりませんし、局所にミントを貼っても温度は下がりません。あくまでそのような気がするだけなのです。

 

この謎を解明したのが、2021年のノーベル生理学・医学賞を受賞したカリフォルニア大学のデイヴィッド・ジュリアス教授です。人間がトウガラシの辛さを感じるのは、TRP(トリップ)チャネルと呼ばれる痛覚受容体があるため、ということを発見しました。痛覚受容体は、皮膚・粘膜に存在しており、トウガラシを食べたときに舌が感じていたのは、辛さではなく実は痛みだったのです。唐辛子の辛さにはTRP-V受容体が、ミントの清涼感にはTRP-M受容体が働き、それを脳が、辛さや熱さ、そして清涼感だと錯覚していたということになります。

 

どうして体を温めると健康になるという常識が広まったのか

 

体温には『体表温』と『深部体温』があり、これらを区別して考えなければなりません。体表温は、周囲の環境を受けやすく、皮膚温や体表面温度と呼び、手首やわきの下で測るものがこれに該当します。体表温は熱いお風呂に入れば上がるし、冷たい風にあたると下がります。深部体温は、周囲の環境の影響を受けにくい、体の深部の温度のことであり、直腸や口腔、鼓膜で測ります。深部体温は視床下部の体温調節中枢によって37度の一定に保たれていて、健康状態に重要なのは、この深部体温なのです。

 

これら体表温と深部体温とを勘違いしている人が多いことが原因で、体を温めると健康になるという常識が広がったのではないでしょうか。しかし残念ながら、厚着をしても深部体温は上がりません。外から温めて体温が上がってしまうのであれば、赤道直下に住んでいる人々はみんな熱中症になってしまいます。気温が40度あったとしても、いつも体温は37℃に保たれています。体を温めようとすればするほど、脳は一生懸命冷やそうと指示を出します。逆に、北極圏に住んでいる場合、体が冷えると体温を上げようとする機能が働きます。この深部体温を上げる働きは、ミトコンドリアによるものであり、体に寒さ刺激を与えれば、ミトコンドリアが活性化するのです。

 

次回は、このミトコンドリアの働きについて解説いたします。

 

ライター/ryoco

 

『体を冷やせば健康になる』
南雲吉則/著

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