2021/06/24
今泉愛子 ライター
『ふたりのきほん100』光文社
松浦弥太郎/著
「あなたとは、いつも未来のことを語り合いたいと思っています」
松浦弥太郎さんの新刊『ふたりのきほん100』は、こんな言葉から始まります。楽しいこともあれば、面倒なこともあるのが人と人との関係です。大切に思う相手、一緒にいる時間が長い相手と、どうやったら気持ちいい関係を築くことができるのでしょうか。
この本で松浦さんは、日々の暮らしで心がけたいことやケンカしたときの振る舞い方、しあわせの感じ方など、200の提案をします。
たとえば、こんなふうに。
「ふたりの間でルールを決めたり、どうしようかと話し合ったりするときに、『まだ決めないでおこう』という選択肢があってもいいと思っています」
決断するための方法を説くのではなく、肩の力の抜き方をさりげなく提示してくれるのです。
別のページには、こんな言葉も。
「特別であることが豊かさだと思っていると、もっともっとと追い求めたくなります。だけど豊かさは、頑張りながら、頑張りすぎないところにもあるのです。平凡こそ、人とわかちあえるいい物差しになります」
松浦さんは、これまでたくさんの著書をつうじて、人間関係や仕事の心構え、時間やお金の使い方について話してきました。松浦さんの言葉が響くのは、どんなときにも「心のもちよう」をわかりやすく伝えてくれるから。
毎日の暮らしのなかで、心のゆとりはどうやったら生み出せるのか。仕事で理不尽な思いをしたとき、どうやって怒りを鎮めればいいのか。人間関係で信じがたい裏切りにあったとき、どうすれば水に流すことができるのか。そんな人生の難問に寄り添ってくれるのです。
松浦さんの言葉は、ただ優しいだけではありません。
「愛する人がそばにいれば、さびしい思いをしなくてすむということは、幻想です」
こんなドキリとするような言葉を投げかけることも。だけどいつも最後は納得してしまうから不思議です。
これから「ふたり」になろうとしている人、今まさに「ふたり」になったばかりの人だけでなく、「ふたり」に飽きてきた人、そろそろ「ひとり」になろうと考えている人も、きっと何かが見つかります。ひとりひとりを幸せにしてくれる本です。
『ふたりのきほん100』光文社
松浦弥太郎/著