【読者からの質問】療育は早く始めたほうがいい? 運動は大事?
岡嶋裕史『大学教授、発達障害の子を育てる』

ryomiyagi

2020/06/04

 

Q 療育は早く始めたほうがいいの?

 

A 早ければ早いだけいいと思います。

 

久しぶりの回答回です。よろしくお願いいたします。

 

療育を開始するのは、理屈の上でも、(狭いですが)体験の範囲でも、早ければ早いだけいいと思います。たとえば、情報の世界で言うフォールスポジティブが起こっていて、「実は定型発達だったけど、療育を受けていた」という事態になったとしても、何ら害はありません。

 

ただし、ここで言う療育は、必ずしも集団でのそれを意味しません。少しでも早く集団に混ぜて社会性を獲得したいと、つい焦ってしまいますが、たとえば他者を全然意識できない状態で集団に混ぜても、あまり効果はないと思います。むしろマイナスになる可能性もあります。

 

ですから、その子の状態に応じて、適切な療育を根気よく続けるのが最善かと。私も最近、通信環境のすごく悪いところで遠隔会議に英語(苦手です)で参加する機会がありました。タイムラグのあるテレビ会議って、とってもストレスがかかりますし、まして苦手な英語です。やり取りに苦労した上にへとへとになって、割と落ち込みました。発達障害の子が、進度の合わないクラスに参加している感覚って、あんな感じなのではないかと思います。

 

まわりが集団療育に進んでいたりすると心中穏やかでないときもありますが、伸びるときは一気に伸びることもあるので(その辺も能力値のバランス同様、でこぼこしています)、焦燥感と上手につきあうのが大事になってくると思います。

 

どうしても何かと比較したくなりますし、指標があるって大事なことだと思うのですが、比較の対象は他のお子さんではなく、過去のその子自身が良いと思います。伸びがゆっくりだったり、でこぼこしたりしていても、発達障害の子もびっくりするくらい色々なことを習得できます。できるようになったことを目ざとく見つけて、たくさん褒めてあげてください。体感値ですけれども、自尊感情が整ったお子さんの予後はとても良い気がいたします。

 

大学でもそうですが、最近お子さんの自主性や能動性を重んじる教育が重視されています。それに応じる形なのか、あまりお子さんの行動に介入しない保護者の方も増えてきました。もちろん、過干渉はよくないのですが、ある程度の年齢になるまでは保護者の適切な介入は不可欠かと思います。

 

商売柄、高校生と接触する機会も多いのですが、二極化が進んでいると思います。何もかもよくできる子と、何もかもちょっと今ひとつな子です。私が子どもの頃の、「成績はいいけど、ちょっと服がどんくさい」とか、「生活態度はいまいちだけど、センスがよかったり運動ができたり」といった類型は見かけなくなりました。

 

この二者を分ける変数は何なのだろうと、長いこと観察してきたのですが、どうも「保護者の方の適切な介入」がしっくりくるのです(個人の感想です)。あまりいろいろ言うと、自主性を削いでしまうのではないかと不安になる局面もあるかと思いますが、年齢の低い子や、まして自閉傾向の特性がある子に対しては、気にせず口出ししてあげたほうがいいのかなと思います。

 

Q 運動も大事ですか?

 

A きっと大事なんだと思います。

 

無限に時間やお金があるわけでもないので、割と後回しになってしまいがちな運動ですが、やはり人の発達って色々リンクしていると思います。

 

私の場合はまず私が運動が苦手ですし(隙があれば理由をつけて見学していましたし、おそらく逆上がりができないまま一生を終えます)、私の子も、その双子の姉も、おそろしく運動音痴なので指標がなく、運動が不得意なことになかなか気づきませんでした。

 

双子そろって逆上がりも、25mを泳ぐこともできないので(私は泳げます。小学校のときに5年かけて練習しました。やはり練習って大事だと思います)、小さいうちにもうちょっと運動を習わせてあげればよかったと思っています。

 

やはりここでも、得意不得意のぼこぼこがすごいので、得意なものを一緒に探してあげるといいと思います。得意なものを増やすと、一緒に自尊心も貯金できるので、それが他のアクティビティにもダイレクトにつながってきます。

 

私の子はスキーだけは得意で、綺麗なシュテムターンが描けます。私はリフトに乗るのが好きなので山頂まで繰り出すのですが、景色を満喫したら下りのリフトで降りてくるだけの人生だったので、とても羨ましいです。双子の姉は力持ちです。

 

発達障害に関する読者の皆さんのご質問に岡嶋先生がお答えします。
下記よりお送りください。

 

大学の先生、発達障害の子を育てる

岡嶋裕史(おかじまゆうし)

1972年東京都生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。博士(総合政策)。富士総合研究所勤務、関東学院大学准教授・情報科学センター所長を経て、現在、中央大学国際情報学部教授、学部長補佐。『ジオン軍の失敗』(アフタヌーン新書)、『ポスト・モバイル』(新潮新書)、『ハッカーの手口』(PHP新書)、『数式を使わないデータマイニング入門』『アップル、グーグル、マイクロソフト』『個人情報ダダ漏れです!』(以上、光文社新書)など著書多数。
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