【読者からの質問】進学時に特別支援学級を薦められ、困惑しています。
岡嶋裕史『大学教授、発達障害の子を育てる』

ryomiyagi

2020/03/19

 

今回はご質問への回答回です。
いつもご質問をいただき、ありがとうございます。

 

Q 進学時に特別支援学級を薦められ、困惑しています。

 

A 困惑しますよね。ほんとに。困惑するのは、情報が少ないからだと思います。知っていることは怖くないですし、知らないことは怖いです。「みんなが歩むルート」は、なんとなく知っているので、過大な期待も過大な絶望もしなくてすみますが、一般的に特別支援教育にすごく馴染みがある方は少ないので、恐怖に直面するのがふつうだと思います。

 

私自身が子どもについて最初に診断を受けたのはある大学病院でしたが、「この子は特別支援教育で遜色ないですね」(なんか、日本語の語法が間違ってると思う)と言われ、「えー、それは普通級とどんな感じに違いますか?」と問うたら、「これだ! 親ってなんで普通級に無理して入れたがるんだろう? 能力に見合ったところに行くべきなのに。意識低いんだから、やれやれ」といったことを言われ、軽く殺意を覚えました。無理して普通級に入れたいとも言っていないし、特別支援教育が嫌だとも言っていない状態でそんなふうに反応されたので、告げる側にもかなりの偏りがある気がいたします。個人的な体験なので、一般化するのは危険ですが。

 

どの学校、どの教育が向いているのかは、個々のお子さんごとに本当に異なってきますから、あくまで一般論ですが、診断が出ていて、実感としても日常生活で何か困りごとがあるならば、特別支援教育のほうが向いているかなあと思います。

 

先生方が構造化した教育環境を作ってくれますし、かなり個々人にカスタマイズされた教育が行われますから、周囲のお友だちと軋轢を起こしたり、勉強について行けずに学校が嫌になってしまう(これが一番引き起こしたくないケースかと思います。おそらくどの子にとっても、学校は社会への一番間口の広いゲートウェイですから)確率を減らせます。

 

一方で、とても穏やかな環境で育つことになりますから、お友達からの刺激の入力は小さなものになります。刺激を得てコミュニケーション能力が伸長するポテンシャルがある子だと、この部分がちょっともったいないと思うんです。

 

あとは、勉強の到達点が低くなります。簡易版の国語と算数を主軸に教育を行う学級が多いですから、知的なポテンシャルが高い子には物足りないかもしれません。あとは社会と理科の学習が(小学校のうちは)薄いと考えておいた方がよいでしょう。これらは家庭科とともに「生活」にまとめられていますが、普通級に比べると学びの時間は少ないです。ぼくの子は国語、算数が嫌いで、異様なほどに社会と理科を愛していたので、この点はよい環境を与えてあげられなかったなあと、今でも残念に思っています。

 

どちらにも、メリット、デメリットがあるので、軽々なことは申し上げられませんが、お子さんが楽しんで通えそうな学校をイメージして選択すればいいと思います。ぼくは自分自身が学校嫌いだったので、子どもを学校嫌いにしたくはないなあというのを軸に学級を選びました。

 

また、特別支援教育に進んで以降、コミュニケーション能力などが改善した場合、普通級へ進学することは可能です。

 

特別支援教育って、親にとっても未知の世界だったりするので、最初は気後ればかりするかもしれませんが、先生や他のご家族、他のお子さんたちとの距離が近くて、意外と楽しいかもしれません。あの門をくぐるときは、「なんだか思ってたのとかけ離れた場所に来ちゃった」などと感じる人がほとんどで、その場所で「楽しい」なんて感情を得る日が来るとは想像もできないのですが、ほんとにみんな意外と楽しくやっています。

 

発達障害に関する読者の皆さんのご質問に岡嶋先生がお答えします。
下記よりお送りください。

 

大学の先生、発達障害の子を育てる

岡嶋裕史(おかじまゆうし)

1972年東京都生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。博士(総合政策)。富士総合研究所勤務、関東学院大学准教授・情報科学センター所長を経て、現在、中央大学国際情報学部教授、学部長補佐。『ジオン軍の失敗』(アフタヌーン新書)、『ポスト・モバイル』(新潮新書)、『ハッカーの手口』(PHP新書)、『数式を使わないデータマイニング入門』『アップル、グーグル、マイクロソフト』『個人情報ダダ漏れです!』(以上、光文社新書)など著書多数。
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