物語の種はどこにでも転がっている『聖女の天秤 〜お仕置きまでがお仕事です〜』りぃん
ピックアップ

我が家では、冬の時期限定の奇跡に出くわすことがある。

 

なんと、突き回し噛(か)みつきvs猫パンチの応酬が日常茶飯事のインコと猫が、寒さのせいで寄り添ってお昼寝をする光景だ。

 

丸くなって眠る気弱な猫のふわふわなお腹に、嘴(くちばし)を半開きにして眠る鬼姫インコが埋もれている。どちらも真っ白なので、よくよく目を凝らさないと気づかない。

 

飼い主は、声を殺して悶(もだ)えながらスマホをかざすのだけれど、シャッターチャンスには目を覚まして逃げてゆく。

 

私の身近で起こる、インコと猫が主役のちょっとしたファンタジー。彼らが人間と同じ言語で会話したら、きっと面白いだろうね。そんなことを空想していたら、ぼんやりした何かがふっと頭の中で生まれた。

 

冬に起こった、もうひとつの奇跡。

 

学生時代に犬猿の仲だった男女の友人が、互いに結婚と離婚を経験して、電撃再婚した。出張先の企業で、ライバル会社の営業同士として偶然再会したのだという。

 

学生の頃にいがみ合ったまま卒業して、それきり一度も顔を合わせなかったのに。なんて彼ららしい奇跡だろう。でも、私を含む友人たちは、結婚までの経緯を聞いて大笑いした。

 

そこでまた、空想が弾(はじ)ける。

 

天敵同士がタッグを組んで、恋や友情なんかも絡んで、真の黒幕を倒すお話はどうかしら。悪役が権力者なら、こっちは非情な女神様を引っ張りだして勧善懲悪してみたり。

 

そんなふうに身近に転がっている物語の種を摘まみ上げて、空想というプランターの中で育て始める。面白い花が咲くか、楽しい実がなるか。美しい大輪の花にも挑戦してみたい。

 

私が丹精込めて育てた花や実が、いつか誰かの心の奥で新しい『何か』の種になれたらいいなあなんて空想するのだ。

 


『聖女の天秤 〜お仕置きまでがお仕事です〜』
本体1200円+税

 

女神様から聖女に指名され、魔王討伐に出ていたフェリシア。ところが王都に凱旋したら、婚約者の王子には新しい許婚が!? 大神殿からも王都からも追放されたフェリシアは決意する。次の聖女が生み出されないよう、清いまま長生きしてみせると!

 

PROFILE
りぃん 新潟県在住。「小説家になろう」に掲載していた本作(原題『聖女は拳を掲げる!〜人生、笑ったモン勝ち!〜』)がデビュー作となる。

小説宝石

小説宝石 最新刊
伝統のミステリーをはじめ、現代小説、時代小説、さらには官能小説まで、さまざまなジャンルの小説やエッセイをお届けしています。「本が好き!」のコーナーでは光文社の新刊を中心に、インタビュー、エッセイ、書評などを掲載。読書ガイドとしてもぜひお読みください。
【定期購読のお申し込みは↓】
http://kobunsha-shop.com/shop/item_detail?category_id=102942&item_id=357939
関連記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterで「本がすき」を