2018/06/20
大山 ヴィレッジヴァンガード新店立ち上げ隊長
『左ききのエレン』ジャンプコミックス
かっぴー/著 nifuni/原著
原作者かっぴーのオリジナル版はamazonでは「絵の下手さ」だけで★を付ける人もいますが、「話の熱量」と「緻密な構成」で★★★★★付ける人が続出。
自分もハマって一晩で一気読みした一人ですが、最初リメイク版がスマホアプリのジャンプ+で始まった時は正直わざわざリメイクするほどの絵ではないような気が…って印象でした。
が!
コミックス1巻を手に取った時に、
「うわー、ジャンプコミックスだー(正確にはPLUSが付きますが)ん?なんかすげぇしっくりくるかも。」
と、妙な納得感が芽生えたのを覚えています。
ジャンプマンガと言えば…
主人公が出会う「魅力的なライバル」、
そのライバルとの熱いバトル、そして力を出し切っての「敗北」「挫折」、
かーらーの!「修行(努力)」→「成長」→「リベンジ(勝利)」。
そして生まれる強敵(「強敵」と書いて「友(とも)」って読めますよね!?)との新たな「友情」。
敗北があるからこそ、成長のための努力が生まれ、勝利の為に本気で相手を知ろうとするから友情が生まれる。
いやー、よーできてますわ。すげーよジャンプ。
ジャンプ黄金期に完成されたこの「友情・努力・勝利」の物語構造って実は今も普通に有効で、相当の変化球ではあるけど、『HUNTER×HUNTER』だってそうだし、次世代のエースと言われる『僕のヒーローアカデミア』なんて完全に正統な後継者ですね。
で、左利きのエレンに話を戻しますと、
実は最も大事な主人公に共感できない要素がてんこ盛りです…
美人で頭の切れる同級生に想いを寄せられて、イベサーの代表やって、
就職は大手広告代理店…
ちょっと!それ「単なるフルスペック男子」ですやん。
共感できない…サイコパス並みに共感できない…
そんないけ好かない主人公・光一を、それはそれはていねいに凡人としてみっともなく挫折させるエピソードでフルボッコ!!
共感→恥ずかしい!→共感→恥ずかしい!の無限ループ…
そしてとにかく熱いパンチライン!!
「オレはオレが諦めるまで諦めない!!」(マンガ脳全開の主人公気取り!)
「考え悩み学ぶ――それが―― 天才になれなかった人間の持ち得る唯一の武器だ!!!」
「体調最悪でも2日寝てなくても友達に裏切られても女にフラれても
その中で歯くいしばってひねり出した仕事がお前の実力のすべてだ」
「ジャンプのマンガじゃあるまいし」(こういうメタなセリフニヤッとしちゃう)
天才と凡人。
アーティストとデザイナー。
夢と現実。
組織と個人。
チームとエゴ。
誰が読んでも非常にわかりやすい対比を織り交ぜつつ、
「挫折→修行→成長→小さな成功」を繰り返し、仲間に助けられながら着実に成長する主人公。
ジャンプだな…ジャンプですわ…
なんなら、これが初めてのマンガ(連載が、じゃなくてマンガ描くのが!)という作画担当nifuniのどんどんマンガがこなれていく「リアル成長物語」としてのメタな側面があるような気も。
原作は原作で「物語」としてやっぱり大好きなんですけど、この絵で、このサイズで、「ジャンプコミックス」としてカバーをかけられた時に、また一味違う「モノ」としての魅力も感じるマンガです。
クリエイティブ業界のいわゆる「業界お仕事マンガ」としても十分に面白いですが、(ハッキリ言ってrelax世代にはたまらない)それだけのマンガでは断じてない。
絶対に映像化するので(言い切ってみた)
今から読んでキャスティングの妄想を楽しみましょう。
個人的には映画じゃなくて絶対連ドラ希望。脚本野木亜紀子さんでお願いしたいです!
さっさと企画あげてください!テレビ局の中の人!もうあがってたら最高!
その他のおすすめ本
武田砂鉄さんの既刊すべて
とにかく「雑にまとめることに敏感」な作者さんなので一言でおススメすんの無理…
何でも一言でうまいことまとめりゃいいってもんじゃないんだよ!
ー今月のつぶやきー
1年の3分の1以上は出張です。
今泊っているホテルの検索ワード1番目が「事件」、3番目が「霊」でした。
『左ききのエレン』ジャンプコミックス
かっぴー/著 nifuni/原著