ryomiyagi
2020/03/10
ryomiyagi
2020/03/10
光文社さんで初めて小説を書かせてもらった。
自慢するみたいになってしまうが、デビュー以来たくさんの連載依頼をいただき、ほとんどの出版社さんで書かせてもらっていたのだが、何故かこれまで光文社さんからお声が掛からなかった。
実は、小説家になる前から、光文社さんには少し特別な思いがあった。
江戸川乱歩で産湯を使いエラリィ・クィーンで育った生粋のミステリ好きだった小路少年が少し成長して高校生になったときに、夢中になったのが矢作俊彦さんだった。
そう、矢作さんの初の長編小説であり、ハードボイルド界に衝撃を与えた名作『マイク・ハマーへ伝言』が光文社さんからだったのだ。
その後も『神様のピンチヒッター』、『死ぬには手頃な日』、『ブロードウェイの自転車』、『真夜中へもう一歩』、『舵をとり風上に向く者』、『ヨーコに好きだと言ってくれ』、と、こうして書いていくだけで胸が高鳴ってくるほどの名作全てが光文社さんから出ていた。
勢いで書いてしまうが『神様のピンチヒッター』などは僕の五十年の読書歴の中でも最高最上のタイトルだと思っている。本当に一分の隙もない、これ以上はないという見事なタイトルだ。いつも著作のタイトルを決めるときには、これを超えるものを考えたいと思っている。
いかん、興奮して矢作さんのことしか書いていない。とにかく、〈心の師〉と勝手に決めて思っている矢作俊彦さんの作品群をずっと出してきた光文社さんには、それだけの思いがあったのだ。
で、ようやく書かせてもらえたのにこれかよ、と思われてしまうかもしれない。またちょっと変な小説を書いてしまったという感もなきにしもあらず。
でも、精一杯思いを込めて書きました。愉しんでもらえたら嬉しいです。
『〈銀の鰊亭〉の御挨拶』光文社
小路幸也/著
【あらすじ】高級料亭旅館〈銀の鰊亭〉は、一年前の火事で当主夫妻が焼死。二人を助けようと炎の中に飛び込んだ娘の文は怪我を負い、記憶を失った。しかし、火事の現場には身元不明の焼死体もあった。あの火事は事故なのか事件なのか。文の甥・光は刑事の磯貝と真相を追うが……。
PROFILE
しょうじ・ゆきや 北海道生まれ。『空を見上げる古い歌を口ずさむ』でメフィスト賞を受賞しデビュー。「東京バンドワゴン」シリーズで人気を博す。近著に『国道食堂1st season』など。
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