ヤクルト二軍監督・高津臣吾「『2番』と『6番』の打順の重要性」
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野球の経験がある人なら、打順を決める醍醐味を分かってくれるだろう。二軍監督になってみて、打順を決める、ラインナップを作る面白さにワクワクしている。

 

監督によって、打順の組み方はいろいろな発想があるとは思うが、僕の場合は「ビッグイニングをどうやったら作れるだろう?」という考えが基本だ。

 

試行錯誤を重ね、いろいろと考えを巡らせた結果、僕は「2」「6」「9」が打順の中では重要な位置を占めていると気づいた。これまで日本では1番、クリーンナップについてはいろいろと議論がされてきたけれど、2・6・9番についても、もっともっと議論を戦わせてもいいと思うようになった。

 

日本の野球は、高校野球に代表される一度でも負けたら終わりの「ノックアウト方式」のトーナメントが基本なので、戦略・戦術も手堅く1点を取っていくという考えが主流になってきた。その代表が2番打者の「犠牲バント」だ。

 

いまも高校野球では、3番や4番を打てそうな能力の高い打者を1番に置き、出塁を重視する。そして、2番は手堅くバントをして得点圏へとランナーを送るのが大切な仕事になっている。

 

先制点を取ればチームとしても落ち着くので、犠牲バントを否定はしないが、プロ野球、特に二軍という育成重視の場では、もっとチャンスを広げられる方法を監督としては採りたい。そう考えていくと、2番には選球眼が良く、長打力のある打者を置きたいのだ。2番がチャンスを広げる役割を果たしてくれれば、ビッグイニングを作れる可能性が大きく広がる。

 

たとえばここ20年ほど、メジャーリーグでは2番打者が重視されてきた。ニューヨーク・ヤンキースのデレク・ジーターを筆頭に、松井秀喜でさえも2番を打った。当時のヤンキースの監督、ジョー・トーリも、まさか松井にバントをさせようとして2番に据えたわけではあるまい。

 

いまのメジャーリーグでは、大谷翔平がプレーするロサンゼルス・エンゼルスのマイク・トラウトはリーグを代表するスラッガーで、2016年からの本塁打数を見ると、29本、33本、39本と抜群の成績を残しているのだが、2番に入ることが多い。これは後述するが、下位打線に出塁率の高い選手を置いておくと、2番にチャンスが回ってくることが多く、ここで打点を稼ぐことが可能になるからだ。

 

数試合だが、エンゼルスのマイク・ソーシア監督は、大谷を2番に置いた。僕が監督でも、そうしたかもしれない。大谷は長打力もあるし、加えて足が速いから3番、4番が右中間方向に打球を飛ばせば、三塁、ひょっとしたら一気にホームにまで帰ってくる可能性もある。

 

つまり、2番は自分のバットでランナーを帰せるだけでなく、なおかつ自分もホームに帰ってこられる選手なのだ。現代野球では、この打順に座る選手はワクワクさせてくれる打者でなければいけない――と僕は思う。

 

他の強豪チームを見ても、ヒューストン・アストロズは打率が3割を超え、パンチ力もあるホセ・アルトゥーベを2番に置いているし、ヤンキースにいたってはホームラン50本を打てる長打力を持つアーロン・ジャッジを2番にしている。

 

メジャーリーグのトレンドは、とにかくいちばん打つ選手を2番に置くことなのだ。

 

僕も能力の高い選手を2番に置いておきたいと思う。2018年に入団した村上は4番として育成しているが、将来的には彼が2番が座るような時代が来るかもしれない。

 

そしてもうひとつ、日本では見過ごされているのが6番打者の価値である。僕は6番打者こそ「ポイントゲッター」になれると思っている。なぜなら、クリーンナップは「OPS」の高い選手が並んでいるから(OPSとは、出塁率と長打率の総和で、アメリカでは打者を評価するにあたって重要な指標とされ、スポーツ専門のサイトでは、OPSがボックススコアに記されるほど)、6番に打順が回る時は、ランナーがいる可能性が高い。つまり、6番はかなり高い確率でチャンスが巡ってくる打順なのである。

 

チーム力を計る場合、6番に好打者を配置できるチームは、かなり余力のあるチームだと思う。本来ならば、クリーンナップを打てる選手を6番に回せるのなら、打線に相当厚みがあり、対戦するチームとしては中盤以降の投手のやりくりに、かなり気を使うことになる。

 

僕の考えとしては、現代の野球ではクリーンナップを挟む「2番」と「6番」が大事だということだ。

 

この打順にひと工夫を加えれば、得点力は増すはずだ――というのが僕の考えだ。

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二軍監督の仕事育てるためなら負けてもいい

高津臣吾(たかつしんご)

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